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    ジョシュクラ時々鳴キコ保ミナ

    @mizuki_tori_ton

    ただ徒然と、ジョシュクラとナルキコとホシミナの妄想を放り込む

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    怪獣8号の二次創作。
    またか…また関東圏を中心としたコラボか……地方民には遠いんじゃぁ!
    極楽湯コラボぉ、行きたかったよぅ。温泉巡りが趣味なのによぅ、スパでも良いんだよ、コンチクショウ、保科副隊長の細マッチョな汗ばむ裸体みてぇよぅ、グッズ通販するしかねぇよぅ。
    そんな作者の雄叫びとともに、終末の獣と化す内心の心情と鬱憤を兼ねて。
    Xで前に載せてたものの再掲。まだ書き書け。
    褒めてくれたら続き書く

    #怪獣8号
    kaijuNo.8

    熱湯温泉耐久レース!「あっつぅ」
     思わず、男の口から呻くように声が漏れる。
     あまり日に焼けた事の無い、大変に不健康そうな、その実、結構鍛えてる裸体から、汗が滲む。

    「…………」
     横には貼り付いた笑みをそのままに、けれど、額から滲む汗は隠しきれず。
     つ、と顎から汗の珠が雫となって零れ落ち、更には、こちらは細身ではあるものの、鍛えに鍛え抜いた肢体にも汗が浮かび、天井から照らされる朧げな光に濡れ光る。

     黒白ボサ髪男に、糸目の黒髪オカッパ。
     日本防衛隊第1部隊隊長の鳴海弦と、同じく同隊第3部隊副隊長の保科宗四郎である。

     とりあえず、二人とも上半身裸だ。

     そして、彼らの下半身にはタオルが掛けられ、二人揃って腰掛けに座ってはいるものの、直に座れば当然剥き出しの尻が熱い。
     備え付けの乾いたタオル地のマットの上に腰掛け、汗を滲ませながら、正面に設置されたTV画面にて、夕方に放送されるニュース番組に無言のまま目を向ける。
     二人とも、座った場所は狭い室内の端と端。
     TV画面の横には、熱された石と、時折、そこから香ってくるアロマ〜な香り。
     サウナ、である。
     しかし、香りは良いが、熱い。
     とことん熱い。
     そして、肌に熱がきてピリピリとして、居心地が悪いったらありゃしない。
     サウナの常連と呼べるわけでもない鳴海にとっては、早くも根を上げそうになる環境だった。

     ああ、早くここから飛び出して、冷たい水でも飲んで、外で涼みたい。
     或いは冷たい水風呂に飛び込んで……
     いやいや、サウナなんぞに慣れぬ身でそれをすれば、冷たさにすぐにガクブルと震える事になる。
     そんな姿は隣のコイツには見せたくない。
     やっぱり、露天風呂の方に駆け込んで、外で涼むのが無難か……
     そんな鳴海の心情を察したのか、

