桃だけはくれるな 午後というには遅い時間に、ミサトの携帯が鳴った。
「なーにシンちゃん、どしたの」
「メール返事してよ、ミサトさん」
《もしもし》とも言わずに受けたミサトに答えたのは、若干機嫌の悪さの滲んだシンジの声である。
「だーって気づかないんだもん。なーに、急用?」
「急っていうか。ーーさっきミサトさんに荷物届いたの、開けてもいい?」
「えっ、なぁに、あたしなんか頼んだかな」
心当たりがなくて怪訝な顔になるミサトに、電話口のシンジが続ける。
「《赤木サチコ》さんから。それで、だからこれ」
「あぁ、……桃かぁ! もうそんな時期なのねえ」
声を綻ばせて、リツコが面を上げた。
「あぁうん、もちろんもちろん。……そうそう、リツコの……ちーがうって、おばあちゃんよ。みんなのぶん冷やしといてぇ、うん、一つずつビニール袋に入れるのよ。今? だめよ」
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