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    のん*(はとorテン*)

    @poppolier

    右ラハです('ω') 
    自キャラ(お花)との絡みが今のトコと多い気がします!

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    POIPOI 10

    光ラハ
    光→自機 お花=セレブ
    ラハ→ノア

    クリスタルタワー攻略のネタバレがあります。
    設定と外れてる解釈もあるので、ゆるい感じで読んでください(*ノ´□`)ノ
    『其れはまるで王子様』の続きです。

    其れはまるで御伽話クリスタルタワー。
    自分の事。
    明かにされてゆく。

    調査はもうじき終わるだろう。

    何となく、そんな気がしてグ・ラハ・ティアは身の回りを片付けを始めた。

    調査に関する物を整頓し自分が居なくても分かるように纏める。

    あとは私物か....

    もともと私物は少ない。
    小さな鞄を開くと一冊の本が目にはいる。

    「これ...」

    いつか返せるだろうか?
    そう思っていたが...。

    本を手に取るとグ・ラハは天幕を出た。

    片付けの間に夜もすっかり更けこんでいた。
    空をみれば月が天井ちかくに昇りかけている。
    火番の者が焚き火を眺めている程で、パチパチと音が聞こえるくらい静まりかえっていた。
    いくつかの天幕は明かりがまだ灯っている中、グ・ラハは探し人の天幕を探す。

    ここ最近はクリスタルタワーの調査も立て続けに行われ、今日も彼は最前線で挑んでいた。
    ...さすがに疲れて眠ってしまっているだろうか?
    目的の天幕に視線を向けると灯りは消えていた。

    (寝てしまったか...)

    足音を忍ばせ彼の天幕の前で耳をすませるも、物音もなく静まりかえっていた。

    (明日にしよう)

    グ・ラハは手元の本を見つめた。

    何となくそのまま戻る気にもなれなくて、キャンプ地を出てクリスタルタワーに続く道をを歩きだす。

    静かなものだ。
    満点の星が銀泪湖にもう1つの夜空を創り出し、それを飾る様にクリスタルが散りばめられ仄かに蒼く灯っていた。
    その先にそびえ立つクリスタルタワーも静寂につつまれ、美しく輝いていた。

    調査で訪れてからグ・ラハは眠れない夜などに散歩がてらに閉ざされたゲートまで訪れ、1人の時間を過ごす事があった。

    ある夜、同じく眠れない様子の冒険者を誘ってからは、互いに誘ったりしながら度々2人で来ては旅の話や本の話や文字などを教えたりなどして過ごした。
    最初こそ人離れした王子様みたいで近より難かったが、人柄や歳が近さもあるのか..なんだか不思議と何処かで会ったような懐かしさもあってすぐに打ち解け、今ではすっかり友人の様な存在になっていた。

    (今日も本当は一緒に来たかったな)


    遠くにゲート見えた。
    目的地につく前に歩みが止まり、視線は一点を見据えた。

    「え...」

    誰も居ないと思ってた目線の先に人影が揺れた。
    人影もグ・ラハに気づくと片手を上げて駆け寄る。
    徐々に正体が確信に変わる。

    「やぁ グ・ラハ」

    長い耳をピンと立て、嬉しそうな微笑みを浮かべた冒険者だ。

    「アンタ 何でここに?」

    寝てると思っていた。
    何で彼が此処に?
    彼が先に来てるなら、明かりが灯された天幕でグ・ラハが起きていた事は分かるはずだ。
    けど声はかけられていない。
    だからまさか居るとは思っていなかった。

    ってことは...
    彼は1人で居たかったのだろうか?

    「あ...じゃなくて。そのごめん!悪いな!1人の所を邪魔したようだ!」
    来た道にくるりと回れ右をしてその場を早々に去ろうとしたグ・ラハの手が後方に強く引かれる。

    「うわぁ」

    バランスを崩し倒れる感覚に思わず目をつむる。
    地面に叩きつけられる衝撃に耐えようとしたが、背中は何かに優しく包まれ、花の匂いが舞いふわりと包みこむ。
    一瞬何が起きたか分からず痛みすらない状況にゆっくり目を開くと、困ったように微笑む彼が覗きこみ、背を預けるのが冒険者の胸だと気づいた。

