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    まえにし猿棚

    @ooops_sartana

    一次創作BLの超短編を置いています

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    まえにし猿棚

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    羽生橋はせを先生の『麗しのオメガと卑しいアルファ〜カースト逆転オメガバース〜』感想文
    ネタバレありますのでご注意下さい

    #感想
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    『麗しのオメガと卑しいアルファ〜カースト逆転オメガバース〜』 感想 この世界ではオメガが崇められ、アルファが虐げられる──

     という設定を初めて目にした時、私が想像したのはまず「猿の惑星』でした。
     勿論、着飾ったオメガが毛皮を身につけたアルファを鞭でしばき回している様子を想像したのではなく(私はSM系ならば長期的な暴力と心理戦を望みます)

     狼の群れにおけるヒエラルキーを参考にしたとされるオメガバースにおいて、統率者たるアルファは絶対的な支配者であり、最も力のないオメガは社会の底辺において苦渋を舐めるしかない。
     やもすれば差別的、現実のジェンダーロールの強化に繋がると言われるほど厳しいオメガバースの設定は、一説には攻受の固定を強固にするために誕生したと言われます。その中で敢えて、運命の二人が手に手をとって苦難を乗り越え、或いは上手く世界の掟を出し抜き生き延びていくのが、オメガバースの醍醐味だと思っていました。

     が、今作『麗しのオメガと卑しいアルファ〜カースト逆転オメガバース〜』においては、オメガであるアランは自立することを(少なくとも本人は)強烈に望んでいます。何せ幼少期の時点で、アルファであるグウィンにひたすら勝負を持ちかけ続ける始末。愛らしく未熟な彼が一所懸命自分に追いつこうと喰らい付いてくる様子は、設定を知っている読者、そしてグウィンからすると微笑ましく思えます。

     ここで私は「未熟で愛らしい」とさも自然に書きましたが、これこそがオメガバースにおける差別性を、なんの衒いもなく受け入れている証なのでしょうね。
     さながら『猿の惑星』の原作者ピエール・ブールが、第二次世界大戦中に自国フランスの勝利を望んでレジスタンス活動に勤しみつつも、戦後のアルジェリア独立時に「自分達の猿真似で知恵を得た従属者でしかない癖に、混乱に乗じて自立を望む劣等種」としてFNLを猿に仮託したように。表題のカースト逆転という言葉はありつつも、結局彼らは崇め奉られ、保護される存在です。我々も、そして作中の世界も、アランが弱い存在であることを望んでいるのかも知れません。何故なら彼はオメガなので。そしてその役割に甘んじている限り、アランは社会制度という鳥籠において守られます。
     アランがある意味囚われの身であるということは、グウィンが作中で街とスラムを行き来しているのに対し、アランが危険な地区へ入るのは彼の身に危険が及ぶからと顔を顰められているところからも裏付けられます。

     ところで、『猿の惑星』において人類が衰退した理由の一つとして、人類の無気力が挙げられています。自ら達の能力に気付いた猿達が自立し反乱を起こすも、文明を作り上げることの出来た己達の力に驕り、やがては団結することすら億劫がるようになってしまった怠惰こそが逆転の原因だと。

     グウィンの無気力は確かに、アルファという性別が発覚して凋落してからの苦難も関係していますが、作者は同時に希望を捨ててしまったグウィンの諦めも断罪しているように思えます。傷ついた心で、いきなり現れた救いの手(しかも昔は可愛いと、ある意味自分が庇護「してやっている」と思っていた男です)を取るのはプライドが許さなかったのだろうとは言え、再会したばかりの二人のすれ違いにはハラハラさせられます。

     しかし、昔のようにグウィンへ頼る事なく、独立独歩で歩もうとするアランの健気な姿に(またアランの「弱さ」に視点を置いていますね、私は)グウィンの心も軟化していき、少しずつかつての親交を温め合えてきた……と思いきや、ある登場人物の手でアランは絶体絶命のピンチに陥ります。

     ここが結局、これはグラン・ギニョールじみた世界観であると言う残酷さを醸し出します。それまで見え隠れしていた、オメガバースの世界観の危うさが一気に噴出し、アランは陵辱の危機に。踏み躙られたものは何でしょう? これまで彼が懸命に求めてきた自立=グウィンと対等になる強さ? それともこの世界でオメガが持つとされていた神性?

