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    case669

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    ゆめものがたり
    アデレイ…というかオールキャラ

    ##アデレイ

    人が神と決別し、シガイの脅威から逃れてはや幾年。
    インソムニアの六月には珍しい快晴。まるで祝福するかのような空に感謝すると共に、たった一人の妹の晴れの日なのだから当然だろうという思いがレイヴスの胸の中にあった。
    「おかしなところは無いでしょうか……」
    美しく繊細な純白のヴェールを被った妹が落ち着かぬ様子でレイヴスを見上げていた。玉座へと繋がる分厚い扉の向こうからはオルガンの音が響き、式の始まりを告げている。
    「心配するな。お前と血が繋がっていなければこのまま拐ってやりたいと思うくらいに美しい」
    「ふふ、そんなご冗談をおっしゃられるのも珍しいですね」
    ヴェールの向こうで愛らしい顔が綻んだ。妹が幼少の頃より想う相手と結ばれる事が喜ばしいのは事実だが、兄として、たった一人きりの家族として、手離したくないと思ってしまう気持ちも無い訳では無い。
    「……こうして手を引いてやれるのも最後だからな」
    活発な妹の手を引く事はそれほど無かったが、彼女の導となるべく常に前を向いて歩いてきた。だがそれも今日で終わりだ。
    穏やかな笑みを浮かべていた筈の妹の顔がくしゃりと歪み、そうして胸元へと飛び込んで来るのを両手で受け止める。小さく華奢な身体。だがその儚い身体の内には眩い程の情熱と力を秘めた、誰よりも愛しい妹。
    「幸せになれ、ルナフレーナ」
    はい、と腕の中の身体が小さく頷き、一度強く抱き締められ、そして離れる。溢れる一つ手前のように濡れた瞳は、それでもこれからの未来を示すかのように微笑んでいた。名残惜しむかのようにレイヴスの袖に絡み付いたヴェールをそっと外し、形を整えてやってから今一度視線を重ねる。言葉はもう何もなかった。ただ笑顔で頷きあい、見計らったかのように差し出されたブーケを手にしたルナフレーナの手が腕に添えられ、二人揃って扉へと向き直る。

    開かれた扉の真正面にはルシス王のレギス、その傍らに花婿のノクティス。席には両家の面々が連なり、その後ニフルハイム帝国の皇帝イドラや、アコルド首相クラウストラ等、各国より招かれた主要人物がずらりと並ぶ。この式典は若い二人の門出を祝うのみならず、長きに渡るニフルハイムとルシスの戦が終わり、これからの平和を願う物でもある。まだレイヴスが帝国に属していた頃には想像もつかないような顔ぶれが肩を並べて笑顔を浮かべている様に、どうしてもレイヴスの頬も緩んでしまう。端の方で居心地が悪そうにしているアーデンを見つけてしまえば尚更のこと。
    真っ直ぐにレギスの元まで伸びる赤い絨毯を踏み締め、数多の祝福を向けられながらたどり着いた花婿の前。一歩前へと進み出たノクティスも緊張しているのだろうか、頼もしくなったと思っていた筈の顔にかつての幼さがほんの少し滲んでいた。夜が明ける前ならば許せなかっただろうその甘さが今は微笑ましい。
    レイヴスの腕から離れたルナフレーナがノクティスの元へと向かう、その細い背中をレイヴスは生涯忘れないだろう。ノクティスの側に寄り添った時のルナフレーナの笑顔も。
    人類の希望を背負う事になる若い二人に、レイヴスも心からの祝福を送った。
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    case669

    MEMOどうせその気もないくせに
    アデレイ
    「君、結婚する気ない?」
    帝国宰相の部屋で、たった今まで肌を重ねていたアーデンが朝食のメニューでも尋ねるような気安さで問う。この男の気紛れでベッドに引きずり込まれ、レイヴスの心を一切無視したこの関係に愛も情も無いが、それでも急過ぎる話題に流石に神経を疑う。
    「……必要性を感じない」
    「そんなこと無いでしょ。将軍になりたいのなら、必要じゃない?後ろ楯」
    言いたいことはわからなくもない。皇帝と貴族が支配するこの国において、属国出身の人間の立場は最底辺にある。本来ならば軍に入っても生涯下級兵士のまま終わる筈のレイヴスが准将の地位にまでのしあがることが出来たのは恐らく、アーデンが何かしらの思惑でもって介入したからであって、レイヴス一人の力では到底なしえなかった。だが逆に言えば、アーデンが望まなければレイヴスは将軍になれない所か今すぐ殺される可能性だってあるのだ。たかだか貴族の後ろ楯くらいでアーデンの気紛れを止める事など出来ない。
    それをわかっていながらこうして問う意味は、きっとただの暇潰しなのだろう。わざと毛を逆撫でしてレイヴスが荒れる姿を楽しむ趣味の悪い遊び。まともに付き合うだけ無駄だ。
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    case669

    MEMO制服
    カリジャミ
    スリムなラインのシャツとジャケット。今まで風通しの良い服に慣れてきた身には張り付くような布の不快感が付きまとう。おまけに首を締めるネクタイの息苦しさ。着慣れぬ制服を楽しめたのは初めて袖を通した日だけで、今では朝着替える時に一々溜め息が溢れてしまう。
    「なあ、ジャミル。これ着なくちゃ駄目か?」
    ジャミルよりものびのびと育てられたカリムにはもっと苦痛が大きいのだろう。ベストのボタンを留めていた筈の指先が汚物でも摘まむようにジャケットを持ち上げていた。
    「アジームの跡取りは服もまともに着られないと謗られたくは無いだろう、諦めろ」
    「まともな服なら他にもあるだろ?」
    「入学早々目立つようなことはするなと言ってるんだ」
    「でもジャミルだって困ってるんだろ?」
    「お前一人守るくらいならなんとかなる」
    「ジャミルも無事じゃなきゃ意味が無いって言ってるだろ!」
    不服そうな顔をしてカリムが拗ねるが、正直ただただ面倒臭い。ジャミルはきっちりとネクタイを締めてジャケットのボタンまで留め終えたというのにカリムはまだ中途半端にベストを着る途中だった。
    「とにかく、着替えろ。遅刻するぞ」
    「なあ、この服だと俺が死 1046