お題:指切りをする降風「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます!」
遠くから聞こえた明るい子供の声に、風見はスマートフォンをいじるふりをしながら、視線を送る。
まだ小学校に上がったばかりだろうか。小柄な子供が小指を絡めていた。
「嘘の罰が針千本って厳しくないですかね」
風見がスマートフォンを見たまま、ぽつりと呟くと、背後から声が返った。
「あれは元々、遊女が客と約束を交わした時のものとされている。『愛しているのはあなただけ』と小指を切り落として送ったそうだ」
「小指……」
ひく、と口元をひきつらせ、思わず額を押さえた。
美しい女が白くしなやかな指に自ら包丁を振り下ろす姿を想像して身震いする。
と。
「実際は、作り物の小指が多かったらしいがな。要するに、営業用だ」
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