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    aomi__2

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    いつもの幼少期捏造
    一瞬支部に載せていたものを持ってきた
    ある方への憧れが強く出すぎて恥ずかしかったからぽいぴく行き

    じわりと汗にべたつく肌を触りながら、つまらないとでもいうように視線を外に投げた。また怒られるかなあ、と予測はできるのに、うだるような暑さのおかげで予測を回避するためのアクションを起こす気力はしぼんでいく。低学年の生徒たちがこの暑さのおかげで帰路についているのを見て、僕は一人で溜息を吐いた。
    お昼に食べたバニラアイスのかけらがまだ残っているような気がして舌で口内を探してみるけれど、どこにもなかった。バニラアイスのかけらがあれば、カイザーのきれいな髪をさらっていく風を思い出せそうだったのに。
     乾燥しているおかげで日陰の方は心地が良くて、二人で肩を並べてアイスを食べるのは好きだった。太陽がまぶしくて足元ばかりを見つめてしまって頭が痛くなるから、夏は嫌いだけれど。
    配られたプリントの端っこに、板書をするふりをしてカイザーの横顔を描いた。みんなにへたくそだって言われるけれど、カイザーは一番ひどい。僕の絵を見て、涙が出るほど笑うんだから。みんなが気を使って僕をなぐさめてくれるくらい笑うけれど、カイザーだって絵はへたくそだ。
     今日のお昼にも地面に絵をかいて遊んだけど、僕もカイザーもお互いが何を描いているのかまったく当てられなかった。カイザーの描いた鳥なんて口がふたつあるし、アホ毛がいっぱいだし、かわいくなかった。でもカイザーが満足そうに僕に見せてくれるから、気を遣って「かわいいね」って言ったのに、僕が描いた犬を見て、またひどいくらい笑うんだ。
     雲が白くて、風が乾いていて、バニラアイスが充満した口を開けているとすぐに乾いてしまう。太陽は元気だし、水も生ぬるいし、頭は痛い。でも、変なところで面倒見のいいカイザーが、僕の手に垂れたバニラアイスを舐めて取ってくれる。そんなお昼が好き。眩しそうに顔をしかめていてもきれいなカイザーの横顔が好き。
     視線を戻して、みんなの音に合わせて教科書をめくる。もうそんなところまでいったんだ、と思ったのは僕だけの秘密。怒られるから。
     (あー、また。カイザー、どうしてこういうのだけうまいんだろう)
    相変わらず鳥には口が二つあるし、横を向いているのか前を向いているのかわからない。バレないようにページをパラパラとめくって、カイザーに教科書を貸したときに残されたんだろうパラパラ漫画を眺めていく。
     バラをくわえた鳥が空を飛んで、ドイツから世界へ羽ばたいていく。いろんな人が鳥のくわえたバラを欲しがって手を伸ばす。それを避けながら、鳥は飛び続けている。鳥が前を向く。ちゃんと前を向いていた、じょうずだった。
     「あ」
     声を出してから慌てて口をふさぐ。幸い先生は話に夢中で、僕の小さな声になんてちっとも気が付いていないようだった。僕は机の上に転がっていたペンの中から青色と黄色を拾って、慎重に鳥に色を足していく。
     青と黄色で、まるでカイザーみたい。そう思いたいのは僕だけで、多分この鳥の色なんて決まってない。バラの色も、もちろん青色。最後のページをめくると、鳥が僕にバラを差し出してくる。あんなにいろんな人が欲しがっても逃げ回っていたのに、僕にはくれるらしい。
     カイザーって、本当は優しい。みんな知らないだけ。高慢でわがままなカイザーしか知らないだけで、本当は優しいし、甘いし、かわいい。そんなこと、僕だけが知っていればいいけれど。
     ペンを寝かせて黒色のボールペンを取る。くるくると指の間で回して、バラの茎にプレートを提げる。だいすき、と付け加えて、にっこり微笑んで指先で遊んでみる。怒られたらカイザーのせい。今度隣の人が教科書見せてって言ってきても、この教科だけは無視しよう。多分、カイザーにも怒られるけど。
     夏は嫌い。バニラアイスは好き。初夏が嫌い、じりじりと圧迫されるようで居心地が悪いから。でも、バラがきれいなガーデンの初夏は好き。乾いた風が嫌い、乾燥して目が痛いから。風になびくカイザーの髪は好き。カイザーが好き。夏のカイザーも好き。
     あと何回、一緒に夏を迎えられるかな。大きくなったら、一緒にバニラアイスを食べながら絵を描いてくれたりしなくなるのかな。教科書の端っこのラブレターのことなんてきっと忘れてしまうし、僕たちを置いて帰っていく下級生の声なんか、明日には思い出せない。
     ねえカイザー。鳥の背中にこっそりバラを一本隠しておいて、もう一本を僕にくれちゃって。どういう意味なの。
     知りたいけれど、明日もカイザーの隣にいたいから、僕は聞かない。来年の夏には、チョコミント味のアイスが入荷してるといいな。
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