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    ❖四葩

    四葩でよひらと読みます。
    突然版権に再熱する人。そのうち冷めてまた再熱する。
    @tadanosanbun

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    ❖四葩

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    何も考えずに書いたご都合主義なお話
    なにがどう作用したのかは各々で補完してください

    ##とある魔術の禁書目録
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    猫の日 確か、細く艶のあるふわふわとした髪を撫でていたはずだ。
     何の気なく。違和感なく。ただ当たり前に。
     撫でられている当人も拒絶することはなく、当たり前のように他人の部屋で寛いでいた。他人とはいうが、恋人の部屋であるのだから自室も同然なのだろうが。
     そう、何もおかしなことなどなかったはずだ。変わったことなどなかったはずだ。部屋に招き入れたときだって。連絡を受けたときだって。なによりついさっき、頭に手をおいたそのときだって。
     では、なぜ?

     一方通行の頭をゆっくりと撫でつけていた上条は、不意に手にあたった薄く柔らかな猫耳を受け入れられないまま固まっていた。


    「はァ?」
     何を言ってやがるんですかと言いたげな声を隠しもせず、一方通行はベッドの上に座っている上条へと視線を向ける。先ほどまで暇つぶしにと読んでいた上条の参考書はパタンと閉じられ机の上に置かれた。
    「いやだから! 一方通行の頭に猫耳がついてるんだってば!!」
     如何にも慌てていますといったふうに両手を上げたり下げたりしながら上条は事の次第を一方通行に訴える。
     なにもせず、ただのんびりと甘い時間を過ごしていたはずなのに、それがほんの一瞬で猫耳が生えるという珍事が起きている。
    「あくびすンのに目閉じた隙に俺に猫耳が生えましたって言われて誰が〝はいそうですか〟って受入れンだよ」
    「本当なんだって」
     真剣な眼差しで一方通行を見つめる上条の視線に気圧されたのか、一瞬ぐっと息をつまらせ、それを投げ捨てるように吐き出すと、一方通行は自身の頭に手を伸ばした。
    「ンなこと言われても」
     ことばがとまる。
     さわさわと柔く触れる猫耳の感触。それが信じ難いのか、珍しくきょとんとした一方通行を見て「な!?」と上条は思わず声を上げる。
    「だから言っただろ」
    「……、」
     耳を触っていた手がいつの間にか止まっている。あ、これまた珍しく思考停止してるな。なんて思った次の瞬間、一方通行が上条に詰め寄る。
    「オマエ、これに触ったよな?」
    「ああ、軽く手はあたったけど」
    「右か?」
    「え?」
    「右手だったのかって聞いてンだよ」
     言われてハッとする。そうだ、さっき一方通行の髪を撫でていたのは右手だ。その右手が猫耳に触れた。軽く。それでも、確かに。
    「なんで消えてないんだ!?」
    「オマエが触って消えてねェってことは、だ」
    「誰かの能力だとか魔術だとかじゃないってことだよな……? じゃあなんで」
    「俺が聞きてェよ」
     それはそうだろう。耳が生えた当事者は上条ではなく一方通行なのだから。一方通行に何かしらの力が働いたと考えるのが妥当だろう。
    「つか、お前反射は?」
    「誰かとやり合ってるってわけじゃねェんだ。必要最低限しか反射してねェよ」
    「そうだった…………」
     もし仮にこれが戦闘中であれば、一方通行の反射は有効だっただろうが今は日常生活の真っ只中なのだ。……もうすでに非日常ではあるが。
     事態の解決にはまず何から手を付けるべきか。一方通行はその日の行動を脳内で振り返る。普段通らない道を通ったわけでなし、不審人物を見かけたりすれ違ったりしたわけでなし。はて。
     ぐるぐると思考を巡らせる一方通行を余所に、上条はふと気になってその手を伸ばした。
    「なあ、一方通行」
    「あ?」
     考えるためか無意識に逸らしていた視線をもう一度合わせようと上条の方へ顔を向ける。
     ――途端。両手が頬を包みこんだ。
    「こっちの耳なくなってる。マジでどうなってんだ……?」
     上条はヒトの耳があっただろう位置をさわさわと撫でる。何度も。なんども。
     どうやら猫耳が生えたことによりこちらの耳は消えてしまったらしく、そこにはなにもない。耳があった位置に髪が生えているわけでもなく、ただ本当に綺麗さっぱり耳だけが消失しているようだった。
     上条自身はそれを確認したかっただけだったのだが、
    「……おい」
     ヒトの耳がなくなったことで耳があった場所を触られてゾワゾワとするような、変な感覚が一方通行の背中をなぞる。
     が、上条はそんなことは知ったことではない。
    「にしても本当なにがどうなってるんだか……」
    「おい」
     耳があった場所だけでなく、髪を、頭を、ついでと言わんばかりに頬や額、首筋まで触れる。髪もそうだが、他の場所は何の変化もない。触った感触も変化はないのだ。
    「別に変なもの食ったりしてないよな?」
    「してねェよ。あといい加減にしろ」
     言われて手を止める。そんなに撫でられるのが嫌だっただろうかと床に座る一方通行の顔を覗き込み――ボッと燃えるほど顔が熱くなる。
     慣れない感覚に対してか、はたまた撫でくり回されることの恥ずかしさからか。一方通行の頬は真っ赤に染まっていた。
    「いや、あの……えーと」
     瞬間嫌な予感がして咄嗟に言い訳を考えようとした上条の口元に枕が押し付けられる。インデックスや御坂へ同様のことをしている己の口が恨めしい。普段の癖というのはこういうところでも嫌というほど如何なく発揮されるのだから。
    「…………」
    「…………」
     沈黙。
     口に枕を押し付けられて何も言えない上条はともかく、一方通行もひと言も発さない。……が、頬の赤みが一向に引かないのだろうということは容易に察せれた。
     今日はまだしばらくこのままだろうか。などと考えながら、上条は一方通行の頭に手を伸ばし、数度撫でてやった。

     一方通行が上条に苦言を呈するまで、あと数秒。
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