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    torimune2_9_

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    torimune2_9_

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    付き合ったばかりの炎ホ。
    初めてのセッがハムの用意した相手との事務的な行為だったせいで大して気持ちいいものでもないと思っていたホが炎と付き合ったことでそんな自分じゃ振られてしまうのでは!?と迷走して逃げる話。そして捕まえる炎

    ――最近、ホークスの様子がおかしい。

    エンデヴァーがホークスに告白したのは、街の復興もある程度落ち着き、一時期はまさに地獄絵図のように渦巻いていたヒーローへのヘイトを聞かなくなった頃のことだ。
    最初は不遜な子供だと思った。成人しているとはいえ息子と変わらない歳ということもあり、格好つけて斜に構えたような、へらへらとした態度が気に食わなかった。それに関してはホークス自身意図した振舞いではあっただろうが、当時はホークスの表面的な部分だけを受け取って、直接お前のような男は嫌いだとまで言った。
    その認識が変わったのはいつだったか。福岡でのチームアップを経て、よくわからない男だという認識こそ深まったが、それでもヒーローとしての実力は十二分にあると身をもって知った。その時点では、まだただの同僚としか思っていなかったはずなのに。
    転機は、やはりトップスリーでのチームアップだろうか。暴かれた過去の罪。ハリボテのナンバーワン。一人では立っていられないような、そんなエンデヴァーを、ホークスは当然のようにヒーローとして扱ってくれた。立ち止まってはいられないと、自身の身体こそボロボロのくせにこんな自分の背を押してくれた。
    その在り方があまりにも眩しくて。
    その目はどこまでも未来を見据えていて。
    明るい未来のために立ち続けるホークスに、ふと、「平和になったら、この男はどうするのだろうか」と一抹の不安が過った。
    ホークスの語る未来……ヒーローが暇を持て余す社会。そこにホークス自身の居場所はあるのだろうか。自己犠牲と称されてもおかしくはないほどの献身。自分自身に対する執着の薄さ。もし誰かがもういいよと言ってしまったら、そしてホークスがそれに納得してしまったら。この男は、まさに羽根のようにひらひらと手の届かないところにいってしまうんじゃないか。

    大戦が終わり、日常を取り戻そうと駆け回りながらも、一度芽生えた不安は消えることはなかった。

    だから、繋ぎとめたかった。どこへ飛んでもいい。それでも最後には自分の元に帰ってきてほしいと、そんなことを願ってしまった。何にも縛られてほしくないと思う感情だって本物のはずなのに、それと同じだけ、もしかしたらそれ以上に傍に居てほしいと思ってしまった。
    そう思う感情こそが“恋”なのだと、この年で気付かされることになるなんて。
    家族すら壊してしまうようなこの手では触れられないと一度は思いとどまったが、その頃にはもうどうしようもないくらいホークスへ向ける感情は大きくなっていて、到底見て見ぬふりなどできないほどまで膨らんでいた。
    膨らんで膨らんで、それでも飲み込むべきものだと堪えていたのに。こちらの心配など他所に甲斐甲斐しく訪ねてきては屈託なく笑うホークスを見て、溢れた言葉はただ一言「好きだ」の三文字だった。


