夜の翠にとらわれて私は疲れているのだ。
そうでなければ、間違ってもこんな店に訪れることはしない。こんな店なんて職業差別かもしれないけれども、今の私は分別の出来る良い子ちゃんじゃない。地下に続いた階段から広がる店は、洒落たバーではなくて、ギラギラとしたネオンが煌めくショーパブであった。店名は見なかったが、そこに書かれていたポールダンスの文字に飛び込んだ。
何もかも捨ててやろうと思いながらも、結局のところクソ親父の掌の上だ。自分がいかに世間知らずの小娘であると突き付けられて、まともな議論にもならなくて逃げ出した。そう、今の私は逃げ出している。責任も取らずに、どうなってもいいと自暴自棄になっている。最低な人間だ。だから、八つ当たりとして普段ならば足を向けない店を選んだ。
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