文仙本サンプル すくいあげるは恋の花『作戦のはじまり』
「文次郎、明日は暇か?」
金曜日。授業が終わってすぐ、一番前の席に座っていた文次郎に声をかける。
「暇じゃない」
教科書をかばんに入れながら文次郎が答える。
「どこかへ行くのか?」
「新入生歓迎会の買い出しだ」
季節は四月。私たちが最高学年になるのと同時に新しい一年生たちが入ってきた。
「あぁ。そういえば来週だったな。なら私も行こう!」
「お前は関係ないだろうが」
「人手は多い方がいいだろう?それに私も買いたいものがあるからな」
買いたいものは特にないが、適当な理由をつけてついていくことにする。
「好きにしろ」
いつも通りそっけなく文次郎は応じてくれた。
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「あとは何を買うんだ?」
いくつかの店を回って目当ての物を買う。もちろん買ったものは文次郎が自分で持っている。
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