猫の日 確か、細く艶のあるふわふわとした髪を撫でていたはずだ。
何の気なく。違和感なく。ただ当たり前に。
撫でられている当人も拒絶することはなく、当たり前のように他人の部屋で寛いでいた。他人とはいうが、恋人の部屋であるのだから自室も同然なのだろうが。
そう、何もおかしなことなどなかったはずだ。変わったことなどなかったはずだ。部屋に招き入れたときだって。連絡を受けたときだって。なによりついさっき、頭に手をおいたそのときだって。
では、なぜ?
一方通行の頭をゆっくりと撫でつけていた上条は、不意に手にあたった薄く柔らかな猫耳を受け入れられないまま固まっていた。
「はァ?」
何を言ってやがるんですかと言いたげな声を隠しもせず、一方通行はベッドの上に座っている上条へと視線を向ける。先ほどまで暇つぶしにと読んでいた上条の参考書はパタンと閉じられ机の上に置かれた。
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