    「ごめんね 大丈夫?」

    倒れかけの体制と驚きで動けず、首を縦にこくこくと動かし頷く。
    掴まれてていた彼の手が離れ、両手が動く気配で体制を戻されると思っていた。

    「グ・ラハ... 逃げないで」

    耳元で彼が囁くと同時に、グ・ラハの胸元あたりを両手でがちりと掴まれた。

    「っ!........」

    驚きの連続で耳と膨らんだ尻尾がピン立ち硬直したグ・ラハを、冒険者は2.3歩後ろに引きづったかと思えばガクンと膝を崩され軽々と彼の上に座らせられてた。

    「...は」

    ばくばくと心臓が加速する。
    ゆっくりと彼を振り向き『なにするんだ?』と声なく怒った。

    「ふは!グ・ラハかわいい!心臓すごくばくばくしてるね...ごめんね」

    グ・ラハの怒りに怯まず、謝りながらも可愛いと旋毛に頬や顎をグリグリとすりよせる。

    たった数日間で慣れた冒険者の突拍子ない行動に、グ・ラハはすっかり慣れため息をついた。
    こうなると問い詰める方が疲れるのだ。
    ただやりきれない『もやり』を払うかの様にしっぽが地面を数度叩いた。

    「いると思わなくて...寝てると思ったんだ」

    ふてくされた声が出る。
    いつもは誘ってくれたのに...。

    「なんか忙しそうだったから」

    「来たのか?」

    そうか...
    全く気がつかなかった。
    申し訳なく地面をたたくしっぽと耳がペシャリと垂れた。

    「ごめん...気がつかなかった」

    「いいよ それに何となく此処で会えそうな気がしたから」

    「来なかったらどうしたんだ?」

    たまたま本に見つけて、帰る気持ちになれなかった状況が重なって気まぐれで来たものだった。
    其れがなければ来なかったらかもしれない偶然だ。

    「僕の勘は結構あたるんだ!だからね」

    胸の前に組まれた手をぎゅっとさせ

    「グ・ラハは此処にきたじゃない?」

    得意そうに笑って見せた。
    今の体制をグラハは意識して彼の手を軽く叩いた。

    「それより放してくんない?」

    「嫌です」

    即座に却下された。

    「嫌って!あんたなぁ」

    何とか自力で抜け出そうと暴れてみるがピクリとも動かない彼の手元に唯、疲れただけだと諦める。
    すらりと見える華奢そうな腕は、日々の冒険と剣術で鍛えられてるんだろう。
    グ・ラハも其なりに鍛えているし、少しばかり小柄とはいえ成人男性が暴れてもびくともしないとは..。
    悔しまぎれに睨み付ける様に彼を見上げる。

    その視線を避けるように冒険者は拗ねている様子だ。
    いつもは王子様みたいな綺麗な顔がこうなるとは。
    興味深めにまじまじと見てしまう。

    「珍しいな..あんたがこうなる事もあるのか」

    顔を隠すように彼はグ・ラハの後頭部に顔を埋めた。

    「...僕もそう思う。 なんでか分からないけどグラハの前だと我が儘になってしまうみたい」

    冒険者はため息をつく。

    グ・ラハは悪い気にならなかった。
    むしろなんだか特別と言われてる様で心地良い。

    手をのばし冒険者のさらりとした髪を撫でる様にぽんぽんと優しく触れた。
    ふは!っと嬉しそうに笑う声が響く。

    自分の行動にこんなに嬉しそうにする人がいるんだな。
    そう思うと嬉しくて..なんだか。

    (愛しい)

    咄嗟に湧いた感情にグ・ラハは驚いた。
    人にそんな感情を向けるのは初めてだ。
    なんだか目頭が熱くなる感覚を必死で抑え込んだ。

    (顔 見られなくて良かった..)

    「グ・ラハ」

    寂しげな声で名を呼ばれる。

    「何だ」

    気づかないように返事を返す。

    「...この手を放しても何処にもいかないよね?」

    すがる様な声。
    腕に力を込められ少し震えていた。

    (勘がいいか...)

