過去と感情イレギュラーに対する存在価値
それに対する、見極め
山嶽ノ國
邪魅「ぬりかべに起きたあの現象が何故悠や大路に起きたのか」
通信鏡を使い、滝夜叉姫と邪魅、閻魔王が話し合っていた
内容は救い主らの話
滝夜叉姫「うむ。悪いぬりかべの事じゃな」
邪魅「何処からそんな術を貰ってきたのかしら。悠と大路は」
閻魔「滝夜叉。あの二人は今どうなっている?」
滝夜叉姫「悠殿と大路殿は…」
現状、あの二人がぬりかべラグナのようになってしまったのは各國の妖主でも頭を悩ませていた
名のある妖怪の術者でも「本来人間である救い主様らがラグナになるのは有り得ない。」と言っていた
もちろん、術にいちばん詳しい妖主の邪魅や天狐も分かっている
滝夜叉姫「悠殿は比較的大人しいので、自身の屋敷でのんびりしておる」
閻魔「悠の方は大人しいのだな。では大路は?」
滝夜叉姫「大路殿は……」
邪魅「大路の方は私から説明するわ」
滝夜叉姫「なっ!?」
滝夜叉姫が大路の事を説明する前に何故か食い気味に邪魅が説明をすると言い出した
滝夜叉姫は少しだけ不服そうである
邪魅「大路は気性が荒いのか、自分の屋敷から抜け出してこの國に来るまで怨霊を殺し回っていたわ。」
閻魔「……邪魅、お前の國の妖怪らは被害に遭ってはいないな?」
邪魅「あら、地獄の長である貴女ならこっちの者が死んだ場合、魂が其方に行くのが分かるのに…分からないのかしら?」
閻魔「…………。」
少しだけ険悪な雰囲気が漂う
普段、こんな空気にはならない筈だ
閻魔王と邪魅も苛立っている
滝夜叉姫「二人、苛立っているのは分かる。だがこれでは話が進まんぞ」
邪魅「……そうね」
閻魔「…大路の方は気性が荒いと言ったが、今邪魅の所でどうなっているのだ」
邪魅「今は私の屋敷に術で拘束しているわ」
滝夜叉姫「拘束しなければ暴れるという事じゃな」
二人のラグナがどうなっているかの把握は出来た
何故、人間である救い主らが悪い人間?になってしまったのか。そこからである
閻魔「……では滝夜叉。どうして、二人は悪くなったのか説明してくれ」
滝夜叉姫「あいわかった」
時間は2時間前に遡る。
普段と変わらない生活をしていた悠と大路、そして妖怪らだったが二人の屋敷に一つ、小さな怨霊が現れたという
悠「……」
大路「……」
ズズ
二人はその時、本を読んでいたらしくその小さな怨霊には気付かなかった
そして…その怨霊は
悠「……ん、何か眠くなってきた」
大路「…………。」
悠「…大路さんは寝てるし。まぁ、おれも眠いからなぁ…少しだけ寝ようかな」
寝てしまった二人を “呑み込んでしまった”。
そしてまた、二人を別々に
-悠の内-
?「先輩、どうして…死んでしまったんですか?」
?「悠、お前の幸せは俺の隣に居ることだ。」
過去の話を見せられている。
何故?何故思い出したくもない過去を見せられているのか
それと、幸せとは何か?
「なに?」
?「悠」
「なんでお前が居るの?…それとここは何処?」
何も無い暗い闇だった。
どこを見ても何も無かった
なので、【それ】から攻撃されても気付けない
シュッッ
「……ッえ?」
急に両腕が軽くなり、そのまま倒れ込んでしまった
次に来た感情は悠が普段から感じる痛みだった
「痛いッ……痛い痛い痛い痛い痛いッ」
暗闇の中で泣き叫ぶ
両腕、左足首を失った。
常に隣に居る仲間に助けを求める
「助けてッ……助けて……ッだ、大…大路さッ……」
その助けを求める声は小さな泣いた子供と変わらない
どれだけ泣いて助けを求めても信頼する彼は来てくれなかった
「い、たいッ……どう、して…ッ…」
悠に目に映る色が真っ暗になるのではなく紫色に染まっていった
それと、自分の中に何か入ってくる感じもする
気持ち悪い粘着質の液体のような
「……………。」
彼の過去は幸せに満ちているとは言えないものだった
幸せとは何か?どうしたら幸せになれるのか?
もう何だったら幸せを奪えばいいのでは無いか?
【それ】はその過去に巧妙に呪いをかけた。
「幸セヲ……教エテ。」
悪い悠になってしまったのがその怨霊のせいだとは悠は気付きはしない
過去が呪われてしまったことも
-大路の内-
「心配して、損した。」
大路を変えてしまった言葉が聞こえてきた
他人に心配を掛けさせまいと、彼なりに考えた結果の感情を殺すこと。
「此処は何処だ?」
悠と同様真っ暗で何も見えない、何も無い場所
しかし大路は悠とは違い、歩き出口を探していた
【それ】も意思があるのか、少しだけ動揺していた
「…何だか知らないが、此処から出してくれないか」
何か、に問いかける。もちろん返事は無い
回答が無いのは知っていたが大路は少しだけ苛立ちを見せた
「……早く彼の元へ行かないといけないんで。さもなくば探し出して消す」
姿も見えない【それ】を脅し出す
怨霊も彼の過去を探っても術を掛けられず焦っていた
「ッチ……」
しかし、消すことも叶わず大路は一つの記憶を思い出した
「!」
-?-
?「大路くん、どうして友達が死んでも泣かないの?」
?「最低…。」
?「深森、お前最低な奴だな…」
最低なのは分かっていた。感情を殺したから
だが、何故理由も知らないお前らにそう言われないといけないのかと
「…………。」
もし感情を露わにし、この自分の力をセーブせず非力な奴らを殺したら?と沸々と何かが湧き上がってきた。
「自分を悪く言う奴らが居なくなる。」
大路の過去に呪いを掛けるより、大路の感情を呪った方がいいと【それ】は判断した
「何だ……簡単じゃねぇか。弱い奴を殺す事なんて」
………。
滝夜叉姫「悠殿は暗闇の中には居たが、そこから覚えていないと」
閻魔「悠本人から聞いたわけか。」
滝夜叉姫「そうじゃな。邪魅は…幻夢でも使ったか?」
邪魅「えぇ。詳しい事は見れなかったから大路が自分の意思で見せなかったんでしょう」
三人の妖主は二人がどうしてそうなったかを聞き、悩ませていた。【それ】をどう炙り出すかを
邪魅「その怨霊、私たちが思っているより頭が良いようね」
滝夜叉姫「悠殿の方はある程度の話はできる。大路殿は会話が今は出来んだろう?」
閻魔「うむ…そうだな。邪魅、悠と大路のその呪いを抑えることは出来ぬか?」
邪魅「…天狐、となら可能かもしれないわね。勿論、それは二人が元に戻りたいか否かで成功するかが決まるけれど」
その後、二人は邪魅と天狐の術により【それ】を抑えることが成功し元の姿に戻った。
悠と大路がラグナ化を制御できるのは後々になる。
-終?-