    「おや?鳴海隊長。お辛いんでしたら、早く出たら?」
     対して涼しい顔のまま、僅かに目を開いて保科が声を掛けてくる。
     もとい、涼しい、というか、ニヤリとした顔である。
     口の端が吊り上がり、鳴海限定で底意地の悪そうな表情を向けてくる。
    「誰が辛いか!」
     挑発され、あっさりと鳴海は声を上げた。
     単純だ。そんな事は彼自身も自覚している。
    「へぇ、じゃあ」
     あれに水を掛けてもいいですよね?と、保科は熱されたサウナ石に指を向ける。
     TV横に置かれたサウナストーブ。
     その上には山積みとなったサウナ石と、備え付けのジョウロ。中には本日のアロマ水であるほうじ茶が入っている。
     各個人でサウナ石にアロマ水を掛けて香りを楽しみつつ、サウナも楽しめるようになっていた。
     更には時折、従業員がサウナ室の点検や巡回がてらやってきて、追いアロマ水+大きめの団扇で仰いでくれる。
     いわゆる、ロウリュ、というやつだ。
     北欧の国フィンランドのサウナ入浴法の一つでもあるが……
     当然、熱風を浴びる事になるので、余計に熱くなる。
     ニヤニヤと声もなく笑う保科に、明らかに自分は挑発されている、それは鳴海にも分かっている。が、だからと言って、コイツに熱いから止めてくれ、なんぞは口が裂けても言いたくない!
    「勝手にしろ!」
     言った後で後悔しそうになる自分自身の心情を抑え込みながら、フンっと鳴海は両腕を組んでその場にふんぞり返り、口を引き結んだ。
    「では、失礼して」
     どっこいしょ……と、若いのについつい爺むさい台詞を口にした保科は、サウナ室に備え付けの長椅子から立ち上がり、腰にタオルを巻き直しながら、ペタペタと熱された乾いたサウナ床の上を歩いて、部屋の端までいく。
     空いた手でジョウロの取手に手をかけると、室内の壁に貼られたアロマ水の利用方法に目を向け、早速、鼻歌混じりに石に水を掛け始める。
     途端に、じゅわわ〜と音を立てながら、サウナ石から一気に水蒸気が上がる。
     ほうじ茶の芳ばしい香りが鳴海の鼻先を掠めはするものの、同時に熱さも一緒にやってきて、内心では呻き声を上げたくてたまらない。
     だが、上げた弱音をコイツにだけは聞かれたくない、とそれを飲み込んで、口をへの字にする。
     保科は、後方で繰り広げられる葛藤などお構いなしに、マイペースにアロマ水をサウナ石に適量掛け終わると、口元を綻ばせて、
    「良い匂いやな」
     独白して、また元の位置に戻る。
    「まだ暫く楽しめそうですね?鳴海隊長?」
     朗らかな笑みと共に、額から滴る汗を掌で拭い、保科は言って小首を傾げた。
    「…………」
     対する鳴海は無言である。
     楽しみというか、こっちは苦行なので、笑顔になれるわけでもない。
     無言のまま、耐えるように鳴海は目を閉じ、
    「やぁ……これなら、もうちょっと粘れそうやなぁ」
     呟く保科に、粘るな!早く出ろ、出て!お願い!
     と、彼は思いはしたものの、自分で勝手に我慢勝負をしているだけなので、ますます口をへの字にするだけだ。

     で、なんでまあ、この二人が一緒にサウナ室にいるのかというと……  

     遡ること昨日。

     第1部隊の隊長室にて。
    「明日、防衛隊内での慰安旅行が決まったから、お前達も準備しろ」
     部屋に来るなり第一声で、その言葉を口にした長谷川エイジ副隊長に。

    「「は?」」
     ほぼ同時に、固まりつつも声を上げた隊員が二名。
     四ノ宮キコルと鳴海弦である。

     今日も今日とて。
     バカ師匠、訓練に付き合えー!と隊長室で直談判をしに来た、若さ溢れる16歳なきこるんと、誰がやるかバカ弟子め!絶対嫌だ!と、ゲーム機のコントローラーを両手に、断固としてTV画面の前から離れようとしない、ダメダメなアラサー隊長鳴海。
     この二人による、いつもの如くな日常が繰り返されていた。
     ちなみに今は、大変平和な世界である。
     数ヶ月前に無事に怪獣9号を打倒し、囚われし彼女の父の魂を解き放った。
     勿論、犠牲は大きい。
     街はあれが生み出した大怪獣達によって大きく傷付き、隊員達も市民にも死傷者は出た。
     第1部隊からも貴重な若い命を散らした者も少なからずいた。
     喪われた彼らの命を尊び、隊の長として遺族に彼らの最期を伝える。
     そこでの無言の哀しみに耐え、人々の称賛や批判や、様々な声を耳にし、それでも前に進まねばと一歩踏み出し、あまりに多く残された戦後処理を終えて、漸く一息吐いて、日常に戻る。
     そこに戻るまでは張り詰めていたものを思いきりだらっとさせて、ゲームばっかりやってる師匠に、気抜きすぎ!ちょっとは気合い入れろと、せっつく弟子。
     そんな光景もまた戻り。
     そして、こんな光景を見かけた日には、第1部隊の隊員達は、ああ…いつもの事か、そっとしておこう……とほっこりしながらも察して、彼らに用があっても、そっと回れ右をして部屋を出ていく。
     それが常の事で、二人ともそれを理解していたから、気にせずマイペースに我が道を行く、のノリでやり取りを交わしていたのだ。
     が、しかし。
     生暖かく二人の光景を見守り続ける訳にもいかない、我らが第1部隊の副隊長、鳴海のオカン役、スキンヘッドな長谷川エイジが、ズカズカと遠慮なしに部屋に入ってきてその言葉を口にした。