    「今日はもう遅い。うちに泊まっていくか?」
    「あー……」
    最早恒例となったチームアップを終え、報告のためと事務所に残っていたホークスへと声を掛ける。時刻は夜の十一時。以前なら飛び上がる勢いで即答していただろうに、予想に反して、ホークスは困ったように視線を端へ逸らした。
    (……まただ)
    ここ最近、どうもホークスに避けられているような気がする。人の機敏に鈍い自覚はあるが、それでもこれは気のせいとは思えない。当然本当に用事がある場合もあっただろう。地上に縛られないホークスは、度々遠方にも呼ばれ駆けつけている。だが、誘いを断られたのはこれで三度連続だ。今日は都合が悪い、また今度と言いながら、ホークスからの誘いもない。一度それとなく目良に探りを入れてみたが、公安がホークスを使っている様子もない。
    (……チームアップの様子は変わらんが……いや、それはプロとして当然か)
    付き合う以前から、ホークスの察しの良さに甘えている部分があることは分かっていた。それでもエンデヴァーなりに対等さを示し、互いに忙しいながらも良好な関係を築けているつもりだったが、なにか負担になっていたのだろうか。
    「ホークス」
    「はい?」
    「……俺は何かお前の気に障ることをしたか」
    何を言われても受け止める覚悟で発した言葉は、想像していたよりもずっと弱々しい声色で吐き出された。情けないと自嘲する間もなく、驚いたように目を見開いたホークスがみるみるうちに表情を青くする。
    「ち、違うんです!エンデヴァーさんは何も悪くなくて、その、俺が」
    俺が、と繰り返す声は次第に萎んでいき、ホークスは青い顔のまま項垂れた。呼応するように羽根も力なく垂れ、先端が地面にぺっとりと着いてしまっている。こんな風に分かりやすく動揺を見せるホークスなどそうそう見ない。それほど触れられたくないことだったかと、今になって後悔が襲った。
    「すまん。無理に言わせたい訳じゃないんだ」
    「いえ……貴方が不信感を抱くのも当然の態度でした。すみまんせん。ただ……」
    あーだのうーだのとひとしきり呻いた後、長く長く息を吐く。数秒の沈黙を経て、ホークスは意を決したようにエンデヴァーを見上げた。
    「上手く話せないかもしれないんですけど、いいですか」
    「用事はいいのか」
    「貴方にそんな顔させたまま帰れませんって」
    無理矢理口角を釣り上げたような、自嘲めいた笑みを浮かべホークスはソファに腰かける。隣に座ってもいいかと聞けば、ふわふわと揺れる金糸がこくりと縦に頷いた。ぎしり、とソファが音を立てる。妙な静けさが居心地悪い。肩と肩が今にも触れそうな距離で、エンデヴァーは静かにホークスの言葉を待った。
    「え、っとですね」
    互いに黙り込んだまま数分が経ち、秒針の音だけが嫌に響く。そうしてようやく、ホークスは不安そうに視線を彷徨わせながらゆっくりと口を開いた。
    「俺たちって、所謂恋人関係になったじゃないですか」
    「ああ」
    「……改めて確認したことが無かったので聞きますけど、ぶっちゃけエンデヴァーさん、俺に対する性的欲求ってありますか」
    「な、ッ」
    思ってもみなかった質問にふざけているのかと怒鳴りかけて、咄嗟に口を噤む。ホークスはおちゃらけた口調でもなく、その目は至って真剣なものだ。確かに恋人という関係になってからそう言った話はしてこなかった。意識して避けていた訳ではないが、積極的に話を切り出そうともしなかった。
    だが正直なところ、ホークスに対する性的欲求がないなんてことはない。もっと先へ進みたい、その身体を組み敷きたいという欲求はある。
    もしや、ホークスにはそれが煩わしかったのだろうか。煩わしいとまではいかずとも、そういったものが苦手だったのかもしれない。恋人という関係に落ち着いてから途端に泊まりを避けるようになったのも、そういう理由だとすれば納得がいく。
    好意と性欲は必ずしも直結しないが、一般的にその二つはセットで考えられることの方が多いだろう。エンデヴァーの気持ち答えられないと、そこに申し訳なさを感じさせていたのだとしたら。
    「…………嫌だったか」
    エンデヴァーの言葉に、ホークスはふるふると首を横に振った。ならどうしてそんなことを聞くのか。答えが分からず途方に暮れていると、ホークスもそれに気付いたのだろう。困ったように眉を下げて、視線を端へ逸らした。
    「別に性的接触にトラウマがあるとか、生理的嫌悪があるとか、そういうのじゃないんです」
    こちらを見ないまま、ホークスが呟く。
    「貴方に触れられるのは嬉しい。でも……ソウイウ行為が気持ちいいだとか、好きだとか、そういうのが俺には分からないんです」
    「……分からない?」
    「昔、訓練の一環でプロの方にお相手してもらったことがあるんですよね。スレンダーで、胸が大きくて、モデルみたいな美人のおねーさん。でも駄目でした。意識の問題なのかもしれませんが、こんな感じかぁってただそれだけしか思わなくて、それらしい感想の一つも抱けなかった。裸で抱き合いながら、もし彼女が敵だったら、この場所に敵が現れたらなんてそんな事しか思えなかった。何がいいかなんて、これっぽっちも理解出来なかった」
    ホークスの口にした訓練という言葉とその後に続いた内容に、動揺と怒りが渦になって押し寄せる。公安がホークスを幼少期から囲い育てていたことは聞いている。都合のいいヒーローにするために過酷な訓練を積み重ねていたと。だが、まさかそんなことまでさせていたなんて。
    「あは。安心してください。実際にセックスしたのはその時だけですから」
    そういう問題じゃないと言葉にしたところで、ホークスにはきっとこの怒りも、悲しみも、やるせなさも、欠片程しか伝わらないのだろう。必要なかったからしなかっただけで、もし必要な状況になれば、この男は何の躊躇いもなく身体を差し出す。己への執着の低さは生来の環境によるものかもしれないが、公安は、きっとそれすらも利用したのだ。そういう選択肢があると、ホークスに学ばせた。
    ぢり、と目尻で火花が散る。そんなエンデヴァーに、ホークスは肩をすくめて笑った。
    「セックスがどういうものか知れたのは知れたので、もうそれでいいやって思うことにしてたんです。機能的には問題ないのも確認済みだったので、多分おかしいのは俺の方だし、ンなことして我を忘れたり、色恋に走って下手打つよりはマシだろうって。だって俺には、ヒーローでいること以外必要なかったから」
    でも、と再び視線が下を向く。
    「でも、貴方のことが好きになってしまった。こんな俺を、貴方は好いてくれた」
    ゆるりと睫毛が震え、瞼が閉じる。
    「セックスなんて興味無かったのに、貴方と恋人になれて舞い上がっちゃったんです。普通の恋人らしいことをしてみたくなってしまった。好きな人となら、何か違うかもしれないなんて。安っぽい台詞ですよね。ドラマじゃないんだからそんな上手くいくわけない。そんな風に夢見たって、貴方とセックスしても何も感じないかもしれない。そう思ったら、途端に怖くなった」
    「……ホークス」
    「言いたいことは分かりますよ。勿論それだけが全てじゃないですけど、でもやっぱり大事な要素じゃないですか。性的嗜好の不一致からくるトラブルとかよく聞きますし」
    と、そこまでぺらぺらと言葉を並べ立てていたホークスの口が止まる。視線は合わないまま、組んだ両手に力が入る。白んだ指先が、微かに震えている。
    「……つまらない俺を知られたくなかったんです。あなたに、振られたくなくて」
    それは耳を澄ませていなければ聞き逃してしまいそうなほどに小さな声だった。
    ずっと、ずっとそんなことを考えていたのか。怯えるように力の入った肩を抱き寄せ、小さな頭を胸へと押し付ける。
    「不安だったなら、一人で抱え込むな」
    「だって、こんなこと」
    「言いにくい内容なのは理解出来る。だが……お前に避けられるのは、かなりきつい」
    「…………ご、ごめんなさい」
    すっかりしょげてしまったようで、ずず、と鼻をすする音が聞こえた。こうなると普段の飄々とした様からは程遠い。叱られた子供のような、垣間見える幼さにずくりと胸の奥で熱が疼く。くだらない悩みだとは思わなかった。ホークスがエンデヴァーと恋人という関係になるにあたって、普通というものを気にしているのは分かっていたのに。
    「俺に触れられるのは、嫌じゃないんだな?」
    腕の中で、こくりとホークスが頷く。
    嫌われたくないとぴいぴい小鳥のように鳴くこの青年と同じように、エンデヴァーだってホークスに嫌われたくはない。
    不感症という訳ではないのだから、感情が伴えば恐らく感じ方も変わるはずだ。例えばそう。じっくりと熱を与えて、それが気持ちいいことなのだと認識させてしまえばいい。
    だが、まだ駄目だ。
    「……ならいい」
    怖いというなら踏み出せるまでいくらでも待とう。
    「…………いいんですか。こんな俺で」
    「お前だからいいんだ」
    今更何を言われようと、離れることも、嫌いになることもないのだと。まずはそれをしっかりと教え込まなければ。
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    Replies from the creator

