神様サンド――神の愛を少年に捧ぐ――その美しい瞳を己しか映さないようにしたい。そんな望みがいつからか空の心の内に居座っていた。いつもとは言わない。いや、言えない。だってふたりとも「神様」だった人だから。どんなに普通の人であろうとしても、長年の癖が抜けないのか、かつて治めていた国の人々を見る目はいつだって慈愛に満ちている。正に「神の目線」だ。そんな温かみのある目線を空は大層羨ましがった。あの優しい眼差しを一身に受けたい。柔らかく包み込まれたい。「神の愛情」で溶けてみたい。……そう空が思ったのは鍾離とウェンティと付き合ってから数ヶ月が過ぎた頃であった。
ある日、そんな感情を持っていた空は塵歌壺で鍾離とウェンティとの逢瀬をしていた時にふいに2人へあることを持ちかけた。
「ねぇ、せんせ、ウェン、」
「どうした空。何かしたいことでもあるのか?」
「ボクたちに出来ることなら、なーんでもしてあげるよ!」
「あのね」
「ああ」「うん」
「その…」
なんでもないよ、と言える勇気がない。たとえ言えたとしても、空が何か隠し事――例えば空の身に危険が迫ってきていることなど――をしているのではないかとあれこれ質問責めにされるからである。
実際そのような事が過去にあり、2人の空の過保護っぷりは急加速している。そう。進行形で。ちなみに空を害そうとした奴らは既に風神様と岩神様に天罰を下されている。閑話休題。
今の空たちはソファに空を真ん中に右手に鍾離、左手にウェンティが座るかたちとなっている。空がもじもじとして言い淀む間も鍾離は空の腰に手を回し、いい子いい子と頭を撫でているし、ウェンティも空の手を握って、背中を撫でている。甘やかしに至ってはお手のものの2人だ。空が自分の口で言うことが大事なのである。彼が言うまで2人はずっと甘やかすだろう。じわじわと羞恥心が湧き出てくる空はやはり誤魔化してしまおうかと考えたがウェンティはそれに気づいたのか「そーら?ボク達はキミの事を笑わないよ。怒ったりは…まあ、場合によるけどしない。」と釘を刺した。
「うっ、でも」
「空のしたいことはしていいんだよ。何があってもボク達がついてるから大丈夫。ね?」
「バルバトスの言う通りだ。お前の望むことなら叶えてやる。」
「………わ、笑わない?」
空を安心させるように宥める2人に空は再び顔を窺うように問いかける。