廊下に出るといおくんの作る夕飯の匂いが漂っていた。美味しそうな匂いなのは当然違いないのだけど、もしかしてと思ってしまう。
「おい大瀬」
珍しいことに猿川さんが二階にやってきた。寄った眉間の皺が自分の予想の正しいことを伝えてくる。
「今日も……?」
「今日も、だよ。鍋、モツ鍋だって」
ここ最近晩ごはんが頻繁にお鍋なのだ。あのご飯を作ることに命を賭けていると言っても過言ではないいおくんが、だ。聞いたところによると野菜をたくさん食べたいテラさんのリクエストらしい。こんなゴミに優しくしてくださり、自分の作品のことも褒めてくださるテラさんの意見に文句をつける権利はないし、いろいろ工夫して飽きないよう作ってくれるいおくんにいちゃもんをつけるのも嫌だけど、思わず感じてしまう。
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