    「え?え?え?慰安……旅行?え?」
     キコルは唐突なその言葉に、戸惑うように声を上げた。
     そもそも、悠長に旅行だなんて、防衛隊内で出来るわけもない。
     日々の怪獣の襲来は常の事で。
     というか、9号を倒そうとも、怪獣が完全に消えるわけでもない。
     公休はあれども、怪獣の討伐要請があれば、そんな休みは瞬く間に立ち消えとなる。
     昨今の怪獣増加の状況を鑑みるに、休みなんぞあってないに等しいというのに、言うに事欠いて慰安旅行。
     しかも、明日……だなんて、急遽決まったであろう事がありありと伝ってくる。
     一体全体、どういう風の吹き回しだ?と思いつつも、しかし、隊内の催しとはいえ、旅行は旅行。
     全ては怪獣討伐、それだけの為に日々を費やしてきた彼女にとっては、「旅行」の響きはあまりにも魅惑的に聞こえてしまって、戸惑いを見せつつも、その表情はどことなく嬉しげに見えた。

     そして、対する鳴海はというと、
    「はぁ?旅行?何でボクがそんなもんに行かねばならん。しかも、慰安旅行だぁ?団体行動はごめんだね」
     ボクはゲームがしたいんだと呟き、プレイ中のゲーム映像が映るTV画面を見遣った。
     映っているのは、発売後にやる暇がなくて、積みゲーと化していた代物だ。
     DL版ではなく、パッケージ版を購入しているのは、店舗ごとに供される予約特典目的だろう。
     店舗ごとに、光る剣やら大口径の銃やら抱き枕に偽装したハンマーやら……
     本来なら銃器だなんだを片手に、地球に襲来する巨大生物やら、正体不明の宇宙人やら、そういうのを倒すゲームだ。
     平たくいうと、地球防衛軍◯だ。
     FPSゲームを好む彼としては、シューティングゲームであるそれとも相性が良い。更に、現実でもゲームの中でも、怪獣討伐に当たっているのだから、どんだけ怪獣との戦闘が好きなんだよ、とツッコミを入れられないこともない。
    「いいか、ボクは……」
    「伊丹長官の命令だ。時に戦士にも休息は必要だと」
     一言、長谷川。
     その言葉に、鳴海は、うぐっと、先の言葉を詰まらせた。
     鳴海の上官でもあり、防衛隊の長でもある伊丹啓司の言葉には、さすがの彼も弱い。
    「しかし……」
    「ゲーム機を持っていけば良いだろ。有線完備、ネット環境良好、美味い飯と温泉。出先までは隊の専用車でスムーズ移動。車に乗れば、後は勝手に連れていってくれるぞ。ちなみに、近くに演習場もあるからな、建前上は先にそちらで演習をした後に、適度な休息として、防衛隊が確保したホテルで一泊二日だ。最上階にある天空露天風呂は眺望が素晴らしいとの評判だ」
    「……いや、露天風呂っていったってなぁ。別にボクは風呂好きじゃない」
    「ちなみに宿泊先の客室は約90㎡スイートタイプ。75v型壁掛け大画面8K対応TV、ここにあるのよりは大迫力でプレイ出来るだろうなぁ」
    「……行きますよ?」
     長谷川の流れるようなコメントに、あっさりと掌を返して鳴海は言った。

     ちなみに、明日明後日は怪獣が出現する気配は無い。
     全くない。
     無いったら無い。
     怪獣の出現を監視する討伐庁やら、気象庁やら、米軍やら自衛隊やら……それら諸々の報告からも、今日明日は怪獣は何処の地域にも出現しないだろう、そんな予測が立てられていた。

     というわけで、面々はいそいそとお出かけの準備をする。

     キコルは「一旦、実家に戻って、お泊りの準備をしてきます」……といかにも仕方なさげな表情で――しかし、内心のウキウキが隠しきれていない、そんな表情で実家へと戻り。
    「えー、旅行に行くなら、もうこの格好でいいだろ」
     白の半袖Tシャツに、膝下までのゆったりとした作りのハーフパンツ着用の鳴海は、お出かけに隊服を着るつもりは欠片も無さげな様子で、旅行用の鞄の中にお菓子だなんだと放り込んでいる。
     しかし……
    「おっと……問題は……」
     BS5をどうやって持っていくか、だ……と、彼は小さめのスーツケースを引っ張り出してきて、そこに衣類やタオルなどを丁寧に敷き詰めていく。
     それから、BS5を厚めの布でしっかりと包んでスーツケースに収め、スーツに付属のゴムバンドでしっかりと固定。
     残りの隙間にゲームの電源コンセントや、コントローラー、モニター出力用の8K対応HDMIケーブルやらの配線の類いも入れ込んだ。
     おおっとオンラインプレイで、他のゲームもやるならチャット用にキーボード+マウスも。ついでにゲーム内で会話をするなら画像共有や音声通話機能も備えたDiscordもやるだろうから、マイク付きヘッドホンも必要かとそれも中に詰め込んでいく。
    「ま、こんなもんか……」
     呟き、これで旅行先でも問題なくゲームが出来るぞとほくそ笑みつつ、ついでにS◯itchも持っていくことにする。