     ここでグウィンに助けられることを、陳腐な展開だと言うことは簡単です。けれど真の強さとは、相手に対して弱さを曝け出せること。私はここで、これまでグウィンに「バース性が発現しなかった頃の気高いグウィン」をアランが求めていたことと同様、アランに「バース性が発現しなかった頃の弱いアラン」を素直に認めることを突きつけたよう感じました。

     そしてラストの展開、オメガバースにおいてハッピーエンドの代名詞とも言える「うなじを噛む」と言う行為が、今作においてはオメガの神聖さを奪う禁忌とされています。それでも二人は、特別な存在であることから降りてしまいます。どちらにとっても犠牲であることには違いないのに。現実のアルジェリアのように血生臭い闘争の末に、勝利の一歩を踏み出したのです。
     甘い余韻だけでなく、これから先、彼らの行く末に幸あれ、と願わずにいられない切ない最後。強さも脆さも全て包括した素敵な物語、堪能させて頂きました。
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    まえにし猿棚

    DOODLE2024年度ルクイユほの怖いBL準備号に見せかけた脇役達のスピンオフ。ボンデージ・アーティスト見習い×ポルノスター
    美しい年齢達 ”ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。”
     そう書いた小説家は、35歳の時にフランスの浜辺で戦死してしまったそうだ。15年余分に生きた暁には、その傲慢さも少しは悔い改められていただろうか。

     少なくともシャハブからすれば、彼の考えは全く傲慢なように思えた。世間が20歳の人間を美しいと定義付けるなんて、無邪気に信じていたのだから。
     この業界だと、20歳にもなればそうそう新人とは見做されない。高校を中退するや、国中からニューヨークへ、ロサンゼルスへ、マイアミへ、グレイハウンド・バスの片道切符を買ってぞくぞく押しかけてくるポルノスター志願者は後を経たない。例え古い肉が腐ろうと、新鮮な肉のお代わりは幾らでも。動画サイトのプロフィール欄を検索してみるがいい。この国中の19歳が登録しているのかと思うほどの人数が現れる。明らかに盛っている人間もいれば、その容姿で名乗るのは幾ら何でも肌が弛んでいるだろうと思える者まで、19歳の示す射程範囲は様々だった。
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    まえにし猿棚

    DOODLEイチャイチャ×ヒルビリー×都市伝説。アメリカのど田舎のお巡りさんコンビ、40代の自分をおじさんって言うタイプの先輩×20代のスカした後輩
    【スリーピング・デューティ】恐るるべき子供 知り合ってすぐの頃、と言うことはまだリグレーが高校生の頃だが、マルボロが写真集を貸してくれた事がある。
     友人達と釣りに出かけた帰り道、とっぷりと日も暮れた森でオーバーヒートした車の中、アレと遭遇したらどうしようと震え上がっていたところに現れた救世主。初めてまともに会話をした時から、リグレーはすっかりハンサムなおまわりさんに首ったけだった。
     マルボロはリグレーが法定年齢に達するまで手を出さない代わり、色々な知識を授けてくれた。例えばモータウン・サウンドの素晴らしさとか、コミックが原作ではない映画の面白さとか。

     半世紀以上前に活躍したカメラマンの業績についても、学びの一環として教示しようとしたのだろう。当時のリグレーが知る女性のポートレイトといえば、スポーツ・イラストレイテッドに月替わりで掲載される裸体が関の山だった。どれだけページを繰っても、淑女達はビキニのトップスすら外そうとしない。と言うか、そもそも水着写真がない。この乙に澄ましてオートクチュールの服を身につける、鶴のように細い淑女達の一体何が良いのだろう。ショッピングモールまで車で3時間走らないと詣でられない田舎のティーンエイジャーがそう考えるのは、ある意味当然の話だった。
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    まえにし猿棚

