おしり事情カリムのおしりはぷりっぷりのモッチモチである。デリケートな所なのになぜ知っているのかって?当たり前だろう、俺が育て……コホン、丹精込めて毎日お手入れしているからだ。
おしりだけではない、全身くまなくマッサージをしているからな。
「ジャミル、いつも思うんだけどおしりはマッサージしなくてもいいんじゃないか?」
「は?何を言っているんだ。見えない所こそ気を遣わないといけないんだよ」
「そういうものなのか?でもおしりだぞ?」
「そうと決まっているんだよ。特にお前はいつ何があるか分からないからな。ほら早くパンツを脱げ」
そんな俺ですら分からないことがないように、常に一緒にいるようにしてはいるが念には念を、だろ。よく分からないと言った顔をしてパンツを脱ぎ、うつ伏せになったカリムのおしりは……うん、いい感じにぷりぷりだ。
マッサージオイルを手に馴染ませ、肩から背中と凝った場所に重点を置き解していく。
「あーきもちいー」
「飛行術に錬金術、座学と今日は全てあったからな」
「楽しかったから疲れていないと思っても疲れているんだな」
「そりゃな。こことか」
「いっっった!」
ふくらはぎは第二の心臓とも言われている。凝りまくっていて、よくつらなかったなと思うほどだ。ゆっくり血流をリンパに流すように解していき、足の裏も丁寧にツボを押しながら指も1本ずつ、爪までマッサージをしていく。
「おしりは筋肉の塊だ」
「そうなのか?」
「体の中心にあって上半身と下半身を支えている」
「言われてみればそうだな」
「身長によって大きさが違えば筋肉の付き方も違うだろ?」
「確かに!」
「歳と共に地球の重力に正直になる。つまり」
「垂れる……」
「そうだ。そんなみっともない姿、次期当主としてどうなんだ?だからおしりもマッサージしなきゃいけないんだよ」
まぁそんな決まりはない、たった今俺が決めたんだが。カリムのおしりなんて見るのも触るのも俺だけだ。
手の平で少し温まったマッサージオイルをおしりに充て、入念に揉み込む。今日のオイルも完璧だ。まぁ俺は出来る従者だからな。
「だいぶほぐれてきたな」
「おしりも凝るんだな」
「意外と酷使しているんだよ。寝る時はおしりの休息時間でもある」
そんな事は知らないが。俺の役目はただひとつ。
このツヤッツヤでモッチモチのプリティーでキュートなおしりを保つ事のみ。
「よし、今日もツヤッツヤのモッチモチ、触り心地もバッチリだ。さすが俺」
「ジャミル?なんか言ったか?」
「いや?言っていない、空耳じゃないのか?」
「そっか」
お前は何も知らなくていいんだよ。知らぬが仏と言うだろ。使い方が違う気がしなくもないが。
「そうだ、おしりのここが少し痛いんだ。何かあるのか?」
言われて見てみればプクッと。座ったら痛そうな場所に。おしりと太ももの間にニキビ。マッサージをしている時に気づかなかった。カリムに言われるまで気づかなかったなんて、従者失格だ!!ニキビに対して怒りがフツフツと込み上げてくる。おのれニキビ!駆逐してやるから首を洗って待っていろ!漫画だったら俺の周りにゴゴゴと何かすごいフォントの文字が入るんだろうな。いや今はそれはどうでもいい、ニキビお前だ!