     そして、ふぅ……と特に大した事もしていないのに、一仕事したぞと言いたげに、掻いてもいない額の汗を拭って、鳴海はドヤァ顔をした後、室内で、ジト目で彼の様子を窺っていた副官の視線に気付いた。準備に夢中になって、副官がいた事を失念していたらしい。
     それをフン、と鼻先で笑い飛ばし、
    「……別に良いだろうが。大体、最初にゲームを持って行っても良いと言い出したのはお前だろう」
    「ゲーム機を、とは言ったが……普通、旅行先までBS5本体を持っていこうとするバカがいるとは思わんだろ。せいぜいそっちの……」
     と、同じくスーツケースに入れ込んだSwi◯chを指差し、
    「旅行先に持っていくなら、普通そっちだろうが」
    「いーや!ボクはコイツも持っていく。だからな、長谷川。コイツの持ち運びはお前に任せた。これが重いんだ。本体だけで5キロ近くあるしな!精密機械だしな!雑に扱われて壊れでもしたらボクが泣く!落ち込んで仕事しない!!」
     壊れたら事務的な仕事は暫くしない宣言をしつつも、元から事務仕事なんてお前やらないだろうが、との言葉を長谷川に即行で返され、やれやれと肩を竦めてみせる己の副官に、鳴海はひたすらむくれた顔をしてみせたのだった。

     さて、翌日の某所有名温泉スパリゾートホテル。
     複数の温泉施設あり、ジムなどのスポーツ施設も併設、プールあり宿泊施設あり、な感じの、よくある定番の施設である。
     で。最近、そこに出来たばかりの別館、客室数336室、それを一泊2日で貸し切りにした。

     亡き四ノ宮長官、現伊丹長官、そして、超巨大企業の出雲テックスさんとのズブズブの関係により、コネで出雲さんの所の系列グループでもある、とあるホテルの施設をまるごと借り切ったのだ。
     防衛隊の全ての戦闘員、管制官、彼らに休息を……そんな願いを込めての防衛隊の慰安旅行である。
     せめて、一日くらいはのんびりと隊員達が体を休める事が出来るように、そんな感じだ。