    DOODLEイチャイチャ×ヒルビリー×都市伝説。アメリカのど田舎のお巡りさんコンビ、40代の自分をおじさんって言うタイプの先輩×20代のスカした後輩
    【スリーピング・デューティ】オールドファッションを喰らう やる事をやって良い気分。交換した清潔なシーツに潜り込んで心地よい微睡へ身を浸そうとしていたら、場違いなほど張り詰めた声と共に肩を揺さぶられる。「今外で変な音がしなかった?」
     低く呪詛の呻きを放ちながら、マルボロはベッドから身を起こし、クローゼットからTシャツとジャージのズボンを引っ張り出した。
    「俺も行きます」
    「良いからベッドで大人しくしてろ、まだ足腰もまともに立たない癖して」
     先程まで男に体を暴かれて乱されたリグレーはすっかり疲労困憊。あれだけ泣き咽んでいた顔はまだ目も頬も幾分腫れぼったい。明日は日勤だが、この調子だと2人とも一日中欠伸を連発しなければならないだろう。

     今夜は2人でWWEの中継を観た後、もっと穏やかな、せいぜい触り合いっこ位で済まそうと思っていた。けれどこの若い情人がひしとしがみつき、甘えた様子で肩口に頬を擦り付けて来たのがいけなかった。男の四十路とはまだまだ枯れるなんて言葉とは無縁の存在だと、誘惑を受ける度にマルボロはつくづく実感する。年下の恋人を作れば若返ると言う都市伝説は、案外間違っていないのかも知れない。
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    まえにし猿棚

    DOODLEイチャイチャ×ヒルビリー×都市伝説。アメリカのど田舎のお巡りさんコンビ、40代の自分をおじさんって言うタイプの先輩×20代のスカした後輩
    【スリーピング・デューティ】ここはヒルビリーのビバリー・ヒルズ「これは焼きもちを妬いてるんじゃ無いんですが」
     そう前置きし、リグレーは懐中電灯のスイッチをカチリと押す。濡れたような黒髪と、ハッとするような青色の瞳が人目を惹く青年は、自分の強みを嫌と言うほど理解していた。だからいつも制服のズボンはワンサイズ小さめ、こうしてしゃがみ込めば、ぱつぱつになったカーキ色のスラックスが破裂しそうになっている。
    「ただ、気になったんです。昨日の晩、あんなに熱心に話し込んでたので」
    「話だって?」
    「しらばっくれたって無駄ですよ。ブロンドで、アイシャドウをコッテリつけたヤク中丸出しの女」
     ああ、と頷く代わりに、マルボロは咥えていた紙巻煙草を指でつまみ、前歯についた刻み葉を舌先でちっと跳ね飛ばした。その仕草に何を想起したのだろうか。リグレーの耳と言えばトマトスープよりも真っ赤だった。本人も状況を分かっているのだろう。殊更真面目腐った表情を浮かべて顔を背けると身を屈め現場検証に戻る。
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    MOURNING【感想】仮面ライダーエグゼイド_6話
    各話ごと、キャラごとに気になったこと、感じたことを好き勝手書いていきます。
    ※26話まではすでに視聴済みなので、初回と違い、新鮮ではない感想の可能性がありますが、なるべく初回視聴時に感じたことを書いていきます。
    【全体感想】
    前回に引き続き、ヒーローのパワーアップ回。今日はひいろさんがパワーアップしましたね。
    リズムゲーム系のパワーアップっていうとポップで可愛いバトルになるわけですが、めちゃくちゃ肉弾戦でしたね。好きです。
    いやほら、ダンスは可愛かったけどまさか心臓マッサージの要領で掌底喰らわすと思わないじゃん。
    個人的にバトルが好きな回です。

    【キャラ別】

    ●えむくん
    ・えむくんそうやってひいろさんの好感度まで上げる。
    ・意見も合わないいけすかない先輩も身をていして守れる主人公最高ですね。

    ●ひいろさん
    ・音楽ゲームを理解していないのすごく可愛かった。
    ・恋人を失ったしんどい男だったのかお前……(※しんどい男が好き)
    ・冷静そうなのに恋人のことになると熱くなっちゃうって意味で、武器に炎/氷の2属性ついていたの納得ですね。
    ・リズムゲームを心臓マッサージとして掌底繰り出す発想はなかった。
    ・リズムゲームを使ったパワーアップなのにすげー攻撃タイプでニコニコしちゃった。

    ●きりやさん
    ・病院送りにされておった。。。。

    ●たいがさん
    ・どっからでてきたんすか。えむくん・ひいろさんのことをこ 1058

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