🧡💜オレは今、信じられないような光景を目の当たりにしている。
簡潔に説明すると上に着ているシャツが少しはだけてデコルテのラインが艶めかしくこちらを誘う
絶景がーーいや、そうではなく。
何故そんな格好をしたシュウが自分に対して
馬乗りになっているのだろうか。
つい先程まで緩く2人で飲んでいたのだが、一瞬まぶたを閉じたその数秒でミスタは部屋の床と友達になっていた。
そしてミスタの腹の上には恐らく脳みその回っていないであろう、頬を赤くさせたシュウが乗っかっている。
「シュ……シュウ?」
現状を未だに理解出来ていないミスタはこんわくのあまり、シュウの名前を呼ぶことしか出来なかった。
正直何も考えなくていいならこの景色はとてつもなく絶景で、本能に全てを任せていいのであれば手に持った酒のグラスを捨てさって、ベッドへ直行したいところなのだが……。
シュウとオレは恋人ではない。
なれるものなら恋人になりたいが、シュウに対しては妙に慎重になってしまう。
シュウは身も心も綺麗で、それはまるでガラス張りのケースに飾られた一点物の宝石のようだ。
淡い恋心をーーしかもそれを同性の友人に打ち明けることで宝石に傷を付けたくない。
だから、この想いは胸の内に秘め仲のいい友人として付き合っていこうと思っていた矢先、これである。
「……ミスタは」
豆鉄砲をくらった鳩のようになっていたミスタにシュウは見下げながら小さく口を開く。
どことなく、その声は震えている気がした。
「ミスタは……ボクのことどう思ってるの?」
「ーーは?」
唐突な質問に腑抜けた声が出た。
どう思ってるかなんて、そりゃ仲のいい友人であり同期であり、付き合いたい、その先の関係にだって……でも、それを全て自分は隠してきた。
隠さなければいけないと思っていた。
もしかして見破られていた?
確かに直感が鋭い時がある。だが、こういった恋愛感情に関しては察知能力が低いはずだ。
ならば、何か友人関係として不安にさせてしまった事があるのだろうか?
ミスタは最近のシュウとの付き合いを思い出す。
連絡に関しては問題ない。朝起きて通知が入っていたら基本的に返すようにしている。
通話も普通にするし、出かけたり、今日みたいに家で飲んだり……特段何か怒らせるようなことをした記憶はない。
「どう思ってるって……シュウ、お前急にどうしたんだよ」
思い当たる節がないのでミスタは率直に答えを聞いた。
知らないなら知らないと、わからないならわからないと、素直に聞けばシュウはいつも丁寧に答えてくれる。
今回もそれを期待していたのだが、シュウはその言葉を聞いて顔をムスッとさせた。
やべ、怒らせた!?と思い慌てて訂正しようと口を開いたが、それよりも先にシュウが力なくミスタの腹を叩いた。
まぁ、叩いたというよりはそわすような弱さだったが。
ささやかな抵抗に続いてシュウは俯いて小さく呟く。
「ボクは、ミスタが思ってるより……ずっと下心があるし、意識してるよ」
思っていたことと違うことが起こると人間の脳は思考停止すると、今本当に実感した。
言われた意味はわかるが脳の処理が追いつかないのだ。
ミスタが、何も言い出さないことにしびれを切らしたのかシュウが続ける。
「もう、どうしたらいいかわからない。
ミスタとは仲のいい友人だと思っていたのに
最近は……最近は自分がミスタに対して
どう思っているのか、どんどん曖昧になっていく」