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    飛んでるかもしれない魚

    Twitterに載せられない奴とかあげたりするかもしれねえ。

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    全編一気に出せる気がしないので、短いものをちまちまと更新
    文章が疎いのは許してください泣

    白色 水無月が日毎にめくるカレンダーに書かれ始めた梅雨の頃。昨日までの酷い雷雨が嘘のように晴れ渡っており、朝靄が立ち込め、霧の奥には早う朝にならないかと待ち侘びるような淡い色をした空が見えていた。寒くもなく暑くもなく、涼しいこの屋敷の中庭は暇を潰すのにも趣味を楽しむのにもうってつけである。
    珍しく晴れた日だったので、私は紫陽花を見るために彼女を連れ立ってここへ来ていた。地面がぬかるんで靴が……ということは心配しなくても良さそう。綺麗に整えられている。ここの屋敷の従者達は朝早くから起きているのだろう、嵐で落ちた葉は端に寄せられ、道の端に少しだけ泥が残っていた。きっと掃除したんだろう、私が起きるより前に……たまには彼女ら彼らに全く自由な日を作ってあげよう。いつも頑張ってくれているお礼として。
    「全く…べアトッ…ンン、奥様も早い時間から起きないでくださいよ、何も準備が終わってなかったのですから……」
    「ベアトリスでいいわよ、別に格式的な場じゃ無いんだから、ね?……まぁその、起こしちゃってごめんなさいね、これが終わったら一休みして頂戴。」
    「!やったー、ありがとうございます〜♪」
    今ようやく4時になるくらいだ。確かに…主人の仕度の準備をしてやる立場の彼女らとしては私はとっても迷惑だろう。……休ませたら、お菓子を用意してあげようかしら。
    「あっ、ベアトリス様〜!ほら、紫陽花ですよぉ、白くて小さい…綺麗ですね♪…そういえば紫陽花は土の酸性アルカリ性によって色が変わるのをベアトリス様は……」
    「知っ…いいえ、なんでもないわ。……酸性だと何色になるの?」
    「はぁい♪酸性だと〜……!」
    この前六月入った時に自信満々で話してたじゃない。そう言ってやりたかったが叩き起こした事、きっと疲れている事、色々鑑みて言わないでおくことにした。何より私より楽しそうだったから。
    すると彼女は唐突にこんなことを私に言ってきた。
    「そういえば。ベアトリス様の翼、先っちょの方とか心なしか白くなったように見えません?」
    「……え?」
    白い?横から見ると翼の先も全身も相変わらず黒っぽい色をしている。私には彼女の言うことをすぐに理解できなかった。
    「あぁいや、下の方の先っちょです、ほら、明らかに白いですよね?」
    「……言われてみれば。なんでかしら?」
    言われてよく見ると確かに先が白っぽくなっている。こんなにわかりやすく色が変わってるのにどうして今まで気づかなかったんだろうか、自分の体だと言うのに。我ながら少し恥ずかしい気持ちになった。相変わらず彼女はよく見ていて、心配もしてくれるなぁと思っていたら彼女は
    「あっ、でも強くなると色が変わったり白くなるって言うの、変じゃ無いですよね♪きっとへいきですよ〜。」と言った。
    またまたこの人ってば……私はまんがの読みすぎでしょ、と返した。彼女がこの屋敷で働き始めてから娯楽に触れても罪の意識をしなくなってきたのは嬉しかったが、それはそうとここ最近ずうっとまんが?となるものに夢中になっているらしい。それ故に部屋に行くと生花でも手芸でもなくそれを読むのに浸っていることが多い。
    どうせすぐ飽きる。今までも大体そうだったから。彼女は色々なことに影響されて興味が湧いたらすぐ実行するが大抵ものの数週間、数ヶ月で飽きるし酷い時は三日で飽きている。園芸だけはあの頃にできた趣味だからかずっとこまめにやっている姿が時々見える。だから彼女に振り回されてほとほと困るなんて事は無かったし、これからもきっとない。頼むから園芸だけを趣味としていてほしい。まぁ、お金をかけすぎて破産しないなら、迷惑をかけすぎないなら、貴女が幸せなら、なんでも良いと言えば良いのだけども。
    「うーん、でもなんで白いんですかねぇ。強くなったとかなら心配ご無用ですが…。」
    「強くなったって、そんな訳ないでしょ…。」
    「うーん……あっ!……旦那様に血吸われすぎて血の色抜かれて白くなっちゃったとか?」
    「叩くわよ」
    「ええっ!どうしてですか!!」
    相変わらずとんでもないこと言いおって。
    そんな会話を少し交わしつつ、しばらくして朝靄が少し晴れて微かに太陽の光が見えできた時、「じゃあ、私ちょっとここでやりたいことあるのでしてきたらすぐ戻ってきます〜♪」と言って、園芸が趣味だと語っていた背中は返事をするよりも先に朝靄を掻き分け、自身が植えたという梔子の顔を見に行っていた。
    「まだ良いとも言ってないのに……全く。」
    やれやれとは思いつつ、私はその背中を見送った。
    今日、ここにいるのは私と彼女ら彼らだけだ。私の家族はみんなそれぞれ用事でここを留守にしている。主人のうちのもうひとりということで、私は1人ここに残されている。あ、いや別に嫌々やった訳じゃなくて自分から言ったから文句はない。ただ寂しさを覚えている…それだけのこと。
    私は1人きりが嫌いだ。昔よりマシになったものの家族の誰かが数時間居なくなるだけで心配になってしまう。だから今もこうして気を紛らわすために花を見ている。この花々は別れの日を寄越すが永遠の別れは来ない。枯れたりしおらせたりするが、来年にはまた種から根や葉を生やしてまた会いに来る。全く別のところで、民家で、あの頃いた国で、陽の光を浴びている事もある。よって二度と見ない花なんてそうそう無いのだ。
    こうしていつか1人となった時、今の幸せを思い出せるようにこの庭の花を見て結びつく記憶を残す……まぁ、きっとどうせ忘れてるけど。

