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    case669

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    制服
    カリジャミ

    ##カリジャミ

    スリムなラインのシャツとジャケット。今まで風通しの良い服に慣れてきた身には張り付くような布の不快感が付きまとう。おまけに首を締めるネクタイの息苦しさ。着慣れぬ制服を楽しめたのは初めて袖を通した日だけで、今では朝着替える時に一々溜め息が溢れてしまう。
    「なあ、ジャミル。これ着なくちゃ駄目か?」
    ジャミルよりものびのびと育てられたカリムにはもっと苦痛が大きいのだろう。ベストのボタンを留めていた筈の指先が汚物でも摘まむようにジャケットを持ち上げていた。
    「アジームの跡取りは服もまともに着られないと謗られたくは無いだろう、諦めろ」
    「まともな服なら他にもあるだろ?」
    「入学早々目立つようなことはするなと言ってるんだ」
    「でもジャミルだって困ってるんだろ?」
    「お前一人守るくらいならなんとかなる」
    「ジャミルも無事じゃなきゃ意味が無いって言ってるだろ!」
    不服そうな顔をしてカリムが拗ねるが、正直ただただ面倒臭い。ジャミルはきっちりとネクタイを締めてジャケットのボタンまで留め終えたというのにカリムはまだ中途半端にベストを着る途中だった。
    「とにかく、着替えろ。遅刻するぞ」
    「なあ、この服だと俺が死ぬかもしれないから着ない、って言えば許されるんじゃないか?」
    「はあ?」
    名案を思い付いたとばかりにカリムが目を輝かせていた。思わずジャミルは時計を確認する。こうなったカリムはなかなか人の話を聞かない。
    「事実だろ?」
    「だが」
    「実家にいる時みたいにそれを持てた方がジャミルだって落ち着くだろ?」
    それ、と。今まさに袖の内側へと忍び込ませていた細身のナイフを指差してカリムが笑う。それ以外にも並べられた魔法具や暗器はなんとか制服の内側に収まるだけに厳選されたもので、今まではもっとたくさん身体中に仕込んでいた。心許ないのは事実だが、そもそもそんな話をしていたわけでは無かった筈だ。
    「そうと決まれば早速学園長のとこ行こうぜ!」
    だが反論する間もなく、まるで犬のように部屋を飛び出してしまうカリムに慌てて仕舞いきれていない道具をひっ掴み、どうにか制服の中に押し込みながら追い掛ける。何の為に俺がこれだけのものを隠し持っているんだと思っているんだあの馬鹿と心の中で罵詈雑言を投げつけながら、少しだけジャミルの心も弾んでいた。


    「制服なんてどうでも良いですよ、それよりもくれぐれも学園内で命を落としたりしないでくださいね、外聞悪いので」と言い放つ学園長に喜んだり失望したりするのはまた別の話。
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