友達友達なんて要らない
周りの人間が全て敵だったハツはずっとそうおもってた
「すみません、友達だと思ってたんですけど...そうですよね...」
南明がそう言った時、ハツはひどく困惑した。
きょうも南明には友達(であろう人)が沢山いてハツは
(なんだお友達いるじゃないですか。ボクは要らないじゃないですか……)
と少し傷ついた心に気づかないフリをしてその場で任務の時間まで待機する
今日はハクとは別々の任務だから少し不安なだけ。と心に仕舞う。
絵本の世界と現実は違うから。
裏切られて傷つくのが怖いから。
こんな事考えちゃだめだ笑顔でいなきゃ。
そう思ってるハツの顔に笑顔は無く、あからさまな負の感情が湧いていた。
時計をみると丁度いい時間だったので立ち上がろうとすると急に周りの音がこもり、ふらついてガタンと大きな音を立てて転んでしまう。
立ち上がろうと机にてをかけるも力がでない。
「またかよ...」
ハツの副作用で、命令が足りないと体調不良をおこすものだった。一時期これで救護室に隔離されたことがあるが、限界まで隠す癖が治らなかった。
「...ですか大丈夫ですかハツさん」
南明が駆けつけてきたのにも気づけなかった
「だ。大丈夫ですから、気にしないでくださ...」
ハツの目の前が真っ暗になる
次に目を覚ましたのは見たことがある天井で
任務のことを思い出し、バッと起き上がる
「わっ急に起き上がったらダメですよ」
「でも任務が……南明さん……どうして……」
「ハツさんの任務はほかの方に代わって貰いました。ハクさんにも任務帰りに迎えに来てもらうように連絡しました。それよりもハツさん大丈夫ですか頭を少し打ったみたいで、湿布だけ貼って頂いたんですが……」
"使えない 迷惑をかけた" 消えろ
ありがとうございますだろ そう言えばいいだけだろうとハツの頭がごちゃごちゃになった
「あ……あ……」
言葉と笑顔が出せない代わりに何故か涙がハツからあふれだす
「大丈夫ですかまだどこか具合が……」
「ごめんなさい……迷惑をかけました……助けてくれてありがとうございます」
涙をこすって作った笑顔は笑顔と呼ぶには程遠い、酷いものだった。
「もう大丈夫ですのでっ....」
南明に抱きしめられる
「オレが悲しい時篠丸くんはこうしてくれました。」
「ハツさんは違うかもしれませんがオレにとってハツさんは友達ですそうなりたいですその....今日だって迷惑なんかじゃなかったし友達として当たり前で」
「友達……」
「少しは……頼ってもいいんですよ敵なんかじゃありません」
南明の言葉で溜まってきた物が溢れ出るようにまたハツの目から涙がでる
「ごめんなさいっ…ごめんなさい…」
「大丈夫です。大丈夫ですから」
ハツの頭を子供をあやすようにぽんぽんとする
これが人と関わってきた人間との差だ。
南明がもし倒れたらハツは同じ事をしてあげれた自信がない。
「ダメだな…ボク…」
「ダメじゃないですいっつも頑張って笑顔で……元気ハツラツだってみんな言ってます。みんなハツさんから元気貰ってるんですよ…けど。そうじゃないハツさんもハツさんです」
「そんな事。初めて言われました」
「オレもこんなハツさん初めてでびっくりですよ」
南明が苦笑いする
「そうだ。リンゴたべます」
ハクに出会った頃以来、団に来てからは初めて自分の素を見せてしまったことに気づき急に恥ずかしくなって無言で頷く
「そういえばハツさんって普通に喋れたんですね」
「うん…最初はホントに喋れなかったけどハクさんと話してるうちに覚えました。でも喋れない方が愛着が湧く……とおもって」
「ハツさんって案外ずる賢い...ですね」
「からかってます」
「感心してるんです。オレには無理なので」
そんなことを言っているうちにりんごがむきおわる
「ほら見てくださいうさぎさんのリンゴです」
「そんくらいボクにもできます」
「素直じゃないですねほら、お口開けてください」
「自分で食べれる。……あと……ハツとか……ハツくん……でいいよ」
南明からリンゴを奪い取って食べながら言う
「そっそれって」
「友達……なってよ」
「良いんですか」
「でも今日のボクのこと誰にも言わないで……」
「え...えへへ……嬉しい」
顔を赤らめヘラヘラと笑う南明
「そんなに嬉しいなら友達になれって命令すればいいのに」
「も〜それじゃあだめなんですよ...急に友達で秘密の共有で……ワクワクしますね」
純粋な笑顔の南明に釣られて笑ってしまう
「ははっ…じゃあさ南明くん、ボクにハクさんが迎えに来るまで寝てろって命令して。」
「あっそうですよね、副作用で体調崩してるんだから……」
「うん。疲れた」
「それじゃあ友達命令です『ハクさんが迎えにくるまで寝ててください』」
「うん……ありがとう、おやすみ……」
そのまま寝てしまったハツをみて本当に命令が効くことにすこしおどろく
「本当だったんだ...」
でもそれより友達になれたことのほうが嬉しいようで
「ハツくん...ハツくんと友達...やった...」
と南明は嬉しさ溢れて上機嫌で救護室を出ていった
夜
「起きてくださーい。ハツさーん。大丈夫ですか」
声の主はハクだった。
声に反応して起きる
「ハクサン」
「大丈夫ですか目が少し腫れてますよ」
「ンー大丈夫デスもう元気デス」
「ふふ、じゃあ帰りますか」
「ハイ」
差し出された手を掴んでハツが立ち上がる
まだちょっとフラついているがそれに気づいたハクが
「おんぶしますか」
と聞いてくる。甘えたい気分だったらしく
「ハイ」
と答える
帰り道 思い出したようにハツが口をひらく
「そういえば、南明サンとオトモダチになりましたよ〜まだ慣れるまで時間かかりマスが、オトモダチは嬉しかったデス……」
「それは大きな進歩ですねぇ」
「うさぎのリンゴ作ってもらいまシタ♪ボクの方が上手でしたガ」
「じゃあ今度俺にも作ってください♪」
「ハイ」
どんどん成長していくハツに嬉しさを感じるハクだった