世界の果てまで共に[Keith's Side]
「……何で逃げねぇの」
オレがブラッドの胸元に突きつけた剣は堕天使を討伐するためだけに作られたもので、僅かでも触れれば存在が消滅するように出来ている。
コイツがそれを知らねぇはずはない。
なのに、抵抗する素振りも見せねぇ。
「…………ここで逃げたところで他の追っ手が来るのだろう。ならば、お前の手に掛かって終わるのも悪くないと思ったまでだ」
そう言葉にしたブラッドの目には迷いがない。
かつて、天界でもっとも神に近い天使と言われていたあの当時となんら変わりのない目だ。
――下界の争いごとにより、人間たちが……幼い子どもたちも含めた命が日々失われている。だが、神はそれは淘汰であり、必要な犠牲だと言う。だから、手出しは不要だと。俺はそれが納得出来ん。
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