そうあれかしとのぞまれたから(仮題)熟れきった果実のような、ひどく口に残る甘さが君のすべてを表しているように思えた。
ずっと、ずっと、それこそ生まれたその時から、飢餓を抱えた捕食者だった。渇いて、渇いて、渇いて。求めて、求め続けて。でもその衝動は赦されるものではなかったから、ぎちぎちと鎖を幾重にも巻き付けてないことにしなくてはいけなくて。その鎖を断ち切らんとする君は、自分の平穏を脅かすとてもおそろしいもので、それでいて眩しい希望のようなものでもあった。
君が遺したやわらかな肉は、とても甘くて、苦しくて。一生これを覚えていかなくてはいけないと言われてるような気がした。きっと、腹の奥に巣食う飢餓を抱えた捕食者は、満たされないまま、しかし求めることのないままにこの先を生きていくのだろう。
まっしろなうすっぺらでやわらかなはらに、耳をあてる。ぐるぐる、ごうごうと響いていた音はとうに止まって、からっぽのつめたい無音をかえす。君がただの器になってしまったことがかなしくって、どこか気持ち悪かった。