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    koudate

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    koudate

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    まだ星王になる前
    鏡の中の別世界みたいな設定が好き
    三蔵さんが少し黒い

    #三窮

    ワーヒー 三蔵→窮奇「三蔵!」
    ノックも無しにドアを開き無遠慮にズカズカと他人の部屋へと踏み入る男、窮奇ストライクフリーダム。
    「クソっなんでアイツ重要なデータは全部謄写してんだよ、探し出すの面倒くさいじゃいか」
    整頓されたデスクをお構い無しにひっくり返すように漁る。
    「一体何処にあるんだ……ん?なんだアレ」
    一通りデスクを探し紙の束が辺り一面に散乱した所で部屋を見回すと布に覆われていても分かるほど一際大きく存在感のあるモノが目に止まった。
    布を引っ張るとそこに鎮座していたのは自分の背丈よりも幾分か高く全身くまなく映る鏡だった。随分と古い年季の入った代物のようで凝った装飾が施されているのを見るに元々は金の枠組みだったのだろうが見る影も無い鈍く光っている。
    三蔵には似合わない、何だってこんなモノを持っているんだか。
    何かの実験道具だったりして。マジマジと映る自身を視線を動かし眺めながら触れて見る。
    「……ッ!」
    グラりと突然目眩に襲われ思わずその場に膝を着く。
    「……なんだ今の」
    鏡に触れた途端に具合が悪くなった。やっぱり三蔵の実験道具だったのか。視界が戻りつつある中よろよろと立ち上がり顔を上げたところでギョッとする。鏡に自分が映ってないのだ、目の前に立っているというのに。呆然と立ち尽くす。どうにも不愉快だ。
    「…………チッ、なんなんだよ」
    何も無い無機質な部屋から悪態を付きながら飛び出して行った。

    「どうなってるんだ?」
    足早に通路を歩く。確認してみたが窓やトイレの鏡と言った映るモノ全てに自分の姿が映らなくなっていた。そしてもうひとつ気になるのがすれ違う職員たちがみな奇異の目で見てくるのだ。アイツらより自身がとても優れているから時折羨望や嫉みの混じった視線を向けられるのは慣れていたがこうも隠す事無く注がれるとは。何かがおかしい、どう考えてもあの姿見のせいだろう。
    早く三蔵をとっ捕まえて元に戻させ無くては。
    「……窮奇?」
    「ったく何処にいたんだよ探したんだぞ」
    窮奇を見て酷く驚いた顔をして足を止める三蔵に足早に近づきながら文句を飛ばす。
    「貴方こそいつの間に逃げ出してきたのですか?しっかり首輪をしといたはずなのに」
    「ハァ?ボクが逃げ出す?一体何の話?」
    怪訝そうに顔を顰め反論するが、何だか三蔵の様子、雰囲気がいつもと違う気がする。
    「三蔵様、さっきのデータなんですが……あれ?さっきまで牢に居たのにいつの間にアレを解放なさったんですか?」
    データパッドを持って走ってきた三蔵の部下が窮奇を見て不思議そうな顔をする。
    幾ら三蔵の部下でも星王候補であるボクを"アレ"呼ばわりする愚かな人間はいない。それに牢にいたって。
    「……ああやっぱり。コレは私の窮奇じゃないのか」
    クスクスと嗤う姿にぞわりと恐怖が走る。コイツ三蔵じゃない。
    「お前ッ!誰なんだよ!」
    どろりと渦巻く嫌な感覚を振り払うように語気を荒らげ喚いた。
    「三蔵ストライクフリーダムですよ、忘れたんですか窮奇」
    伸ばされた手から逃れるよう一歩後ろに下がった。
    「三蔵の面したニセモノだろ!気持ち悪い!」
    「ニセモノとは心外な、私も三蔵なのに」
    コイツはやばいと本能が叫ぶ。慌ててこの場から離脱しようとするが何故かいつもの様に異空間へと逃げ込めない。
    「ムダですよ」
    地に転げたままなんとか距離を取ろうと這ったまま必死に逃げるが、あっという間に詰められると腕を取られる。
    「ひっ……離せよ!」
    震えながらなんとか振り払おうとするも微動だにしない。冷たい視線が窮奇を見下ろす。
    「別にお前の事は取って食いはしない。興味はないからさっさと帰ってくれ」
    輝く鋭利な瞳と目が合った所で意識が途切れた。

    「……、……窮奇?」
    ハッと目を覚ますと不安そうに此方を覗き見る三蔵の姿。
    意識を失う前最後の光景を思い出し、びくりと飛び起き紙の束を踏みながら端へと逃げた。
    「窮奇?本当にどうしたのですか?」
    突然の奇行にキョトンとした顔で見つめる三蔵に安堵する。良かった、この反応は何時もの知っている三蔵だ。
    「別に、ちょっと夢見が悪かっただけだよ」
    何でもないという素振りで適当な理由を告げれば納得してない顔では有るが何も言ってこなかった。書類を拾い集めている三蔵の隣に戻る。チラリと視線を姿見にやると黒と白が並んでいる。
    「ねぇ、この鏡って……」
    「ああこれですか?数代に渡り星王妃が使われた鏡ですよ。今代の后妃様が室に置きたくないと言うので私が預かっていたんです」
    「なんで三蔵なの?別にボクに言ってくれてもいいのに」
    「貴方の部屋に置くと割りかねないと思ったので私が保管に名乗り出たんです」
    「…………」
    確かにこんなデカくて邪魔なモノ割ってしまうだろう。反論が浮かばず口ごもる。
    「人喰い鏡だとか、この鏡を見た後宮妃が何人もおかしくなったとかいわく付きの鏡なので后妃様は側に置きたく無かったらしいです」
    先程の夢……にしては鮮明な光景を思い出し思わず身体を強ばらせる。
    「まぁ実際そんな非論理的現象が起こるワケないんですけどね。現に私は毎日鏡に愚痴を聞いてもらってますし」
    「……お前友達いないのかよ」
    鏡に撫でるように手を置く三蔵に同情の眼差しを送る。
    「失礼な、いますよ。それより窮奇どうして部屋を荒らしたんです?」
    「あー……この間のヒューマノイドのデータ欲しかったんだけど」
    「01のデータなら先程星王様に提出してきましたが」
    「嘘だろ?00の方が高い数値だったじゃないか」
    「数値だけで見測れるものでは無いです、国の守りを担う役目あとして将来的には」
    「うるさい!ボクも直訴してくる!」
    「ああもう窮奇!待ってください」
    苛苛とした様子で喚き飛び出して行った窮奇をなんとか宥めようと慌てて三蔵も追いかけて行った。
    静かになった部屋で先程の姿が鏡に映ったままの三蔵は嗤うとひっそりと形を消した。
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