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    からん

    @Qurioneko

    プロフ画はこちらよりお借りしました。
    Picrewの「クリームソーダのいのち」でつくったよ! https://picrew.me/share?cd=wcurVub9gA #Picrew #クリームソーダのいのち

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    POIPOI 105

    からん

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    シャディミオです。限界若社長ミオとポールダンサーシャディの話を書きたかったのですが、力尽きました。ダンサーのシャディが絶対に似合うんですよ。

    夜の翠にとらわれて私は疲れているのだ。
    そうでなければ、間違ってもこんな店に訪れることはしない。こんな店なんて職業差別かもしれないけれども、今の私は分別の出来る良い子ちゃんじゃない。地下に続いた階段から広がる店は、洒落たバーではなくて、ギラギラとしたネオンが煌めくショーパブであった。店名は見なかったが、そこに書かれていたポールダンスの文字に飛び込んだ。
    何もかも捨ててやろうと思いながらも、結局のところクソ親父の掌の上だ。自分がいかに世間知らずの小娘であると突き付けられて、まともな議論にもならなくて逃げ出した。そう、今の私は逃げ出している。責任も取らずに、どうなってもいいと自暴自棄になっている。最低な人間だ。だから、八つ当たりとして普段ならば足を向けない店を選んだ。
    当日券で入ることが出来たのは運が良かったらしく、店内はほとんど満員だった。舞台の見える端の席に座り、飲み慣れてもいない生ビールのジョッキを呷り、案の定の口に合わない炭酸と苦味に顔を顰めた。
    こうなったら、悪酔いして夜遊びしてやるわ!
    「ハイ」
    「はい?」
    突然差し出されたのは、何処をどう見ても牛乳の入ったグラスだ。もちろん、注文などしていない。運んできたボーイに文句を言おうとして、その顔の良さに面食らった。
    褐色の肌に黄金の髪を高く結い上げ、翠石の瞳は何処かの国の王子様みたいである。背の高さも服の上からでもわかる筋肉質な身体も、周りのボーイとは明らかに別格だ。これまでの生活で甘い顔立ちに興味なんてなかった筈なのに、どうしてか胸の奥がキュンと鳴る。
    何よコイツ、めちゃくちゃ格好良いんだけど!
    「これはサービスだ、俺のおごり。せっかく来てくれたんだから、ショーも楽しんで行ってね」
    「待っ……」
    ひらりと手を振るボーイは、すぐに裏に下がってしまう。まともに会話もしていないから、今のは夢かとも思ったけれど、卓上には牛乳の入っているグラスが置いてある。これで、会計時にとんでもない料金を請求されたらどうしよう。奢りなんて言葉が、言葉通りとも限らない。むしろ、見慣れない顔をぼったくりの対象に定めたのかもしれない。
    ぐるぐると思考の迷路に入り込んでいると、店内の照明が落とされた。そうして、舞台にスポットライトが注がれる。中心部にあるポールが、銀色に煌めいた。右と左、それに真ん中の三本。華やかで妖艶な女性はあくまでもバックダンサーで、中央で踊る人物に目が釘付けとなる。
    純白の軍帽に、銀も混ざる白銀のファーのついたロングコート。素肌の上半身に白のコルセットを嵌めて、マイクロミニのレザーパンツと太腿までの金の紐で編み込んだハイヒールブーツ。間違いなく、このショーの主役だ。
    その飾り過ぎな衣装も、褐色の肉体美を際立てるための道具なのだろう。恥じらいよりも、その美しさに目を奪われた。
    ポールを抱いて身体を反らして、絡みつく、その一つ一つの所作に自然と喉が鳴った。大きく広げた脚でさえ、下品さも越えた色香が漂う。結ばれていた髪紐が解かれて、弾けた汗が光る。踊るだけではなく、甘やかに掠れた歌声が響く。
    鼓膜どころか身体を揺さぶる重低音のメロディーと重なり、あちこちの客席から黄色い声が飛ぶ。
    「シャディクー!」
    歓声に応じて、シャディクはコートを脱ぎ捨てた。客に触れそうな距離まで近づき、コルセットやブーツにチップが捩じ込まれる。シャディクは真っ直ぐに──自惚れでもなく真っ直ぐに、惚けたままの私に向けて手を伸ばしてきた。
    その人物は、先程の牛乳を運んできた、あのボーイだったのだ。
    蕩けている翠石の瞳にとらわれて、私はその場から動くことが出来なかった。
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    あもり

    DONEシャディミオの年少期の幻覚話です。12話前、公式が何も出さないので、幻覚が熱を持ったので書きました。
    シャディクが孤児院に拾われる前は、雪国で過ごしていた幻覚設定があります。
    シャディミオ、というかシャディク+ミオリネみたいな雰囲気ですがシャディミオです。
    幻雪「シャディク、あんた雪って見たことある?」
     薄ら寒い大人たちの挨拶の猛攻を上手く抜け出し、外の廊下を歩いていた時のことだった。久しぶりにパーティで出会ったミオリネは少しだけ背が伸びていて、背中に流れた髪の毛が歩くたびに揺れている。前を歩く彼女が視線を向けた先は、無駄に大きい窓の外は無機質な鉄の要塞、時折常夜灯が点滅するのが見えるだけだ。夢見る天然資源は何ひとつ映っていない。

    「映像だけなら」
    「そう」
     彼女がわずかに肩を落とした。意地を張る癖のある幼馴染にしては、珍しいほど分かりやすい仕草だ。
    「……何かあったの、ミオリネ」
    「うるさい」
    「俺は君の質問に答えたよ」
     質問にちゃんと答えなさいよ、と先日の喧嘩で目の前の彼女から貰った言葉をそのまま返す。ミオリネも思い出したのか、ぴたと足を止める。意地が悪いのはお互い様だ。ただ、今日は随分と踏み込みすぎてしまったらしい。
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