おせりか(女体化) 草薙理解は立派な社会人である。仕事は正確、勤務態度は真面目。時に融通が利かないと評される彼女だが、それが高く評価されていた。
そんな彼女でも年度末の忙しさには毎年辟易していた。日々気を張り詰めて職務を全うし、帰宅時間がぐっと遅れる。必然的に食事、入浴、就寝といった生活のあれこれの時間も不規則になっていった。それでも毎朝決まった時間に出勤できるのは依央利の献身のお陰と言っていい。自身も忙しいだろうに、理解が礼を言うたびに依央利は「奴隷だから貢献して当然だよ」と存在しない筈の尻尾を誇らしげに振るのだ。
少し話は変わるが、草薙理解は健康優良である。勿論生まれながらの体質が大きいが、やはり毎日の規律正しく規則正しい生活の賜物と言っていい。その影響は滅多に風邪を引かないという面だけでなく、女性が月に数日どうしても向き合わねばならない現象についても同様だった。少しの貧血を自覚するのは毎度のことだが、痛みや怠さを感じることはこれまでの人生で数えるほどにしかなかった。
しかし今は忙しい時期。不規則な生活とストレスは着実に理解を蝕んでいた。
*
ようやく仕事が一段落つき、忙殺の日々も今日で終わった。ようやく寝巻に着替えた理解がinおふとぅんしたのは日付を跨いだころだった。時計を睨んでも仕方がない。灯りを消した部屋に横たわり、うとうとと考えを巡らせる。
――明日――もう今日か――は金曜日。乗り越えればゆっくりと休める。土曜日は大瀬くんを散歩に誘おうか。最近は近場で済ませてしまっていたから、もう少し遠くまで。
二人の仲は雪山の件以降全く進展していない。あれ以来頬にキスをすることさえなく、やはりぎこちなく手を繋ぐのでいっぱいいっぱいだ。理解も大瀬も相手の頬以外の箇所に唇を寄せたいと思うことは度々あったものの、二人とも臆病だった。