空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:12 どうしたもんか。
汐見はフェルマーから送られたメッセージを見つけてから数えて数度目になるその言葉を胸の内でだけ呟いて。涙に濡れた空閑の瞳と残る三人の男たちからの視線、合わせて八の瞳を向けられて居心地の悪さに少しだけ眉を寄せる。
「……アマネ」
所在なさげに小さく漏らされた空閑の声は、この一年半殆どの時間を共に過ごしていたというのにはじめて聞くかのような弱々しいもので。どこか赦しを乞うかのような色を帯びたその声に、汐見はこの場所に足を踏み入れてから二度目になる溜息を吐き出した。
「……おい、浩介」
「ん?」
ジーンズの尻ポケットに差し込んでいた財布を手に篠原へと言葉を掛けた汐見へ、彼はどうしたと言わんばかりに首を傾げて見せる。
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