     が、しかし……
    「ああん?何で、お前らがここにいるんだ?」
    「それはこちらのセリフですが?」
     案の定な展開といえば、そうだが。
     ベッタベタな展開だが、スパリゾートにやってきたのは、第1部隊だけではなく、第3部隊もだった。
     大型の観光バスに乗って、意気揚々と有明りんかい基地から出発した鳴海達だったが、現地に着いた途端、犬猿の仲とも呼ぶべき面々と遭遇し、鳴海は明らかに不機嫌そうに声を荒げた。
     対する相手は涼しいものである。
    「怪獣10号襲撃による基地の半壊で、うちの隊員達も碌に休めないままでしてね。日頃の労をねぎらうためと、伊丹長官からの勧めもありまして、こちらにお伺いしたのですが?」
    「そりゃこっちも同じだ!たまには休めと」
    「たまには?」
     しょっちゅう休んでるのに?
     保科は口元に笑みを浮かべたまま、穏やかな口調で厭味ったらしい言葉を口にした。
    「こ、のっ……!」
     彼の言葉に、声を上げかけようとするも、
    「事実、お前は討伐以外は頻繁に休んでいるだろうが」
     ゴス、と鳴海の脳天に拳一発。
     冷めた口調の長谷川が、ジト目のまま、そう言って保科を見遣った。
     ちなみに、鳴海の隣にいたキコルも同じくジト目である。
    「何をする!長谷川!毎回毎回ボクの頭を殴るな!!バカになったらどうするんだ!?」
    「どれだけ殴ろうともこれ以上バカになることもないだろう。さっさとチェックインするぞ。荷物を置いたら、演習場に移動だ」
     言いながら、長谷川は慣れた手付きで鳴海の首根っこを掴んでひょいと持ち上げる。
     175センチ、ぼちぼち平均身長の成人男性を210センチの大男が軽々と持ち上げて運ぶさまはなかなかにシュールだ。
     しかし、この二人にとってはいつもの事である。大変に不健康そうな、ゲームのしすぎで隈を作りまくった男は手足をジタバタさせながら降ろせと主張するものの、そんなものはどこ吹く風と言わんばかりの涼しい顔で、
    「四ノ宮は鳴海の荷物を頼む。俺はコイツと、これを運ぶ」
     と、副官は鳴海が慎重に移動させろと、念を押していたBS5入りスーツケースを小脇に抱えながら言った。
    「あ、はい」
     一応、鳴海の荷物としては、ゲーム機本体入りのスーツケースに加えて、防衛隊のマークと第1部隊の隊章のワッペンが縫い付けられている官制品のスポーツバッグ、この二つだった。
     バッグの方には、何やらアニメキャラの缶バッチやらアクリルキーホルダーやらがこれでもかとばかりにつけられていて、ごちゃごちゃしすぎである。
     しかもまぁ、欲丸出しな男ヲタクというべきなのか。
     描かれているのが肌を覆うものが限りなく小さい、キワキワな肌面積の広い美少女の絵柄だったりで……多分、18禁美少女ゲームの購入特典とか、そんなのだろうなーーと、思えるようなグッズまでついている。
     しかし、今更なので何も言うまいとキコルは思った。
     正直、邪魔なんで引きちぎってとっとと捨てたい所だが、それをやった日には末代まで愚痴愚痴と言われそうで、逆にうざったくなりそうなので踏み留まっている。
     日々、鳴海への尊敬の念、などというものは一瞬起こっては、容赦なく叩きつけられる現実に呆気なく消え去っていくものだ。
    「ま、鞄にグッズつけてるなんて、いつもの事だしー。他にも酷いもん、部屋にあるし……」
     汚部屋在住の典型的なオタクである。
     しかも、長谷川副隊長の厳しい管理がなければ、衣食住全てを疎かにしていそうな男である。
     戦闘能力にのみ特化した、それ以外は長谷川の手厚い看護サポートがなければ、瞬く間に汚部屋は更に腐海と化す。
     飲み散らかし、食べ散らかしは当たり前。言われるまでは絶対自分では片付けない。というか、片付けると言いながら、結局は片付けない、そういう男なのだ。
     キーボードの溝は埃が溜まっていて一度も掃除したことがなさそう。マウスは手垢がついているが本人は一向に気にしない。
     目を血走らせながら、アニメキャラのふにゅふにゅおっぱいマウスパッドで手首を保護しつつ、パソコンで転売ヤーとのネット上での戦いを繰り広げ、日頃のゲームで鍛えた指さばきでマウスを連打クリック、目当ての商品をゲットしてホクホク、金が足りなくなったら、金持ちの新人にたかる、そういう奴である。
     とりあえず、駄目人間の筆頭なのだから。
     たとえ、部屋の中に、あられもない姿にひん剥かれた美少女の抱き枕とかあったとしても、そんなもんだろうとキコルは、非常に冷めた目を向けるだけだった。
     しかし。
     抱き枕の表面と裏面とで絵柄が違うとしても、なんっで足首にショーツ引っ掛けた下着姿の女のコがえっちな顔して誘ってる、みたいな絵柄なのよ、こんなの隊長室に無造作に置くな!ちょっとは隠すくらいしろ!裏面なんてお尻丸見えだし。
     ってか、なんでこれ微妙にパリパリしてんのよ、洗濯しろや!
     と、彼女は思わない事もない。

     だが、少女よ、本来、鳴海弦に夢なんて抱いてはいけないのだ。
     生活力の無い男というのはいるものである。
     恋人がいようがいまいが、それでいきなりスパダリになるとか、そんな夢みたいな展開など、万に一つもない。そこんとこちゃんと理解しとかないと、ただの鬱陶しいメンヘラになるだけなんで、コイツは止めとけや、としか言えない。

     とはいえ、幸いにしてと言うべきか。
     まだここにいる少女は、この駄目人間に対して、クソ面倒なバカ師匠、バカ兄貴、くらいにしか思っていないので、今の所は無問題である。
     せいぜい、日々地団駄を踏みながら鳴海の駄目人間っぷりにやきもきする、それくらいで、たま〜に見せる戦闘時のイケメンな姿に、コロッといきそうになって、現実を思い出して、あっちが本性!と我に返るだけだ。
    ……無論、いつかは少女の心の内に仄かな恋心でも育つのかもしれないが、それはまた別のお話である。