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    eyeaifukamaki

    PROGRESS愛をみつける
    ②と③の間のケイside
    タイトルたまに見つけるになってる
    “みつける”が正解です
    ケイ君も深津さん大好きだけど、さぁきたや、ノアにはまだまだ魅力が及ばない、という感じで書いてます。
    これも誤字脱字確認用
    大好きな人がアメリカに来る。その通訳に俺が任命された。爺ちゃんから頼まれて、断る理由はなかった。ずっと憧れてた人。俺の高校時代にバスケで有名な山王工高のキャプテンだった一つ上の深津一成さん。バスケ好きの爺ちゃんのお陰で、俺も漏れなくバスケが好きだ。うちの爺ちゃんは、NBAの凄いプレーを見るよりは日本の高校生が切磋琢磨して頑張る姿が好きらしい。俺は爺ちゃんの娘である俺の母親とアメリカ人の父親の間にできた子だから、基本的にはアメリカに住んでるけど、爺ちゃんの影響と俺自身バスケをやってる事もあって、日本の高校生のプレーを見るのは好きだった。その中でも唯一、プレーは勿論、見た目もドストライクな人がいた。それが深津さんだ。俺はゲイかというとそうではない。好きな子はずっと女の子だった。深津さんは好きという言葉で表現していいのか分からない。最初から手の届かない人で、雲の上の存在。アイドルとかスーパースターを好きになるのと同じ。ファンや推しみたいな、そういう漠然とした感じの好きだった。会えるなんて思ってなかったし、せいぜい試合を見に行って出待ちして、姿が見れたら超ラッキー。話しかけて手を振ってくれたら大喜び。サインをもらえたら昇天するくらいの存在だ。深津さんを初めて見た時は、プレーじゃなく深津さん自身に惹かれた、目を奪われた、釘付けになった。どの言葉もしっくりくるし、当て嵌まる。それからはもう、虜だ。爺ちゃんもどうやらタイプは同じらしい。高校を卒業しても追いかけて、深津さんが大学に入ってすぐに、卒業したらうちの実業団にと既に声をかけていた。気に入ったら行動が早い。条件もあるが良い選手は早い者勝ちだ。アプローチするのは当然。その甲斐あってか、深津さんは爺ちゃんの会社を選んでくれた。深津さんのプレーを間近で見れるようになった俺は、もっと深津さんに心酔していった。一つ上なのになぜかすごく色気があって、でもどこかほっとけない雰囲気も醸し出していて、それがまた堪らない。深津さんのアメリカ行きの話が出て通訳を任された時は、そんなに長くない人生だけど、生きてきて一番喜んだ瞬間だった。こんな事があるなんて。爺ちゃんがお偉いさんでよかった。爺ちゃんの孫でよかった。俺は深津さんとは面識がない。ただ俺が一方的に心酔してるだけ。だから、深津さんの語尾がピョンというのも爺ちゃんから聞いた。深津さんは高校の時
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