    「……あら、もう5時?」屋敷の方を見ると時計の短針が5時ぴったりを指していた。夢中になって彼女とこの庭を眺めていたら、1時間も経っていたのだ。
    「おや。ベアトリス様、もう少し見て行かれたいのなら残りますよ?目が覚めちゃったので笑。」と梔子を見てきた彼女は笑って話す。
    彼女との共有の小さな趣味をまだ楽しんでいたい気持ちとこれ以上縛るのも……と思い、 「いや、平気よ。ひと足先に屋敷に戻っておいてくれる?私も少ししたら戻るから。……この花、色が綺麗だからまだ見ていたくて……」と私は言った。
    「ええっ、主人を1人になんて!……いや、良いですよベアトリス様。ちゃんと戻ってくださいね?旦那様の瞳の色が綺麗なのは認めますけど。それじゃ」
    「は、はぁ?!う、うるさいわね……!」
    そんなことない、そう言いたかったけどよく見ると確かに彼の目のように綺麗に透き通るような空や海を流れゆく水の色の花があった。無自覚のまま引き寄せられた花がこれでは彼女にあんな事言われても言い返しようが無い。私は彼に惚れ切っていますとでも言うかのような事をしてしまった時点で手遅れだ。……誰も見てないよね?顔が熱い気がするの。

    そうして私は長い事飽きずにそれらを見続けた。この庭にあるのだと初めて知ったものもあるし、よく知っている花も去年から居続けてくれている。紛れもなくこうして私が楽しめているのも丁寧な手入れのおかげだろう。私ばかり享楽に講じてて良いのだろうか、そう思い何か私にできる事をと考えていた。
    その時だった。
    「……っ?!いっいつからそこに…!」
    “ソレ“は確かに立っていた。気配を感じ、振り返った私の正面に。シルクのように光沢を生んでいる純白のタイトスカート、それをきつく締め上げるコルセット。薔薇に勲章に刺繍が縫い込まれたレースに、封蝋を随所に着けている。背中には目のような、花にも見えるような奇妙な模様が施された大きな翅があり、微かに揺れていて揺れる度に光があたりに散っていく。光はおそらく翅から飛んだ鱗粉の反射だ。これだけでは奇妙な姿に思えるが、不思議と違和感を覚えない。もしかしたら何かしらの邂逅があったのかもしれない。しかし、身に覚えがあるだけで全く思い出せなかった。“ソレ“は私が思い出せないことを咎めるかのように、突き刺すような視線を向けていた。
    異質すぎる。どうしてここに?どうして?“ソレ“はまるでそこにいるのが当然許されているかのように堂々と立っている。私がおかしいの?いいえ、そんな事ないわきっと、私とあの人達以外ここには入れないんだから……腰が抜けそうになったのをなんとか堪えて言葉を紡いだ。“ソレ“と決して争ってはいけないのを重々分かってはいるが、流石に放っておいて良いわけがない。ああこうなるなら彼女を引き留めておくべきだったかも…
    「ここになら11分と32秒前からいましたよ。」と、“ソレ“が話す。具体的すぎる数値、私に聞かれる事を想定していたのかのようにはっきりと食い付くように答えた。
    「貴方一体…どうやって入ったのよ、ここは私達くらいしか入れない…ちょっとおいたが過ぎるんじゃないのかしら。」
    「ベアトリス・バスチアン・レティシア。」
    「……は?」
    どうして知ってるの?私の額に冷や汗が流れるのを感じる。もうここ何年も、私はその名前で自己紹介などしていない。しかし“ソレ“はハッキリと私の名前を呼んだ。この事から察するに“ソレ“は昔出会ったことのある人、もしくは調べた人、兄の知り合い、あの国出身の人……様々考えられるが、“ソレ“が知るには調べるほかない。
    「どうして貴方なんかが私のあの頃の名前を知っているのよ。」

    今一度“ソレ“の顔のあたりをよく見る。確信を持った。

    「調べ尽くしたのかしら。随分私の事気になるみたいね?」

    頭上には宙に浮かぶ一つの輪。光を微量に放っている。間違いなかった。

    「……天使なのに。」

    「…私めは貴女様に御用があるのですから、事前に調べるのは当然の事です。」

    “ソレ“はあの天を渡る神に愛され、我ら悪魔を地獄の底まで叩き堕とす『天使』だった。
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