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    CQUEEN57235332

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    切島くん夢

    #hrak夢

    6.がんばれ期末テスト!頭の中の未来フィルム.6
     時は流れ六月最終週──……期末試験まで残すところ一週間を切っていた。ヒーロー科編入の為の訓練もあり、憂無は中々勉強に手が回らないでいた。しかし要点を抑えた青革手帳だけは常にアップデートしている。憂無は休み時間、A組へと赴いていた。
    「こんちはー」
     憂無が声を掛けると上鳴が泣きそうな顔で縋り付いてくる。
    「どうした上鳴」
    「頼む……勉強、教えてくれ〜!!」
     は?
    「勉強?」
     上鳴が言う。
    「普通科は俺らより進んでんだろ!? カリキュラムとかそういうの! だから頼む! 期末の為に! 教えてくれ〜!!」
     憂無は溜息を吐く。
    「いいけど……参考になるかは知んないよ」
    「ありがて〜!! 神様仏様前宮様じゃん!!」
     ハイハイ、と憂無はスルーする。そして青革手帳を取り出した。
    「これにね、要点まとめとくの」
    「ふむふむ」
    「……で、それをテスト一時間前とかに読んどく」
    「ふむふ……ハァ!?」
     上鳴は度肝を抜かれた顔で大声を出した。憂無は再び溜息を吐いた。
    「だから言ったでしょ。『参考になるかどうかわからない』って」
    「いや……おまえ……それ……記憶力悪いんじゃなかったのかよ!!」
    「そりゃ悪いよ? 一日で忘れちゃうもん」
     『個性』のせいで。そう言うと上鳴は絶望した表情をする。
    「おまえ……中間……何位だった……?」
     そして恐る恐る聞いたのだ。
    「ん〜? まあ大体4〜5位くらいかな。そこら辺ウロウロしてるよ」
     上鳴は崩れ落ちた。憂無は変な表情をして上鳴を見る。
    「……上鳴?」
    「………………」
     崩れ落ちた上鳴を芦戸が慰める。
    「まーどうにかなるって!」
    「お二人とも」
     と八百万。
    「座学なら私(わたくし)、お力添え出来るかもしれません」
     ヤオモモー!!
     わっと芦戸と上鳴の歓声で沸く。憂無は溜息を吐いた。切島憂無に声を掛ける。
    「な、なあ! 前宮」
    「え、え、な、なに、き、きり、切島」
    「俺と爆豪で勉強会すんだけどよ、おめーも一緒に来ねえ?」
    「え、いいの?」
    「よくねえわブチ殺すぞ」
    「爆豪ー!」
     切島は爆豪にいいじゃねえか、と言っていた。憂無は切島と再び話す。
    「本当に……いいの……?」
    「お、おう! 漢に二言はねーぜ!」
     憂無は頬を染めて言う。
    「じゃ、じゃあ……いつやるか、とか連絡の為にメッセージアプリのID、交換しても……」
    「お、おう! 勿論だぜ!!」
     初々しいやり取りの中爆豪はひたすらに不機嫌だった。
    「俺をダシに使いやがって………………!!」
     
     § § §

      前宮憂無は上機嫌だった。何故って? それは気になるカレの連絡先──といっても、メッセージアプリのIDだが。まあ連絡先には違いない。憂無はとっても上機嫌で自宅のベッドでゴロゴロとしていた。切島のメッセージアプリのアイコンは憂無の知らないヒーロー……紅(クリムゾン)頼雄斗(ライオット)のものである。対して憂無のメッセージアプリのアイコンは自分で描いたイラストを毎月変えているのだ。切島のメッセージアプリアイコンをにまにましながら眺めているとピコン! と彼からメッセージが来る。憂無は慌てて画面を変えた。
    『よお! 夜にすまねぇ!』
    『ううん、大丈夫だよ』
    『勉強会の日にち決まったぜ!』
    『ありがとう』
    『今週の日曜日な! またよろしく!』
    『うん、よろしく! 爆豪にも伝えといて』
     カチカチと携帯をいじり終えると憂無はとても嬉しそうで満足げな表情でベッドに沈んだ。
    「ふふ、ふへへへへへ……」
     全身が緩みきっている。溶けてしまいそうだ。憂無はどんな服を着て行こうかな、とワクワクしていた。六月だし結構暑いから袖短い方がいいよね……だとか、そんなことばかり考えていた。コンコンコン、とノック音の後天哉の声。
    「憂無。お風呂空いたから入るんだぞ」
    「はぁい」
     緩みを隠しきれない憂無はそう言ってのそのそと風呂に入る用意をした。

