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    asagao_yuu

    @asagao_yuu

    甘めの赤安小説を書いています。
    サークル名:朝顔
    執筆者:ゆう

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    asagao_yuu

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    「キスしないと出られない部屋」、「五十の質問に答えないと出られない部屋」(230623エアブー開催に合わせ投稿)……と関係が進み、最終的にこの二人になります。「〇〇しないと出られない部屋」の出来事が夢だと思っていた零くんと、現実のこととしてしっかり覚えている赤井さんが、ようやく、何の拘りもなく結ばれます。
    若干の映画ネタ(黒鉄)が含まれます。念のため、鑑賞前の方はご注意ください。

    あなたの姿「赤井秀一に変装したい?」
    「はい。お願いします」
    「なぜ私に頼むのかしら」
    「あなたは変装の名手でしょう。教えを請うには適任かと思いまして」
    「ふうん?じゃあもう一つ聞くわよ。なぜそこまでして、あの男を探すの?なぜ、生きていると思うの?」
    「それ、二つじゃないですか」
    「同じことよ。よく考えて。その答えによっては、手伝ってあげてもいいわ」
     なぜ。なぜか。僕がライ……いや、赤井秀一を探すわけとは。生きている、と信じて疑わないのは。
    「……会いたいから?」
    「あら、正直なのね」
    「えっ、わ、わわっ、今僕声に出してましたか!?」
    「ええ。『会いたくて仕方ない』って」
    「そうは言ってませんっ」
     からかうような顔をしているのかと思ったら、そうじゃなかった。ベルモットの表情は、僕を気づかっていた。何で?まあいい、手伝ってくれることになったのだから。
     赤井の周囲の人間に変装した姿を見せ、動揺させる。口走った言葉を組み立てて、トリックを推理する。それがまだ終わらないうちに、ベルツリー急行で赤井らしい姿を見たり、沖矢昴の正体を探っていたら赤井が観覧車の上に現れたり。
     お前、死んでるんだよな?行動が無茶苦茶じゃないか?ライはもっとこう、慎重に行動していたと思うんだけどな。赤井秀一とは一体。どうも、性格がつかめない。僕をかまいたがっているらしいのは、分かるけど。

    「最近は、変装しないのね。諦めがついたのかしら」
     車の中でふいに聞いてきたベルモットは、まるで僕に『早く諦めて楽になりなさい』と言っているようだった。
    「そういうわけではないんですが、ラムから指令が来ていましてね。そちらを優先させないといけないもので」
     工藤新一を探れ、という指令の内容は、ベルモットには伝えていない。京都で殺人事件を解決したというあの高校生探偵は、ジンに殺されたという噂がある。彼の家に、シェリーを伴い、組織の調査が入ったこともあるらしい。ならば、なぜ生きている?
     その答えを持っていそうなのが、あの少年――コナン君だ。IoTテロの時は、彼の推理力と行動力、それに阿笠博士の発明に救われた。コナン君は、あの頃からすでにもう、僕に対してその高い能力を隠さなくなっていた。どう考えても、ただの小学生ではない。だからこそ、工藤新一との繋がりに疑念はあっても、そのことをラムに伝えるつもりはなかった。ましてこの人が知ったら……。
    「何でもいいけど、引き続き、私との約束は守ってちょうだいよ」
    「ええ。蘭さんとコナン君を危険に巻きこむような真似はしません」

