三井さんの差し歯が取れた話 ドン! とか、バン! とか、そんな音がした。振り返ると、誰かがうずくまって顔を抑えている。その周りを数人おろおろした様子で囲んでいて、花道が「みっちー!」とうずくまっているその男の背を撫でているのに、す、と背中が冷えた。輪に近寄る木暮さんとかといっしょに駆け寄る。
「花道お前なにやったんだよ」
「ちょっとな、オレの肘が」
どうやら流川とムキになっているおきまりのやつで、花道が三井サンにぶつかったようだ。っつーーーーとうめきながら口元を抑えている三井サンがようやく体を起こした。
「みっちー! 血!」
「うっせえわーってら! そりゃ口も切れるだろ!」
この馬鹿! と痛さに涙目になっている三井サンが、急に口をもごもごさせる。手のひらに吐き出したそれは、歯だった。
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