過去ログ16鼓膜を揺らす声があった。
母を求め泣き叫び続ける赤子の声だ。止め処なくその鳴き声は延々と響き続け、息を吸って一息を置くような音までもがルドウイークの耳に届いていた。
鳴き声が果たしてがどこから響くのかを調べようにも、甲高い鳴き声は水の中で反響するかのように出所が掴むことができなかった。
その鳴き声は昼も夜も関係なしに響き続けた。時に頭の芯を揺らすように。脳の表面を逆撫でるように不快に響くその泣き声に耐えきれず、耳を塞いでは髪を掻き毟る。そんな日々が幾夜も続き、泣き声を掻き消す為だけに獣の断末魔を求めた。
狩りの中に身を置く瞬間だけ暫しの沈黙と癒しが訪れた。
そしてふと、輝く白刃を獣の血で染め抜いたある夜に気がついてしまったのだ。
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