     と言いつつ、僕は蘭さんの鍵を拝借して合鍵を作り、工藤邸に侵入した。ごめんね。
     それにしても、予想外の展開だ。赤井が待ちかまえているのは想定内として、工藤夫妻が帰国していたとは。いや、それはまだいい。ここは彼らの家なんだから。だけど何でそんなになごやかなんですか。
    「あなたがバーボンね。初めまして、かしら?」
     いたずらっぽく笑った有希子夫人は、目の奥では笑っていなかった。怖い女性だ。……そして、かわいい。はーっ、やっぱりいいなあ。
     彼らと僕を引き合わせ、その立ち会いの下で話し合いをしたいということか。うん、いいよ、赤井。あなたがそのつもりなら。あなたは知らないだろうけど、僕には、歩み寄る心の準備ができているんだ。でもその前に、少し有希子さんと話させて。大事なことだから。
    「難しい質問ですね。僕は親友とそろって、あなたのファンでしたから」
    『親友』のところで、赤井が苦しそうに顔を歪めた。そんな顔、しないで。
    「その親友は数年前に亡くなりましたが、僕の中では生きています。彼を死の間際に助けようとしてくれた人の中でも、笑顔で生きていてほしいと願っています」
     赤井がハッと顔を上げた。そうだよ、赤井。僕たちは最後までヒロと一緒にいたんだから、あいつの一番いい顔を覚えていてやらないと。そうだろう?
     僕はまっすぐに赤井を見て、彼の表情が穏やかなものに変わるのを待ち、それから有希子さん(こんな風に呼べるなんて!)に向き直った。
    「あらためまして、僕がバーボンです。本名は降谷零ですが、任務では安室透の名を使っています」
    「じゃあ、どこかで見かけたら、透ちゃんって声かけてもいい?」
    「……え、ええ。ぜひ」
    「ふふっ。聞いていたとおり、本当に素敵ね。キラキラしてるわ」
    「キラキラ……ですか」
    「ええ。あなたのことをいつもほめちぎっている人を知ってるの。かわいい、とも言っていたわね」
     オホン、と赤井が咳払いをする。なつかしい、ライの咳払い……いや、今は赤井だけど。それさえもギュッと心を絞られるようで、僕は赤井を見たまま口をつぐんでしまった。かわいい、かわいいって……何度か言われたことがある。キスした時とか、もっと先までいった時とかに。あれは夢だと思っていたけど、そうじゃなかった……?
     ぶわっと感情がこみ上げて、受け止めきれず、体がクラッと揺れた。
    「安室くんっ」
     赤井の腕だ。赤井が、支えてくれている。っていうか、抱きしめられてる。きつくじゃないけど。衝撃を受けないようにそろそろと身をかがめて、ゆっくりとソファーに座らせてくれる。……いやいやいや、これ、見ようによっては押し倒されてる体勢だよな?藤峰有希子の前で!
    「あ、赤井、大丈夫ですからっ」
    「……心配なんだ」
    「え……」
    「君のことが、いつでも。どうしようもなく」
     体を離さず、頭の後ろと背中を、ポンポンと優しく、繰り返し叩いてくれる。こうしてもらうと、僕はたいていの場合、落ち着いておとなしくなった。
    「うん……」
     ほら、今も。心配って何だよ。お前だって無茶ばかりするじゃないか。心配したのはこっちだ。
    「……変装」
    「うん?」
    「工藤先生のあの服装は、そういうことなんでしょう?あの日ここにいた沖矢昴は自分だと」
    「……ああ」
    「でも沖矢昴は、本当はそうじゃない」
    「……うん」
    「今日のところは、それが分かればいいです。何かもう、いっぱいいっぱいで」
    「だろうな」
    「誰のせいだとっ……」
     バッと顔を上げて、にらみつけてやろうとしたけど、駄目だった。赤井の顔が、僕にキスする時の顔になっていたから。おい、まさかここでする気じゃないだろうなっ!!
     チュッ
     ……した。しやがった。おでこだけど!は、恥ずかしい……。
    「すみません、工藤先生、有希子さん。彼とゆっくり話すのは実に久しぶりなもので」
     そう言いながら僕を抱き起こして、きちんと座らせて、髪を整えて、ついでに服のしわも伸ばしてくれて、肩を抱いてくるの、やめてもらえませんか。
    「いやいや、かまわないよ。じっくり話し合ってもらった方がいいからねえ」
    「そうよ、ゆっくりしていってね」
     タイミングを見計らって紅茶を淹れてくださって、まったく動じない様子の夫妻は、さすがだ。赤井を置いてやっているだけのことはある。……そうか。工藤先生と有希子さん(!)は、赤井と好きな時に会えるんだな。一緒に暮らしてるんだもんな。……いいなあ。
     香りのいい紅茶にほっと息をつきながら、夫妻と話している赤井の横顔をぽーっと眺める。
    「……で、どうだろうか、安室くん」
    「……はいっ?」
    「この提案を、受け入れてもらえるだろうか」
     提案って何だ!?僕としたことが、全然聞いてなかった……。
    「え、あ、持ち帰って検討しますっ」
    「ぜひ頼むよ。よい返事を待っている」
     赤井、嬉しそうだな。提案とは一体。中身を知らないからいつになるかも分からない返事を、そんなに楽しそうに待ってくれるなんて。うぅ、あとでこっそり、何の話だったのか教えてもらおう。でもそしたら、「何だ、聞いていなかったのか。さては俺のことを考えていたのかな」って言われるに決まってる。うぅぅ……今日は聞かないで帰ろう。