     § § §

     日曜日。晴天だった。憂無は持っている服の中でとびきりお洒落をして出て行く。白い半袖シャツにウエストをベルトで締めたものとこれまた白いショートパンツ。靴は蛍光イエローと黒のハイカットスニーカーだ。勿論鞄の中には勉強のための本やノート、筆記用具が入っている。
    『十時頃には駅に着くよ』
     ニッコリマークの絵文字を添えて、憂無は携帯でメッセージアプリの切島宛にメッセージを送った。少し歩いて駅に着くと切島からメッセージが来ていた。憂無は少しドキドキしながらメッセージアプリを開く。
    『おう! 待ってるぜ!』
     ──きっと、クラクラしそうなのは暑さのせいだけではない。憂無は電車に乗り込むと、勉強会をする図書館の最寄り駅まで座っていた。最寄り駅まで着くともう既に切島と爆豪がいた。
    「遅んだよザル耳」
     との爆豪の言葉に言い返そうとしたが切島が庇う。
    「何でだよ爆豪! 集合時間丁度じゃねえか!」
    「うっせ。秒過ぎてんだわクソが」
     憂無は爆豪の態度に溜息を吐く。切島が言う。
    「悪ィ! 爆豪あんなんだけど根は………………そこまで悪いやつじゃねえんだ! 多分!」
    「そこまで言うんなら否定しろやクソ髪!!」
     話が聞こえていた爆豪はぐりんとこちらを向いて言ったのであった。図書館に着くと日当たりの良い席に三人で陣取った。憂無、切島、爆豪で座る。憂無は言う。
    「私は要点纏めるだけだけど……が、頑張ってね、切島」
    「おう!」
     ……あっ、すんません……。
     思わず切島が大声を出してしまい、彼は周囲に謝った。憂無は要点を青革手帳に纏める傍ら、切島の顔を見ている。なんだかんだで、爆豪も教える事に向いてないらしい事を察した憂無は教える事に参加した。二人の要点を射てはいるが微妙にわかりにくい教え方に切島は涙をぐっと堪え、言う。
    「漢らしい教え方だぜ……」
    「あぁ?」
     二人のやり取りも構わず憂無は根気強く教えようとする。しかし余り上手くいってはいないようだった。図書館での勉強会は途中で爆豪が幼い子供に怒鳴り散らした事で切島が大慌てで爆豪と憂無を連れ出す。
    「すっ、すんませんでしたぁー!!」