「俺とした事が!!カリムのプリティーでキュートなおしりに!ニキビだと!?お前は誰の許可を得てそこに出来た!!焼き払ってやる!」
「ジ、ジャミル?少し落ち着こうか……」
「うるさい!お前は黙っていろ。俺は今ニキビに決闘を申し込んだんだよ!あれだけ気をつかって手入れをしたおしりに!此処で会ったが百年目、クックック……ニキビよ、さらばだ!」
プチっ
潰すのは良くないと言うが、絞って芯を出し消毒して、保湿もしっかりと。
よし、明日は痕にならないように朝イチでチェックしないとな。
大きすぎず、小さすぎず。キュッとしまったカリムのおしりは今日もイケてる。言ってやらないが、顔もイケてる。そんじょそこらの女よりかわいい。当たり前だが。
「さすが俺だな」
「ジャミル?」
「なんでもない」
程よくついた筋肉とモッチモチの肌とプリップリ加減は、俺が育てた賜物だ。そしてそれは俺以外触ってはいけない。
そんな決まりはないって?あるんだよ。たった今、俺が決めた。二回目だぞ、しっかり覚えておけ。テストに出るからな?そんなテストはない。もし俺以外の者が触ったらどうなるかって?宇宙の果てまでドッカーーーンだ。よく覚えておけ。
『バイパー家従者の心得第10-①条。仕えている主人の体は隅々まで従者が手入れせよ。
10-②条。従者以外の何者にも触れさせてはならない。』
ないが。たった今出来た心得だが文句はあるか?俺によるカリムの為の俺の法律だ。
これはバイパー家に伝えていかねばならない。誰の為かはその時仕えたアジーム家の名前が入る。
「スラックスの上からでも分かるぞ。今日もいいおしりだ」
「そ、そうか?なんかよく分からないけど、いいおしりか!でもジャミル、今は触らなくてもいいんじゃないか?」
「は?何を言っているんだ」
時間によっておしりの状態は違うんだ。そんな事も知らないのか。
「ほらもっとこう、おしりの穴を締めるんだ。キュッと」
「は、え?キュッと?締める?」
「そうキュッと!いいかカリム、おしりにも少しの緊張は必要だ。でも緊張しすぎるのもよくない」
緊張しすぎると表情が固くなるように、おしりの筋肉も固くなるんだよ。
……いや、知らんけど。
それはお風呂に入っている時だった。
いつも通り風呂でのエステを済ませ、湯船にのんびりつかっていた、ら。
「足りない」
「何が足りないんだ?」
「カリムのおしりが18g足りない……」
「え?なんて!?」
足りない!カリムのおしりが!!18gも足りないではないか!これは一大事だ!従者としてあるまじき事。
「今日何をした」
「え?」
「何をしたと聞いているんだ」
「えーっと、1限は魔法史だろ?2限が錬金術で3限が魔法薬学。昼はジャミルと一緒に食べて、4限と5限は飛行術だったな」
それだー!!見つけたぞ。飛行術はカロリー消費が著しい。しかもそれを2時間。だから減っていても不思議はないが、夜ご飯もしっかり食べていたよな?ってそんなにすぐには付かないか。
「まぁすぐ取り戻せるから大丈夫だ」
「なにがだ?」
「あ、いや、カリムが気にする必要はない。こっちの話だ」
そう、お前が自分のおしりを気にする事はない。これは俺に与えられた使命なんだ。
18g減っているとはいえ水分はいい弾き方をしているし、肌はツヤッツヤだし今日もモッチモチでプリップリであることには変わりがない。
「まぁキュートだからいいだろう」
合格点だ。そうだな、寝る前はいつもより甘いホットミルクにしようか。
たかが18g、されど18g。減ってしまったものは急に増えるわけがないし、無理に増やすとダメな感じですぐ減るものだ。それでは意味がない。
少しずつ増やしていけばいいだけの事。
だからと言って、甘い物ばかりではおしりどころかお腹にもついてしまいそれこそみっともない体型になる。そんな事があったら切腹ものだ。
「まぁそんなだらしのない体型になどしてやらないが」
そう、カリムの体は俺によって全てがコントロールされているんだ。ハッハッハ!
カリムの体の筋肉たちよ、よーく聞け、お前らに全てが掛かっているんだからな。
(なぁ上腕二頭筋、とんでもない人に掴まったな)
(そうだな。お前ら特に大変だよな、大殿筋たち)
(なぜそこまで執着するのか分からんが)
(マッサージは気持ちいいよな、小殿筋)
(生まれた場所がカリム・アルアジームだったばかりに)
(下手な事したら殺されかねない)
(いやジャミル君が切腹する)
(介錯はやはりカリム君?)