     と、いうような事を、鳴海の鞄を抱えながら、ぶつくさ言いつつも子犬の如く、抱え上げられた鳴海と長谷川の後ろ姿についていく少女を眺めながら、保科は両腕を組んだまま思った。

     で。
    「何、一人でニヤけながらモノローグに耽ってるんだ?」
     両腕を組んだ保科の傍らでミナが冷めた眼差しを向けながらツッコミを入れる。
    「いやぁ、第1部隊の隊長にほのかな恋心を抱く美少女に、現実というものをナレーションしてました」
    「……あいつが駄目人間なのは否定しないが……だが、クズではあっても、悪人ではないだろう……クズでも」
    「隊長も、結構身も蓋もない事言ってません?」
    「まあ……うん」
     否定はしない、とミナは肩を竦めてそう言って、
    「だが、憎めないだろう、アイツの事。愛すべき戦闘バカだ。ああ見えても、情には厚いしな。ツンデレだが……」
    「……まあ、確かに」
     言われて苦笑する保科に対して、彼女も小さく頷きながら、
    「さて、私達も荷物を置いたら演習場に向かうとしようか。一応、建前は必要だろう」
    「ですね、それにしても、朝一チェックインありがたいですわ〜この辺り、やっぱりコネ……ですねぇ」
    「だなぁ」
     言いながら、第3部隊の隊長、副隊長は、第2部隊の基地がある金沢に向かってそっと合掌していた。
     丁度、そちらの方面に『彼』がいるのである。毎度お馴染み、出雲テックスさんの御曹司が。
     今回も色々と手配をしてもらえたらしい。
     良い所のホテルに泊まれるのも、彼のお陰なのであった。


     チェックインを早々に済ませた面々は、ホテルマンに部屋に荷物を運んでもらう事にして、早速、バスに乗って演習場に向かう事にした。
     件の演習場は、基本的には陸上自衛隊管轄のもので、各地域にある駐屯地内にある広大な土地を使って行われる。
     当然、地域住民への月間の演習予定などは周知され、演習地がある地域の各市町村の防災管理課などがホームページにお知らせとして載せている。
     防衛隊の演習に関しても既にその予定の中にねじ込まれており、訓練内容と実施時間帯なども大まかに記載されている。
     今回の演習の訓練内容としては、
     航空機の使用、射撃、大音響を発する訓練等に該当し、
     また、訓練時間としては、
     8:00〜19:00の終日、
     航空機飛行の凡例として、6:00〜19:00を予定として告知してある。

     演習地の広さは約50k㎡……さすがに日本最大の広さをほこる北海道の矢臼別演習場に比べれば規模は狭い。あちらならば、2個師団(1師団6000〜9000名 防衛白書参照)相当の大所帯による大規模演習なども可能であるし、広大な広さ故に、射程18km以上の射撃訓練等も可能であるわけで、特に亜白ミナの超長距離訓練にはうってつけではあったものの、さすがに防衛隊がこぞって北海道まで慰安旅行がてら行くのは……ということになり、より近場の演習地での訓練に留まっている。
     そもそもが演習……とはいえ、大怪獣との戦闘は、荒野での戦いよりは、市街地での戦闘を想定とする事が多い。あと、2個師団相当の人数で演習が出来るほどに防衛隊隊員はいない。自衛隊も圧倒的人手不足だが、防衛隊員は更に少ない。
     更には、何故か怪獣達は人のいない所よりも、人がより多く集まっている場所に寄ってくる性質を持つ。
     まるで己の脅威を脆弱な人々に知らしめ、怪獣災害の恐ろしさをその身に刻ませようとするかのように。
     だが、可能性は0ではない。
     先だっての9号クラスの大規模災害――9号を討伐しようとも、さらなる脅威は存在し続ける。怪獣は自然災害の一つなのだから。
     彼らの脅威は、地震や台風……水害、雪害……それらの災害のように、今も何処かで、災害被害による救助を待っている人々がいる、彼らを守る為の活動が防衛隊の仕事なのだから……何事も有り得ない、で日頃の訓練を怠り、何もせず基地内でふんぞり返っているだけでは、それこそ、防衛隊の存亡そのものにかかわる。