     § § §

     仕切り直して、駅前のファミレス。切島が言う。
    「俺、持ってきてやるよ。二人共何がいい?」
    「コーラ」
    「ぼ、ボクはメロンソーダ……」
    「俺と同じだ」
     にぱ、と笑う切島に憂無は少し嬉しそうな表情をする。そうして切島がドリンクバーを取りに行ったのと入れ替わりに爆豪の中学時代の友人二人が来た。
    「……あれ、カツキじゃん!」
    「あ?」
    「何この子、カツキの彼女?」
    「違ーわ!」
    「えっと……」
     誰だろう。憂無が不思議そうにしていると二人は言う。
    「俺ら、カツキの中学ん時のダチでさー!」
     憂無はなるほど、と得心する。
    「ああ、爆豪。話してていいよ。友達なんでしょ。私は要点纏めとくから」
    「話す事なんかねーよ散れ」
    「ひでぇなあ」
     と笑う二人。と、そこに切島が戻ってくる。
    「ん?」
     爆豪と話す少年二人と黙々と要点を纏める憂無。それが目に入って切島は声を掛ける。
    「爆豪、なに、知り合いか?」
    「中学ん時のダチだよ。さっさと自分のテーブル戻りやがれ」
     名残惜しげに二人が立ちあがろうとするも切島は笑顔で二人を引き留めた。
    「あ、じゃあ座っててくれよ!」
    「勉強はどうすんだよ」
    「ぼ、ボクが教えとくけど?」
    「そうそう! 前宮もこう言ってくれてる事だし、それに」
     ダチは大切にしねえとな!
     少年が言う。
    「……なんだ、あんた。カツキの友達とは思えねーくらい、いい人だな」
     それを聞いて爆豪と切島が同時に発言する。憂無はそれを放っておいてノートを取り出した。切島はむくむくと好奇心が湧き上がり、問い掛ける。
    「なぁ、中学ん時の爆豪ってどんな感じだったんだ?」
     唯我独尊、地球は自分中心に回ってるみたいな、等ろくでもない答えが返って来た。爆豪は拳を握りつつ言う。
    「……てめえら、殴られてえんだな? あ?」
    「わー、将来のヒーローが暴力振るうなよ!」
    「うっせえ! どけ、クソモブどもが」
     そう言って爆豪は横に座る少年を立ち上がらせると飲み干していたグラスを持ち、ドリンクバーに向かった。それから爆豪の話や、緑谷の話に移行する。緑谷の話をしているといつの間にか爆豪が戻って来ており、彼は怒り心頭といった様子でコーラを片手に持っていた。暴れる爆豪とそれを止めようとする切島、憂無でちょっとした騒ぎになる。爆豪に気付いた客達のひそひそ声に爆豪はついに爆発した。
    「うるせえ!! モブ客どもは黙ってクソ飯でも食ってやがれ!!」
    「ああ、もう!」
     憂無は溜息を吐く。
    「お客様」
     叫んだ爆豪の肩を掴んだのは、ファミレスの店長。しかもいかつい。
    「他のお客様のご迷惑になりますので、もう少しお静かに……」
     しかし爆豪は言葉だけでは収まらない。
    「うるせえ!! 俺も客だろうが!!」
     ……そうして五人はファミレスを追い出されたのであった。爆豪は終始キレており、そのまま帰ってしまう。切島は勉強は自力でどうにかするしかねえのか……! と思い掛けたその瞬間、憂無が提案をする。
    「あ、あの、あのね、切島」
     ボクの家で良ければ……来ない?
     切島の脳髄に電撃、疾る。それくらいの衝撃だった。切島は言う。
    「い、良いのか……?」
    「う、うん」
     少し恥ずかしげに、憂無は頷いた。切島はホッとして憂無についていく。そして──切島は忘れていたが、憂無の家という事は天哉の家でもあると言う事だ。
    「やあ、切島くんじゃないか!」
    「飯田!? なんで……」
    「ボクと天哉は兄妹みたいなものだから」
    「あ…………そっか……」
     と切島は脱力する。天哉は言う。
    「勉強をするんだろう? 俺も丁度しようとしていたところだから一緒にしようじゃないか!」
    「じゃあ天哉は私の部屋にき、切島を案内してて」
    「ああ! こっちだ、切島くん」
    「お、おぅ……」
     切島は始めて入る女子の部屋に少し緊張していた。天哉が先導して憂無の部屋まで行く。憂無の部屋は壁一面、メモ書きだらけで面食らったが、流石は女子。フローラルな香りがふんわりと漂っていた。
     心頭滅却……! 心頭滅却だ俺……!!
     そう言い聞かせ平静を保つ切島。憂無がお茶を盆に乗せて持って来た。
    「はい、どうぞ」
     ローテーブルを三人で囲むと少し狭く、身体の一部が触れ合う事もままある。切島と憂無は手が当たると恥ずかしげにしていた。それを数回繰り返す。天哉のお陰で切島は勉強の分からないところを理解する事が出来たのであった。
    「いやーありがとな! 前宮、飯田!」
    「や、役に立てたのなら……良かった…………よ?」
     上目遣いで言った憂無。切島は思わず顔を赤らめ、言う。
    「いや、本当ありがとな!!」
     天哉も言う。
    「これで林間合宿、一緒に行けるな! 切島くん!」
    「あ、あぁっ! 本当おめーらのお陰だぜ!!」
     切島はニカッと笑った。憂無はその笑顔を目に焼き付けた。
     夜、風呂上がりに携帯を見ると切島からメッセージが来ていた。アプリを起動すると彼からありがとうを伝える旨のメッセージが来ている。憂無は嬉しくなってどう返信しようか迷って迷って一時間経った。そうして、やっと返信を打つ。
    『こちらこそ!』
     ニッコリマークの絵文字も添えて。暫くしてピコン、と着信音が鳴る。見ると、切島からのガッツポーズのスタンプだった。憂無はそれを見ると微笑んだ。

     § § §

     期末試験当日。憂無は青革手帳をギリギリまで読み込んでいる。
    「教科書しまえー筆記用具だけ出しとけよー」
     憂無は教科書と青革手帳をしまうと担任の方を向いた。前からテスト用紙が送られてくる。後ろの席の心操に渡した。始業ベルが鳴る。
    「では……始め!」
     憂無はすらすらとテストを解いていく。国語、数学、理科、社会、外国語……etc(エトセトラ)……。順調に解を導き出していく。憂無は開始四十分程で各テストを終わらせると吐息を漏らす。
    「はーおわった」
     心操が言う。
    「前宮さん、テスト終わるの早かったみたいだけどやっぱ頭良いんだ」
    「んー……どうだろね」
     悪くは無いけど、と言う。憂無は逆に問い返す。
    「そういう心操はテスト、どうだったのさ」
    「まあ、まあまあかな」
    「そういうとこ……そういうとこだよ心操……!」
     憂無は言ったが心操はどこ吹く風だった。テストが終わり、憂無はA組に向かう。テストの出来が気になったからだ。天哉は大丈夫だろうが、問題は切島である。憂無はそろ、とA組のドアを開けた。皆テストが終わった事で沸いているところである。憂無は意を決してドアを開ける。ずんずんと切島の前まで歩く。顔は相変わらず赤い。
    「前宮」
     と切島。憂無は聞く。
    「き、き、き、切島。て、テスト、どうだった……??」
     切島はニカッと笑って言う。
    「おめーと飯田のお陰でなんとかなったぜ!!」
     良かった、と憂無はホッと笑う。上鳴は切島と憂無をチラチラと見ると尾白にこそこそと話す。
    「なあ……何、アレ?」
    「さあ……?」
     甘酸っぱい雰囲気の中、憂無と切島は少し話したのであった。
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