     帰り際、玄関でも少し話した。
    「あなたが藤峰有希子を味方につけるとはね」
    「君がベルモットに依頼することは予想できた。対抗できるのは有希子さんぐらいだろう。俺は怪盗キッドとは面識がなかったしな」
     夫妻は、僕たちを二人にしてくれている。僕はこそっと耳打ちした。
    「コナン君のこと、どう思います?」
    「遠縁らしいな。この家の二人目の子供という説もある」
    「信じるんですか?あの推理力はどう考えても」
    「無論、疑ってはいるさ。ほぼ確信してもいる」
    「東の名探偵……ですかね」
    「おそらく」
     じゃあまた、とドアを開けようとする僕を、赤井は見送ってくれる。彼の今の姿で、外に出ることはできない(出てたけど)。これでまたしばらく、お別れなんだ。次はいつ会える?沖矢さんじゃなく、赤井と。
     ドアに足を向ける。振り向いたら抱き着いてしまいそうな気がするから、そのままドアを開け、失礼だと分かっているけど、後ろ手に閉めた。

     ――赤井って、ああいう人なんだな。
     キュラソーの事件で会ったけど、あの時は暗かったし、落ち着いて話をしたわけじゃないから、感覚はライとの任務に近かった。今日は、夫妻に対して敬語の赤井を見て、すごく新鮮だった。僕には、いつも丁寧にしてくれるもんな。それは別に、侮ってるというわけじゃなかったんだな。たぶん、あったかくて、優しい人なんだ。
     急に、肩に触る夜風が冷たく感じられて、家路を急いだ。

     その後、ユーロポール、パシフィック・ブイと厄介な事件が続き、その中で僕らは「ライ」「バーボン」と呼び合った。僕は彼に託す気持ちが確かにあったし、赤井は僕を甘やかす時の調子を隠しきれていなかった。コナン君が聞いていたのに。
     何かもう、恥ずかしくて、照れ臭くて、どんな言葉をぶつけていいのか分からなくて、電話を切る前に暗号を呟いた。
    『えっ?』
     コナンくんは、何だ今の?と不思議がっている。
    『了解』
     機嫌のよさそうな赤井の声を耳に焼きつけて、僕は電話を切った。ごめん、コナン君。ここからは大人の時間だ。
              ♡♡♡
    「ん……」
    赤井の腕の中で、まどろんでいたようだ。
    「零?大丈夫か?」
    「ん……僕はいつだって……だいじょうぶ」
     くすって笑って、髪をなでてくれる。気持ちいい。
    「それはわかっているが、久しぶりだからな。辛くないか?」
    「うん」
     あなたが、優しくしてくれたからね……。んー、まだ眠いや。風見との張りこみが終わって、コナン君の無事を確かめて、事後処理のために今出せる範囲の情報を公安に渡して……赤井に暗号で伝えた時間には、何とか間に合った。彼が組織にいた頃、よく使っていた暗号だ。もちろん当時は、こういうことのために使っていたわけじゃないけど、今回は最初からこうなるつもりだった。
     ああ、幸せだなあ。今まで、夢なのかどうかはっきりしなかった、あんなことやこんなことは、どれも現実だったんだ。夢じゃなくて、よかった。あかい。これからも、あなたの腕の中にいてもいい?
    「もちろんだよ、零」
     へ?もしかして今、声に出てたのか?
    「かわいいな。半分眠っているようだが」
     かわいい。ふふ、かわいいだって。そうだ、工藤邸であの時、何て言ってたんだろう。
    「あかいー、聞きたいんですけど」
    「何だ?」
    「ていあん、ってなに?」
     駄目だ、舌が回ってない。
    「……ん?提案……君。ははっ、何だ、そういうことか」
     布団の中で、ギュッと抱きしめられる。ん、あったかいや……。
    「もう君の答えはもらったようなものだが、朝になってからでいいよ」
    「あさ……やだな」
    「なぜだ」
    「だって……あかい、またおきやさんになっちゃう」
    「沖矢は嫌いか?」
     嫌いなんかじゃないよ。沖矢さんだって好きだよ。それでも赤井が一番いいんだ。赤井の声で名前を呼んでほしいし、赤井の顔で見ていてほしい。だけど僕もまだ、バーボンでいないといけないし、お互い様なのかなあ。
     あ、もうほんとに駄目。落ちる。
     お願いだからもう少し、赤井のままでいて。