     で。
     肝心の演習だが、描写は全面カァーーーット、である。んな面倒臭いもん、誰が語るか馬鹿野郎。今回の話は温泉話なんじゃ、添えもんに描写割く余裕はないわい、なノリで。
     というわけで、防衛隊の面々は朝から日暮れ近くまで、演習に明け暮れた。
     泥まみれ、汗まみれ。
    ……血まみれでないだけマシな感じで……みんな、ボロっ……な言葉が相応しい感じで、ボロッボロだった。
    「カーーーッ!はやく風呂!風呂に入りたい!!汗臭いんじゃ!」
     嫌々ながら戦闘用スーツを着用させられ、他の識別怪獣兵器持ちの面々とガチモンの模擬戦闘をさせられた鳴海は、帰りの移動用バス内で風呂入りた〜いを連呼しながら、バスの先頭席にふんぞり返ってぼやいていた。
     反対側の座席には副隊長の長谷川。
     後方の席にはキコルやカフカがいて、ポッキーやらじゃがりこやらを交換しあっている。
     まんま、修学旅行か遠足のノリである。
     更に後方の席には東雲姐さんとかもいたりして、宿泊地近辺の観光雑誌を眺めつつ、行きたいオススメ日帰り温泉チェックをやってる。
     ほんと、まんま観光……以下略である。
     ポリポリポリ、とつまんだじゃがりこを食べるキコルが出す音に、
    「ボクにも一本くれ……腹減った」
    「ん」
     カップに入ったじゃがりこをそれごと差し出すキコルに、鳴海は一本どころかがっつりと五、六本奪取しつつ、大人げねーなとキコルは少なくなった中身を眺め、
    「ほら、キコル」
    「んー」
     カフカがくれたイチゴ味ポッキーをツンデレな表情で、仕方ないわね、もらってあげようじゃないのよとパクっと口に入れて、サクサクサクとクッキー棒を食べて行く。
     ポリポリポリ、サクサクサク、ペラッ……ペラ……食べたり、食べたり、雑誌めくったり、時々、グオオオォとイビキが聞こえたり……概ね、全力で演習やった面々の思い思いな姿が車内にはあって――それは後方を走る第3部隊の面々を乗せたバスも同じで……
     宿泊地であるホテルに戻るまでの十数分、一応は、全員大人しく、お行儀はともかく、ちゃんと座って戻っていった。

