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    pon69uod

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    ハロウィンに向けて書いていたけど間に合わなかったしなんか悲しくなりそうなのでボツ

    ハロウィンなら許されたシンデレラパロディ昔々あるところに、シンデレラという青年がおりました。シンデレラは山の奥深く、今にも崩れそうな家で、魔法使いと二人で暮らしていました。シンデレラの住む家は、昔は大変豊かで賑やかだったのですが、一家の大黒柱が身罷られてからは庭を整える者もおらず荒れ果てる一方でした。
    そんな家に、ある日お城から招待状が届きました。隣の国の王子様から演奏会のお誘いです。最近めきめきと力をつけているその国は、とても音楽が盛んなようで、全国からたくさんの演奏家を集めては、毎夜のように演奏家をしているのでした。シンデレラは音楽が好きでした。音楽を聞いたり、自分で奏でたりすれば、どんなときでも幸せな気持ちになれるからです。あの国の演奏家はどんな演奏をするのだろう、招待状を見ているだけでもドキドキと胸が高鳴り、行って聞いてみたいという思いが膨らみました。
    シンデレラがあんまりにもお城の演奏のことばかり考えているので、魔法使いはおかしくてたまりません。
    「そんなに行ってみたいのなら、行っておいで」
    「ですが……」
    渋るシンデレラの気持ちも、魔法使いにはよく分かるのでした。きっと粗末な服を着ているのが気になるのでしょう。
    「そうだね、そのままの格好ではお城には入れない。それにここは国の端とはいえ、隣国はまだまだ遠い。これを使いなさい」
    魔法使いは星のローブとガラスの靴を出しました。星のローブはなりたい姿になれるように、ガラスの靴は風のように早く走れるように魔法がかけられています。シンデレラはありがたく受け取ると、早速お城へ向かいました。

    隣国のお城は、噂通りに賑やかでした。あちこちで路上演奏が行われ、お城からは素敵な音楽が聞こえてきます。シンデレラは誘われるようにお城の中へと入っていきました。
    街の演奏も素晴らしいけれど、お城の中の演奏は格別でした。王子様がコンサートミストレスを務めるオーケストラが、ちょうど演奏をしている最中のようです。なんて素敵な曲だろう、それに、なんて大きなステージ。シンデレラは心を奪われました。
    シンデレラは楽器を持って来ていました。小さな頃から一緒の大切な楽器です。吹きたい、奏でたい、今すぐに。ドキドキしながら裏庭へと急ぎます。そして誰もいないことを確認すると、すう、と息を吸いました。
    奏でたのは、懐かしい、美しい曲でした。シンデレラの住んでいる国では演奏することが許されない、とても悲しい扱いをされる曲です。シンデレラはこの曲が好きでした。好きで、好きで、大好きで、この曲を演奏するために、自分の家を飛び出して、魔法使いの家に弟子入りしたくらいです。だから奏でてはいけないと魔法使いからきつく言われていても、練習を欠かすことはありませんでした。曲の出来をどんなに悪し様に言われても、楽譜を焼かれても、耳は、指は、その美しい旋律を忘れることができません。
    「ブラボー! いい曲だね、なんて曲?」
    「あ………」
    背後から拍手と、シンデレラと同じ年頃くらいの少女の声が聞こえました。シンデレラは演奏できることがあまりに嬉しくて、警戒を薄めてしまっていたのです。聞かれてしまった。シンデレラの背筋が凍ります。でも今ならまだ、間に合うかもしれません。幸いにも少女にはシンデレラの後ろ姿しか見えていません。演奏を聞かれていたのもほんの一瞬のことでしょう。シンデレラは急いで星のローブを被り、体が見えなくなるよう祈りました。
    「? あれ、オーボエくん?どこに行っちゃったの??」
    慌てたような少女の声が聞こえましたが、答えることはできません。シンデレラはそっとガラスの靴を履くと、急いでお城を後にしました。

    家に帰ったシンデレラは、魔法使いに借りた星のローブとガラスの靴を返しながら、城中でのことを包み隠さず話しました。シンデレラは嘘がつけない性分でしたし、たとえ口にしなくとも、魔法使いにはなぜか全て見通されてしまうからです。 
    「そう……あの曲を、」
    「はい、申し訳ありませんでした」
    「……終わってしまったことをどうこう言っても仕方がないね。次から気をつけるように。それにしても……」
    魔法使いはシンデレラの顔を見上げて微笑みました。
    「随分と楽しかったようだね。そんなに良かったかい?スターライト国のオーケストラは」
    「……はい、」
    促すように引かれた椅子に座って、シンデレラはお城での演奏について語りました。双子のようにぴったり息の合う演奏をする木管、競い合い、挑み合うような応酬をする金管、そして個性豊かな弦とそれをまとめ上げるコンミスと指揮者。普段物静かにしていることが多いシンデレラにしては珍しく、賛辞の言葉が次から次へと口をついて出てきます。
    「ふふ……いいものを見たのですね。お前がそんなふうになるのは久々じゃないかい?お茶でも飲んで少し落ち着きなさい」
    「はい、頂きます。そうだ……今度は、浮葉様も是非一緒に」
    「……そうですね、考えておきましょう」
    シンデレラと魔法使いの家は、ひととき、かの国の話題に光が灯りましたが、またいつものように、静かに、静かに暮れていくのでした。

    数日たったある日のこと。
    「こんにちは、こちらの家に、この曲をご存知の方はいらっしゃいますか?」
    シンデレラが庭で鍛錬を積んでいると、扉の方から明るい声が聞こえてきました。久しくなかった来客です。シンデレラはそっと扉の向こうを覗き見ました。
    「あっ!はじめまして!使用人の方ですか?私、スターライト国の王子の朝日奈唯と申します。突然のことで失礼しますが、こちらの曲をご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?」
    その声は、シンデレラがお城の裏庭で出会った少女のものでした。まさか、王子様だったなんて。まずいことになったとシンデレラは焦りました。王子は手に持ったヴァイオリンを構えて、今にも弾き出しそうです。「こちらの曲」があの曲であろうことを、シンデレラはほぼ確信していました。
    「……っ、待ってくれ、あの曲は……ここでは、」
    王子の持つ弓が弦に触れます。たどたどしくも丁寧に奏でられるその旋律。ヴァイオリンがこの曲を奏でるのはもう何年ぶりだろう。シンデレラが初めてこの曲を聞いたときも、そう、ヴァイオリンが美しい響きを会場いっぱいに満たしていました。
    「おや、源一郎、お客様かい?」
    気がつくと、魔法使いが後ろに立っていました。主は、先ほどの演奏を聞いただろうか。シンデレラの背筋がまた凍りました。
    そんなシンデレラのことはつゆ知らず、王子はシンデレラの後ろからぴょこりと顔を出し、魔法使いの姿を見止めました。
    「あ!こちらのお家の主様ですか?こんにちは、私は……」


    というハロウィンの話を考えていたけど全然間に合いませんでしたえへへ!
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