我慢しなきゃダメだろ「は、あ……、ヤダ……も、はやく……っ」
素足をさらけ出して身悶えする少女の太腿に唇を寄せて、必要以上に嗜虐心を揺さぶられるこの状況にどうしたものかと、自分から仕掛けた事だというのにこのままでは歯止めが効かなくなりそうだなと、タルタリヤは柔らかな素肌に添えた指に力を入れた。
珍しく蛍が手合わせに応じてくれて、思う存分互いの剣術を披露し合った夕刻。タルタリヤとしてはまだまだ彼女と戦っていたかったが、パイモンが心配するからと終了を言い渡され、渋々双剣を水飛沫に変えた時だった。前方から小さな悲鳴が聞こえて顔を向ける。
「相棒? どうかし……」
見ると蛍の足元にシュルルッと音を立てて巻き付く一匹の蛇。タルタリヤは弓を取り出して狙いを定めると蛇の頭を打ち抜いた。
すぐに蛍の元へ駆け寄って彼女の肩に手をかける。
「大丈夫? 噛まれた?」
「うん……、大した事ないよ」
太腿を押さえて顔を顰めながらも、気にせず歩き出そうとする蛍の腕を掴み、仕留めた蛇の特徴を確認する。
「毒蛇だよ。早く治療した方がいい。来て」
近くの洞穴に入ると蛍に座るよう促し、タルタリヤは元素で手の中に水球を作った。ひとまず消毒をして傷の状況を確認しなければ。蛇に限らず、野生の動物の脅威は充分に熟知している。蛍のスカートを捲りあげて手を伸ばすと彼女の脚がビクンと動いて、伸ばした手が遮られた。
「相棒? 傷、確認しないと」
「ごめ……っん。ん、いいよ」
頬を赤らめて唇をきゅっと結ぶ彼女に、あぁ、恥ずかしがっているのかと少し意外な思いが湧いた。太腿など、戦闘中にいくらでも見えているし、彼女の普段の服装からして、肩や背中が大胆にさらけ出されていて、胸元にも目がいってしまいそうな、こう言っては何だが男を誘うような様相だというのに……意外と奥手なんだなと、つい……悪戯心に火がつくのを感じた。年頃の妹を持つ身としては、彼女の服装についてはいつも思うところもあった。
「腫れてきてる。すぐにでも毒を吸い出さないと」
許可を得たので蛍の太腿に手を添えて、元素の水で傷口を洗い流してからその箇所をしっかりと確認する。
タルタリヤは懐のベルトに忍ばせたナイフを取り出すと傷口に触れさせる。
「あ……っつ」
軽く傷を付けると漏れ出た彼女の声が酷く嗜虐心を刺激して、薄く口角が上がるのを感じる。太腿をグッと押さえ込んでその場所に唇を寄せた。
じゅうっと吸い付いて血液ごと毒を吸い出し、べっと吐き出した後、再度口に含む。そんな動作を何度か繰り返した後、彼女の様子を上目遣いに確認すると、ふぅふぅと息を吐いて瞳を潤ませてこちらを凝視している。その表情にずくりと腰が重くなるのを感じた。
ちゅくっと、わざと傷口に舌を這わせれば、彼女の口から吐息と共に可愛らしい声が漏れ出て、太腿にかける指に力が入った。
「タルタリヤ……ま、まだかかる?」
不安そうな蛍の声を頭上に、傷の近くにじゅうっと強く吸い付いた。くっきりと残った赤い痕を指でツゥと撫でれば、彼女の腰がびくんと跳ねるのが分かった。
「もう少し我慢して、相棒。念の為……」
逃げる腰を掴んで再び太腿に唇を寄せた。
「は、あ……、ヤダ……も、はやく……っ」
「こら、蛇の毒を甘く見ちゃいけないよ、相棒」
モゾモゾと脚を動かしてタルタリヤの顔を挟んでくる太腿をペシッと叩いて蛍に目を向ければ、彼女は真っ赤な顔で息を荒くしている。ゾクゾクと背筋が震えるのを感じ、彼女の薄い腹に手を添えて身を起こした。
「ねぇ、具合悪くなってきてたりは? 動悸が激しいとか、身体が熱くなってきた……とかさ」
「え……ぁ……そう言われて……みれば」
「ほら、危険な証拠だよ」
腹に添えた手を沈ませて口元に笑みを作り、もう逃がしてあげられないことを優しい声色で彼女に告げる。怯えさせては可哀想だ。
「まだまだこれからだよ。我慢しなきゃダメだろ?」