    ……そして、ホテルに着き、フロントで泊まる部屋のカードキーをもらって、鳴海は意気揚々と上階のスイートルームに向かった、までは良かったのだが……
    「おい、コラ、てめぇら……ここはボクの部屋だぞ」
     案の定というか、何と言うか。
    「そうは言われましても、僕達もここの部屋のカードキーを貰いましたし」
     第3部隊のミナと保科の両名。
     そして、
    「あ、亜白隊長と保科副隊長!ご無沙汰してます」
     カードキーを片手にキコルと、困ったような顔をしている年長者のカフカ。
    「…………」
     ついでに仏頂面をした第1部隊副隊長長谷川エイジが、溜息を一つ。
    「予算の問題だ」
    「はぁ?予算んんん???なんでスイートルームに泊まってまで、こいつらと顔を合わせねばならんのだ!断固拒否だ!拒否!他にも部屋はあるだろうが!」
    「全室埋まってる。それに、ここなら、ベッドの数も多い。大人数で泊まっても問題なかろう」
    「だからって、何が悲しゅうてクソムカつく野郎どもやらバカ弟子やらと泊まらないといかんのだ。ボク一人で泊まって、ゆっくりゲーム三昧して、部屋の窓から、ワイン片手に街並み見下ろして愚民どもめゴッコが出来ねぇじゃねぇか!」
    「んなもんやる暇あったら、溜まってる事務仕事片付けたらええやん。ゲームて、これ、慰安旅行は建前で演習の一環やろうに……」
     鳴海の愚痴に、ぼそりと保科は呟き、
    「まあ、ここで立ち往生すると、他の隊員達の迷惑だ、早く中に入ろう」
     鳴海の地団駄踏みを無視して、さっさと手持ちのカードキーを使って部屋の中に入るミナ。
    「あ、こら、ボクの許可無しに……」
    「わー!部屋の中、ひろーい!内装も綺麗!」
    「確かに良いなぁ。お、窓からの眺めも良いな。ほら、ここから海が見えるぞ、キコル」
     亜白の後ろからゾロゾロと、鳴海を無視して部屋の中に入っていく面々に、
    「ムッキィーーー!!!ボクを無視して中に入るな。ってか、ホテルからの眺望を最初に楽しむ特権が……」
     ブツブツと言いながらも、大人しく中に入っていく鳴海。
     部屋に関しては、リビングと寝室が広めに取られたもので、ベッドは通常タイプのベッドが向かい合わせに4台、それに+して小さめのベッドが2台、合計6名が泊まれるものだ。
     入って直ぐ正面の部屋が和モダンタイプのリビング。
     全体的にはブラウン色で統一され、壁掛けのテレビを前に、畳敷きの床には座り心地の良さそうな大きめのソファーや、ローテーブルや座椅子も複数用意されている。
     それに宿泊地の街の全景を一望出来る広めの窓にはちょうど暮れ始め、茜色に染まった空の下に横たわる海や、キラキラと輝く街の灯りなども目に出来て、保養所に来たなぁ、観光地やなぁ感が強い。
    「亜白隊長、綺麗ですね。あ、後で一緒にお風呂行きませんか?ここ、最上階に露天風呂があるみたいですよ」
    「露天か……是非、行こう」
    「行きましょ行きましょ♪温泉の泉質美人湯で評判みたいだから楽しみ〜」
    「その前にまずは夕食かな?一階のレストランでビュッフェが楽しめるみたいだよ。スイーツバイキングも出来るみたい」
    「ホントですか!?やった♪」
     キコルとミナの女子ズに漂う朗らかな雰囲気を他所に……
    「おい、てめぇら、まずはボクのBS5の設置を手伝え」
    「はぁ〜?なんで僕らがそないなこと……」
    「副隊長……諦めた方が良いですよ。同室になったからには、鳴海隊長のお世話係任命も同じで……」
    「まずはテレビの配線チェックだな……LANケーブルの有線用ポートはあるようだ……ここに差し込めば良い」
    「はぁ……分かりましたよ。あ、HDMIケーブルの挿し込み口はここやろか……ぽちっとな……んん?嵌まらんなぁ」
    「それは逆だ、カッパ副隊長」
    「そない言うなら、自分でセッティングやればええやん」
    「面倒臭い」
    「ホンマガキやなぁ」
    「なに、おぅ?」
    「はいはいはい、鳴海隊長も保科副隊長も、ステイ!ステイです!さっさと終わらせて、ご飯食べに行きましょう!副隊長、スイーツバイキングにモンブランあるみたいですよ」
    「む……さよか」
    「鳴海隊長、有名シェフが料理長務めてるみたいですから、お夕飯は期待出来ますから!その後、お風呂行って、マリカー皆でやりましょう!」
     隊長と副隊長の間に挟まれ、あれこれと気遣いを見せる年長者カフカの胃の具合は如何に!?
     な、感じではあるものの……
    「俺の胃痛もこれで少しは和らぐな……」
     鳴海のオカン長谷川が、カフカに役を丸投げしながら、溜息を吐いていたりして……多分、このノリで、1日過ぎるのだろうなーな展開が続いていった。

     そして――冒頭の、サウナ対決である。
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    ジョシュクラ時々鳴キコ保ミナ

    PROGRESS怪獣8号の二次創作。
    またか…また関東圏を中心としたコラボか……地方民には遠いんじゃぁ!
    極楽湯コラボぉ、行きたかったよぅ。温泉巡りが趣味なのによぅ、スパでも良いんだよ、コンチクショウ、保科副隊長の細マッチョな汗ばむ裸体みてぇよぅ、グッズ通販するしかねぇよぅ。
    そんな作者の雄叫びとともに、終末の獣と化す内心の心情と鬱憤を兼ねて。
    Xで前に載せてたものの再掲。まだ書き書け。
    褒めてくれたら続き書く
    熱湯温泉耐久レース!「あっつぅ」
     思わず、男の口から呻くように声が漏れる。
     あまり日に焼けた事の無い、大変に不健康そうな、その実、結構鍛えてる裸体から、汗が滲む。

    「…………」
     横には貼り付いた笑みをそのままに、けれど、額から滲む汗は隠しきれず。
     つ、と顎から汗の珠が雫となって零れ落ち、更には、こちらは細身ではあるものの、鍛えに鍛え抜いた肢体にも汗が浮かび、天井から照らされる朧げな光に濡れ光る。

     黒白ボサ髪男に、糸目の黒髪オカッパ。
     日本防衛隊第1部隊隊長の鳴海弦と、同じく同隊第3部隊副隊長の保科宗四郎である。

     とりあえず、二人とも上半身裸だ。

     そして、彼らの下半身にはタオルが掛けられ、二人揃って腰掛けに座ってはいるものの、直に座れば当然剥き出しの尻が熱い。
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