    「俺はどんな姿をしていても、君のものだよ」

     その言葉も、夢じゃないといいな。

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    若干の映画ネタ(黒鉄)が含まれます。念のため、鑑賞前の方はご注意ください。
    あなたの姿「赤井秀一に変装したい?」
    「はい。お願いします」
    「なぜ私に頼むのかしら」
    「あなたは変装の名手でしょう。教えを請うには適任かと思いまして」
    「ふうん?じゃあもう一つ聞くわよ。なぜそこまでして、あの男を探すの?なぜ、生きていると思うの?」
    「それ、二つじゃないですか」
    「同じことよ。よく考えて。その答えによっては、手伝ってあげてもいいわ」
     なぜ。なぜか。僕がライ……いや、赤井秀一を探すわけとは。生きている、と信じて疑わないのは。
    「……会いたいから?」
    「あら、正直なのね」
    「えっ、わ、わわっ、今僕声に出してましたか!?」
    「ええ。『会いたくて仕方ない』って」
    「そうは言ってませんっ」
     からかうような顔をしているのかと思ったら、そうじゃなかった。ベルモットの表情は、僕を気づかっていた。何で?まあいい、手伝ってくれることになったのだから。
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    asagao_yuu

    DONE3回ずつキスを贈らないと出られない部屋に閉じ込められた、ライとバーボン。ライへの想いを自覚したバーボンは、それなら出られなくていい、と思ってしまう。

    エアブー230528で展示していた小説です。これだけでお読みいただけますが、沖安編(最後まではしない)、赤安編(最後までする)も、イベントに合わせ順次書く予定です。最終的に、夢じゃなかったんだ!と零くんが喜んで、ハッピーエンドとなります。
    キスしないと出られない部屋☆ここは、キスしないと出られない部屋です。
    ☆次の条件を満たした場合のみ、十二時間後に扉が開きます。
    ・唇へのキスであること。
    ・合意の有無は問わないが互いに三回ずつ行うこと。
    ・眠っている間のキスはカウントしない。
    ・人工呼吸はカウントしない。
    ・間接キスはカウントしない。
    ・舌を入れるかどうかは自由。

     趣味のいい部屋に、それをぶち壊すデカデカとした貼り紙。それがこの内容だった。
    「ホー。念の入ったことだな」
    「感心してる場合ですか……」
     確かにこの部屋には、扉がなく、窓もない。
     僕はその日の組織の任務を終えて、自室のベッドで眠っていたはずだが、きちんと服を着ている。隣には、時々同じアパートで暮らすこともあるが、最近は別の任務についていて、顔を見ていなかった長髪の男。僕より少しばかり背が高く、少しばかり経験値が高く、大して年が変わらないだろうに大人の余裕みたいなものを醸し出している、いけすかない奴。
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