似たもの同士の話 レイブンクローのヴィヴィアン・ラヴクラフトと、スリザリンのエチカ・ロテュス。彼らのことを語る人は二人が似ていると話す。どちらも物腰穏やかで誰にでも笑顔を絶やさず、そのうえ素行もいい。それに加えて容姿端麗ときた。
もはや聞きなれた褒め言葉だけれど、エチカは笑顔でお礼を言う。本当は有象無象からの賛辞なんてちっとも嬉しくないし興味もないけれど、褒められていると知るとフィグ先生が喜ぶので大人しく受け取ることにしていた。
それにしても、とエチカは例のレイヴンクローの彼を思い浮かべる。彼のことを笑顔が素敵だと言っていた生徒は、一体彼の何をみているんだろうか。どう見てもあれはつくりものだと思う。というか、エチカは自分と同じようなにおいを彼から感じていた。常に貼り付けたような笑みを浮かべて、その下で何を考えているのかがわからない、そんな顔。
そこまで考えて見事に自分に返ってきた言葉にエチカは笑みを浮かべた。自分の胡散臭さについては自覚をしているので、別に誰かに言われたとしても何も思わないのだけれど。
でも、とエチカはさらに口角をあげる。例の水色の瞳が細められるのを想像して、彼に言われるのはちょっと腹が立つかもしれないと思った。
「やあエチカ」
「ああ、ごきげんようレイブンクロー」
「ふふ、いやだな。僕の名前、忘れてしまったのかい」
そう言って笑みを浮かべた彼は、例のヴィヴィアン・ラヴクラフトだ。大広間に行く途中にたまたま出会った彼は、愉快そうな笑みを浮かべながら左手を顎に当てて目を細める。
これのどこが素敵な微笑みなんだろうか。エチカはそう思いながら笑みを返す。
「さあね、どうだったかな」
どう見たって、こちらを品定めしている笑みだというのに。
「まあいいや。ねえ君、もう課題は終わったのかな」
「終わったよ。ああでも、『フィールドワーク』と『掃除』はまだだったかな」
「ふうん。……僕も行こうかな」
「構わないけど、夜までかかるかもしれないよ」
「いいよ。丁度試したいこともあったんだ」
笑みを浮かべたまま頷くヴィヴィアンに、エチカも頷いた。まあ、『フィールドワーク』と『掃除』は一人でやるよりも二人の方が効率がいいからね。そう思いながらローブの下で杖を握り、古代魔術の銀色の揺らめきで彼に集合場所と時間を伝える。それを見た彼は小さく頷いて、また少し違う笑みを浮かべた。
「じゃあまたねエチカ」
彼の言葉にひらりと手を振って背を向ける。その背中にしばらく彼の視線が突き刺さっている気がして、なんだか少しだけ面白かった。
僕たちの『フィールドワーク』と『掃除』、いわゆる『密猟者での魔法の試し打ち』は今日の昼過ぎに決まった。