    その問いに胸がざわりとした。
    何となくこの調査が終わったら彼にも会えない予感がしていた。
    ただ確信がない勘だ。
    言葉にしたら本当になる気がして、グ・ラハは口をつぐみ視線を落とした。

    手元の存在に気づく。

    「お花 これ渡しに来たんだ」

    冒険者の腕に持ってきた物を当てると、何だろうと彼は肩越しに確認しながら受けとる。

    「あ..この本」

    子供みたいに声を跳ねさせた。

    「やるよ」

    「え?...でもこれ」

    彼の戸惑う視線が伝わる。
    グ・ラハは本を見つめながら撫でた。

    「いつか あの本屋に返せたらと思ったけど。
    調査終わったらバルデシオン委員会に戻るだろうしな。
    冒険で各国飛び回るあんたの方が見つけやすいだろ?
    見つからなかったら持っててくれても手放してもいいからさ」

    解かれた腕の間からグ・ラハはするりと抜け彼の方に座り直す。
    うな垂れた頭から表情が見えなかった。
    視線がまっすぐ本に向けられている。
    その様子は普段はグ・ラハより背も高く堂々とした彼が、小さな子供のよう見えて可愛い。

    「こうして見ると改めてあんたって年下だなって思えるな!」

    ニカリと笑いながらグ・ラハは、くしゃくしゃと冒険者の頭を撫でた。

    「1つくらいだし...」

    撫で付ける手首を掴み止め、彼は睨み付ける。

    「さすがの英雄様だ!こわい!こわい!」

    茶化す様に笑えば、彼も降参と両手をあげた。

    「オ兄サン この本どんな話なんですか?」

    彼が茶化す。

    「まずは自分で読んで見なよ」

    「グラハから聞きたくてさ」

    甘えた口調で、王子様スマイルを向けた。

    (絶対この顔に弱いの握られてるな...)

    深いため息をつきながら、冒険者の横に座り直す。絵本の頁を開く。
    グ・ラハは彼に語り優しく語りはじめた。

    「昔々ある王国に可愛いお姫様が生まれました」

    まるで子供に聞かすように。
    隣には絵本に描かれた王子様の様な冒険者が瞳を輝かせて耳を傾けた。


    ▪️
    『おやすみ』という彼を見送った。
    それがこの物語の結末だ。
    妖精も魔女も王子様も存在しない。
    ぽっかりと穴の空いたような気持ちだけが残った。


    クリスタルタワーの調査が終わった。
    グ・ラハ・ティアが残した調査書はパルデシオン委員会に無事送られた。
    一枚の彼らしい秘密の報告書を残して。

    依頼も終わりを迎えた冒険者は、ラムブルースに最後の別れを告げた。

    次はどうしようか?

    レヴナンツトールの酒場で、珍しく果実酒を飲みながら、一冊の本をペラペラと捲っては溜め息をついた。

    「眠り姫? また可愛らしい本を持ってるんだな」

    聞きなれた声に振り向くとサンクレッドがエール片手に立っていた。
    近くで依頼でもあったのだろうか?

    「預かりものというか...依頼というか..貰い物というか」

    煮え切らない様子の冒険者が面白く向かいの席に座る。

    「珍しいな。お花がそんな依頼受けるなんて。それ主に返せないのか?」

    「返せないし...出来たとしても返したくないかな」

    開いた本の頁には茨バラに囲まれたお姫様が眠っていた。
    それを愛しそうに指先で撫でる様子にサンクレッドはニヤリと笑った。

    「うちの王子様にもとうとう春か・・」

    「ん?」

    きょとんと向ける表情に、彼がまだ無自覚なのだなと悟る。

    「まぁあれだな。どんな形であれ依頼達成して報告できるといいな!そうそうタタルが頼みたい事があるそうだから砂の家に来いと伝言だ。」

    そういうと一気にエールを流し込みサンクレッドは早々に立ち去っていく。

    お花は開かれた窓からクリスタルタワー眺めた。

    「いつか逢えるかな」

    茨バラの呪いは100年目に解けるという。
    ヴィエラの寿命はとても長くてきっと100年後さえ生きている。
    その頃ならもしかたら...

    御伽話じゃないけどもさ。
    もしこの先にまた逢える希望が在るならば。
    これも悪くない気がする。

    遠い未来に待つ君に胸が高鳴る。
    こんな気持ちは初めてだ。

    目が覚めた君は。
    年を取りすっかり変わった僕は分からないかもしれないけども。

    おやすみと言った君に伝えにいくよ。

    『    グ・ラハ・ティア』。


    (終)
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