HOTEL AFRICA①隣近所が寝静まった深夜二時にスマートフォンの着信音が鳴った。
はじめは着信などではなく、単なるSNSからくる通知だと思っていたのだが、五秒、十秒と鳴り続けるメロディーを聴いているうちに、ふと知り合いからの緊急連絡ではないかと我に返ったのである。
まだ深夜ということもあり、およそはっきりしない頭で電話マークのアイコンを横になぞってみると、普段あまり電話口で聴くことのない声が、若干上ずったトーンで耳に入ってきた、雑賀孫市だ。
「けいじー?あんさー、ちょっと迎えにきてくんねーかなあー。」
甘ったるいその口調に一瞬で眠気が吹き飛んだ俺は、目をしばたたかせながらいつも以上にセクシーで艶を帯びた孫市の姿を想像していた、おそらく話し声から察するに相当酒を飲んでいるようだが、遊び歩いている間に終電を逃して街中を彷徨った口だろう、であれば迎えに行かない理由はないのではないか。
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