馬乗りになって、眼下の光景を眺める。
バンザイのように上げた状態で固定されている腕、シーツの上に放射状に広がる波打つ金糸の髪、見ただけで虫酸の走る不愉快な顔とエメラルドに輝く瞳、そして薄手の黒い生地に覆われている上体。
視線を移す。やや光沢のある黒い布地の、胸板を横切るように開いたスリットから、大胸筋の一部が覗いている。
……自分に対して裸ネクタイだの何だのと散々罵ってきた奴が、こんな痴女紛いの服を着ていることに苛立ちを覚える。
──どう考えても胸スリットの方が頭沸いてるだろ。
巨乳女ならまだしも、190近い大男が着る服のチョイスではない。
「クソが」
悪態をつきつつ、とりあえず布越しの大胸筋を撫でてみる。
「……」
硬い。女の乳のような柔らかさは勿論求めていないが、それにしても見た目から想像する以上の硬さだ。
日常的に鍛えている場合、筋肉というものは意外にも柔らかい──と言うか、弾力があるものだ。事実、自分の胸筋を触った時はこのような硬さは感じない。つまり。
「随分ナマってんじゃねえか」
指摘してやると、
「誰かさんと違って頭脳労働で忙しくしていたものでのう」
相変わらずの憎まれ口だ。肉体的な抵抗を封じている以上予想通りではあるが、やはりムカつく。
苛立ちを指に乗せて、触れていた左胸にある突起を全力で爪弾く。
「ッ!!」
組み敷いていた兄の顔が、苦痛と羞恥に歪んだ。
「ハッ! 良いザマだな」
すっかり気分が良くなり、反対側も合わせて、その突起──乳首の回りを愛撫する。
「……、……」
隠そうとしているようだが、呼吸が乱れ始めたのは明白だ。
円を描くように指を這わした後、そこにフッと息を吹き掛ける。
「ッ……」
「触ってほしいか?」
「っ、有り得んのう」
「そうかよ」
ご希望とあらば、だ。しばらく周囲をかりかりと引っ掻いたり、キスを落としたりしつつ、肝心の先端部には決して触れないようにする。
表情を盗み見ると、水気の増した瞳で睨みつけてきていた。良い顔だ。
そうこうしているうちに、インナーを持ち上げるその突起の主張が強くなっていた。
前触れなくそこを触る。
「ヒッ」
股の下の肉体が揺れた。
「ははは」
「…………」
恨めしそうな表情がたまらない。
立ち上がり触りやすくなったそこを摘まみあげる。
「ァ!」
良い反応だ。
「こんなぷっくり膨らんだ乳首でよく人前に出れんなァ? 生徒会長サマなんだろ」
「違う。生徒会“番長”じゃ」
「どうでもいいんだよ」
摘まんでいた指先に力を込め、握り潰す。
「ぐッ」
「っはは」
愉快だ。
スリットに指を入れて穴をずらし、膨らんだ肉芽を空気に晒す。勃起による充血と今の攻撃により、血色の良い紅色に染まっていた。
「普通の女でもこうはならねえだろ……まるでAV女優だな」
「…………」
怒気を込めた視線を感じたが、無視だ。
さくらんぼのようなそれを口に含む。
「ッ!!」
舐め回したり吸ったり甘噛みしたりを適当に繰り返すと、ピクピクと何度も体全体が揺れた。
「……は。乳首で感じてんのか?」
「……」
睨みつける視線はそのままだが、涙目に頬の紅潮が加わっていた。
「ククッ、すっかりド変態じゃねえか」
「ッ、誰の、所為だと」
「感じてんのは否定しねえんだな」
眼光に混じる怒気が強まったが、何しろ発情顔なので迫力などなかった。折角なのでダメ押しで煽る。
「オレの所為だってか?
ならテメエは実の弟に乳首開発された、恥ずかし~いメス犬ってことになるよなぁ!」
頬の赤みと眉間の皺が増していく様子を眺めていると、気分の高揚が抑えられなくなった。
「はははははは!!」