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    case669

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    case669

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    お前を嫁入りさせたまえ候の逆バージョンっていうかなんていうかなレオジャミ
    書きたかったの本当に最後の数行だけだったのに無駄に長くなtt
    余裕あったらじゃみバージョン書きたい

    ##レオジャミ

    お前に嫁入りさせやがれこの野郎NRCを卒業して早二年。
    モラトリアムの全てをあの煩わしさと喧しさ、それから少しの名残惜しさの中に捨ててレオナは国へと戻った。
    王になる事、ただ普通の人のように生きる事、夢を持つ事、家族を持つ事、自由を得る事、レオナである事、全て、全てを捨てて来た。
    そうして夕焼けの草原で国王陛下の弟君であり、王太子殿下の叔父である男は現国王の右腕の地位を頂いた。
    元より王宮内部の心象の悪いレオナがなんとか仕事を回せる程度に信頼を回復させるのに一年。それでも今までの反抗的な態度からすれば驚くべき早さであると同時に、それだけレオナが一心に国政に向き合った結果だった。卒業以来、NRCで関係のあった連絡先は端末ごと全て捨てたし、個人的な楽しみは精々自室でマジフトの試合を眺めたり、王宮内の書庫の本を読む程度だ。
    そこまでして今まで逃げていた責務に打ち込むことに、別に何か理由があるわけでも、目的があるわけでも無い。ただ、それがレオナの生きる道なのだと腹を括っただけのこと。それでもこれが悲壮感溢れる諦念の末の道ではなく、自ら一歩を踏み出し前を向いて歩いて行く道なのだと腑に落ちたのはきっとNRCでの生活のお陰だろう。
    そうして殆どの人間から、更には国の民からの信頼を得るまでに一年。元より見目だけは世界的モデルからのお墨付きなのだ、態度を改めるだけで面白い程に人々はレオナを持て囃した。携わる仕事も「生まれた時から定められた責務」だから忌避していただけであって、内容自体は嫌いではない。人を操り、盤面を動かし、有利を生み出してゆく。チェスやマジフトのように勝利という明確なゴールは無いが、少しでも近しい場所まで国を導くのはレオナの手腕次第だ。

    今ではすっかり有能な宰相殿として国の内外に広くレオナの名は知れ渡っている。優雅で仕事の出来る王族様の振る舞いもすっかり板についた。そうなれば次は早く身を固めろとの声があちらこちらから上がるようになった。この国の人間は、愛と家族が人の得る最大の喜びだと思っている。
    元から、国王であり兄である男にだけは学園生活の中で失恋をしたから一生嫁を取る気は無いと打ち明けていた。何せこの国は愛を何よりも尊ぶ。国王陛下ですら、国内の視察に向かった先で見かけた露店の看板娘に一目惚れし、再三断られながらもしつこいくらいに愛を伝えに通い詰めてようやく射止めたのだ。愛の名の元ならば身分も性別も些事に過ぎず、叶わなかったとは言えど愛する相手がいるとなれば、無理に見合いを勧められる心配は無いと思っていた。だが。

    下手に相手に迷惑がかかる事を厭い、レオナが恋心を学園に置いて来た事を口外しないよう固く約束させたことと、それに反して上がるレオナの人気と共に各所からの善意のお節介に板挟みになった兄がついに負けた。曰く、国としてどうしても断れない相手からの見合い話。兄個人で安請け合いしたのならいくら有能な宰相様と言えど蹴り飛ばしてやろうと思っていたが、国を背負っての縁談と話が大きくなってしまったのならば無視することも出来ない。
    すまんな、と口では謝りながらもどこかへらへら笑っているように見える国王もとい呑気な兄に思い切り渋面を作りながらため息を一つ。決まってしまったのなら、やるしかない。
    見合い自体は恋愛至上主義のこの国においても珍しい話では無い。普通に生活していても生涯の伴侶が見つからない場合は皆こぞって見合いをする。他国と違うのは、そこで「結婚に相応しい相手」を探すのではなく「己の一生を捧げる相手」を探すという所だろうか。家柄や所得が一切評価基準にならず、この世界にたった一人の自分の運命の相手を探すのがこの国のお見合いだ。
    当然、この縁談でもそのつもりで臨むと先方に伝えてあると聞いて少しだけほっとする。
    どうせレオナが生涯を捧ぎたいと願う相手は二度と現れない。政治的な要素が絡んで時間はかかるかもしれないが、じっくりと諦めてもらえるようにするしか無いだろう。


    お見合いは夕焼けの草原の王宮内、かつてレオナと兄の母が住んでいた離宮で行われた。建物の入り口で待つレオナの元に、鮮やかに咲き乱れる草花に負けない派手な色合いの布地を纏うお見合い相手を先頭に、数人の従者が付き従いやってくる。お見合い相手の顔はフードのような飾り布に隠れて見えないが、肌の色と服装からして熱砂の国の人間なのだろうと当たりをつける。どうせ断ることになる相手なのだからと見合い相手の情報に一切目を通していなかった。ほんの少しの懐かしさと切なさを感じてレオナは一度だけ瞼を伏せ、過る幻影を追い出してから再びピーコックグリーンの飾り布に隠された相手を見下ろす。傍にまでやってきたその相手は、女性にしては随分と背が高かった。
    「ご無沙汰しております、レオナ殿下」
    布の下から聞こえた声に、今追い出したばかりの幻影が蘇る。聞き覚えのある、否、ずっと恋しく思った涼やかな男性の声。
    信じられない物を見るように目を見開き動けなくなったレオナの前で、恭しく膝を折った相手がそっと飾り布を下ろす。そこには記憶の中よりも眩く映るジャミルの姿があった。二年の間に大人びて、色気が増しただろうか。男らしい骨格の太さがあるのになぜか中性的に見える不思議な艶。その顔が、悪戯が成功した時のような無邪気な顔で笑う。
    「この縁談、勿論受けてくださいますね?」
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    case669

    MEMO脱、兄レオしようと何かが足掻いてるメモらしい「あの人を止めない私の事、恨んでいるかしら」
    「それを言うならば俺の方だろう。憎く無いのか」
    「私はね、レオナ。貴方をどうやったらあの人の傍に生かさず殺さず留めて置けるか考えているような女よ」
    「は、何の為に」
    「あの人と、国の為に。ひいては私とチェカを守る為に。それ以外の理由があるかしら」
    「さすがはアイツを尻に敷いてる方だ。我が国は安泰だな」
    「貴方があの人の傍にいてくれるうちはね」
    「……」
    「……」
    「貴女は、あれの、何処に惚れて結婚したんだ」
    「……私、可愛い男の人が好きなの」
    「あれが……?」
    「男の人にはわからないかしら。素直で、一途で、いつも笑っていて。可愛いでしょう」
    「間抜けで思い込みが激しくて能天気なだけだろう」
    「そこが可愛いのよ」
    「はあ……」
    「貴方も、素直で、一途で、いつも笑ってはいないけれど……可愛いと思ってるわよ」
    「馬鹿にしてんのか」
    「愛しているのよ、家族として」
    「それはどうも」
    「だからね。……だから、もしも、本気で逃げ出したいと思ったのなら、私に相談して」
    「は?」
    「悪いようにはしないわ。……というよりも、私に心構えが欲しいだけね。きっと大 715