(そんな事があったら末代どころかずーっと恨まれるぞ)
「どうだ?戻ったか?」
「そんなすぐに戻るわけないだろう。なに、お前が心配する必要はない」
そう、これは俺とカリムに付いている筋肉たちの問題なのだ。
「今日もプリップリでモッチモチだから大丈夫だ」
「そっか、キュートか」
「そこまで言ってはいない」
あまりにも可愛いからキスをしてやったらびっくりしていた。
「いや、いくら洗ったとはいえおしりにキスってどうなんだ?」
「は?可愛いからしたんだよ。愛おしいって意味がある」
「おしりだぞ?」
「大丈夫だ。カリムのおしりにしかしない」
「なんか、ちゃう」
当たり前だろ、他のやつのケツなんて見たくもないし触りたくもないわ。
毎日マッサージをしていると肌の状態まで分かるようになる。今日は少し乾燥している。つまり、肌がカサカサになりやすい。
「ジャミル、最近寝る前に飲んでるホットミルク、美味いなぁ」
「あぁあれか、ハチミツをいつもより多めに入れているんだ。スパイスの配合も変えている」
「さすがだなぁ」
さすがも何もカリムの為、強いてはカリムのおしりの為なんだ!!
失った18gは今日2g戻ってきた。
1日3食、デザートも俺が作った物を食べていれば、1週間で取り戻せるはずだ。
「今日のマッサージ、長くないか?」
「少し乾燥しているからな、念には念をだよ」
生尻を見るのは俺だけとはいえ、いつ何があるか分からない。もう何回目だよと言ったやつ、そこに正座な。崩すことは許さんからな。
もし晒す事になってみろ、なんだカリムのおしりは?なんて言われたら一生恥ずかしいだろ。
まぁ生尻を晒すようなことにはならないが。ていうか、俺以外の前で生尻を晒すとか、どんな状況だよ。
皆さん『壁尻』なるものをご存知だろうか。
俺は寮生たちから聞いてビックリしたものだ。
壁から下半身だけ出ているらしいのだが、どうしたらそうなるのか分かったら教えてほしい。
そして、この状況……そう、まさに壁尻を目撃している。自寮で。
「あ、副寮長寮長が!」
「これが壁尻ってやつか」
「そうです。噂の壁尻です。寮長はいいお尻ですね……ってそうじゃなくて!納得している場合じゃないですよ」
確かにな。学園内ならまだしも……いやダメだ、学園内は全生徒にカリムのプリけつを見せる事になる。むしろこうなったのがスカラビア寮で良かったのだ。
「ほら見ろ。この状況でスラックスの上からでも分かるプリップリ具合を……」
「きっとモチモチなんでしょうね。いやだからそうじゃなくてですね?」
「あぁモチモチ……いや、モッチモチだな。さすが毎日俺が手入れしているだけあるな」
「モチモチとモッチモチの違いとは。さすがです!って、え!?副寮長、寮長のお尻のお手入れまでしているんですか?」
「当たり前だろ?従者として当然だ」
「当然なんだ?だったら早く助けないと!」
ほらカリム、暴れるんじゃない。大事なおしりに傷がついたらどうするんだ!
僕はスカラビア寮の1年生。出身は熱砂の国。父は調香師で、ありがたい事に寮長の父上である現当主様に贔屓にされている。
僕は別に寮長に気に入られようとは思っていない。だって寮長の隣には副寮長こと従者であるジャミル先輩が常におそばにいらっしゃるから。
しかし何の因果か僕は入学してからジャミル先輩に(たぶん)気に入られている。寮長用のフレグランスの材料を集めるのは得意だし、ここでは僕が調香する。
と、それはどうでもいい。
いずれ父の跡を継ぐべく勉強していて、喉が乾いたからキッチンへ向かう途中だった。
「誰か~誰かいないか〜?」
談話室の方から寮長の声が聞こえて、すぐ行きますと声を掛け談話室に入ったのだけど、そこで見た光景にギョッとした。
「え、一体どうなっているんですか?」
「それがオレにもよく分からないんだ」
たまたま今日はジャミル先輩とは別に帰った。部屋に戻ろうと談話室を通りかかった時、いきなり挟まれた、らしい。
いわゆる壁尻、である。
それはまぁ見事にすっぽり。しかも壁にヒビすら入っていない。どうしたものかと思っていたら、副寮長が帰ってきた。
「あ、副寮長寮長が!」
「これが壁尻ってやつか」
「そうです。いいお尻ですね……ってそうじゃなくて!納得している場合じゃないですよ」
助けないとですよ!それに、ここは元々壁はなかったから誰かが魔法を使っていて失敗したのだろう。たまたま通りかかった寮長が巻き込まれたのだろうか。
「ほら見ろ。この状況でスラックスの上からでも分かる、プリップリ具合を……」
「きっとモチモチなんでしょうね。いやだからそうじゃなくてですね?」
「あぁモチモチ……いや、モッチモチだな。さすが毎日俺が手入れしているだけあるな」
「さすがです!って、え!?副寮長、寮長のお尻のお手入れまでしているんですか?」
「当たり前だろ?従者として当然だ」
「だったら早く助けないと!」
今この人、サラッと凄いこと言ったな?寮長のおしりまで……つまり、寮長は副寮長によって作られていると言っても過言ではない?
