名前も知らないあなたへ あなたはきっと、私の事など覚えておられないと思います。
けれど私は忘れる事など決してありません。あの日の出来事が無ければ、私は今こうして生きてはいなかったでしょうから。
あなた方は、魔物に襲われていた私を危険も顧みずに助けて下さいましたね。
あの日私はたった一人で、危険を承知であの道を急いでおりました。どうしても行かなければならない理由があったためです。ただ必死でした。そこを運悪く、魔物達に囲まれてしまいました。
そこに偶然あなた方が通り掛かりました。
身につけているもので聖堂騎士様と神官様だと分かりました。魔物に立ち向かうあなた方を、私は何も出来ずに後ろからただ見ていました。あんなに恐ろしい相手とも臆する事なく戦うあなたはとても強くて。私を後ろに庇うように立ったあなたの背中から、ひとときも目を離す事が出来ずにおりました。
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