これはデートではない、多分「どうした、アニエス?難しい顔をして」
「あ、ヴァンさん」
キッチンでお湯を沸かし、来客用のカップを見ながら難しい顔をするアニエスに、声をかけないなどという選択肢はなかった。
「なんか悩みでもあるのか?」
「いえ、事務所の人も増えましたし、来客用だけでは足りないのと、なんだか味気ないと言いますか」
「あー、なるほどな」
確かにいつまでも同じカップを使い回しているのは問題かもしれない。ヴァンも気にせず使っているとはいえ、味気ないと言われればそうだろう。
「ただの私の我儘というかなんでもないんです。気にしないでください、ヴァンさん」
「買いに行くか、アニエス」
「え」
「ん、嫌か?」
「いえ行きたいです!行きましょう!!」
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