「副寮長、怪我も心配ですが早く助けましょう!今は僕しかおしり見ていませんから」
「そうだな」
僕がユニーク魔法を掛けられなかったのは実家のおかげで、副寮長贔屓であることも幸いしていると思う。
寮長が挟まっていた壁は5分後には消えていた。なんだったんだろう。
無事に助けられた寮長は、副寮長におしりのチェックをされていた。
「モッチモチだな、よし」
モチモチではない、モッチモチが重要らしい。
プリップリ具合も大事らしい。
うん、ちょっとよく分からない。
ところでカリムのお尻について、みんなどれくらい知っているんだろう。
モチモチのプリプリ?
丸くて可愛い?
柔らかそう?お
尻枕が気持ち良さそう?
全部正解だ。
ただし最後の発言したやつ、俺の所に来い。
カリムの尻枕は俺のものだが、その思考は好きだ。
風呂上がりにマッサージをして、特別なクリームを塗って。丁寧に。マッサージの仕方は企業秘密だ。
あぁそうだ、ツヤツヤだってことも付け加えておいてくれ。書いたか?よし、次は何の話だ?
カリムに手を出すやつがいたらどうするか、だったか。
燃やす(真顔)。
根こそぎ燃やしてやる。そう、跡形もなくな。灰は宇宙に飛ばしてやる。明日が拝めると思うなよ?
過激だって?いや、優しい方だろ、灰になって宇宙に飛ばされるだけなんだから。
あぁ、お尻の話だったな。
カリムのお尻は今でこそモチモチのプリプリでツヤツヤだが、昔はそうでもなかったんだ。それは酷いもんだった。俺が就任するまでの従者は何をしていたんだって話だよ。お尻だけではない、顔の肌艶もガッサガサだったし、髪には艶もなかった。
そう考えると俺って天才では?
お尻なんて特に見えない部分だからこそ、手を抜いてはならないんだよ。いくら顔が良くても、お尻(の肌)が汚いと幻滅するだろう。
え?誰もそこまで見ないって?
いや見るだろ……すまない、職業病かもしれない。
しかし良く考えてみろ、見えるところだけ手入れをしても、だ。見えない所だからって手を抜いていたらそのうち見える部分に現れてくるんだよ。
デコルテとかな。
服装によってはデコルテが丸見えになる場合もある。デコルテなんて服の下だからって手を抜くと、服を着て慌てて手入れをしても時間に暴かれていく。だからきちんとしなければならない。
まぁお尻なんて余程の事がない限り、俺しか見ないけれどな。
モチモチのツヤツヤのプリプリだ。
テストに出るからな。
そうそう、キュートも付けたら俺の加点がある。
モチモチでツヤッツヤのカリムのお尻を手入れしているのは、俺だ。知っているって?当たり前だ、知らなかったら今まで何をしていたんだって話だよ。
マッサージに使うクリームは気分によって変える。誰のって、俺に決まっているだろ。
カリムの気分ではないのかって?
当たり前だろ?マッサージをしている俺の気分が良くないままマッサージをしてみろ、大変な事になる。
カリムの肌にすぐ出てくる。カサカサになったりニキビが出来たり。特にニキビは誰の許可を得てそこにいる……となる。俺の許可なしにカリムの肌にニキビとか許さないし、許してやらない。だからと言って俺の肌にも許さない。
前にも言ったが見えない所ほど入念に、丁寧に。
おかげで今日もカリムのおしりはモチモチでツヤッツヤのプリップリでベリーキュートだ。
俺って天才だな、カリム限定で。