丹穹5月10日「お、お帰りなさいませ〜ご主人様」
恐る恐るテーブルにグラスを置くメイドに、俺は少しだけ視線を向けた。内心では「やばい怒ってる……」と思ってる目で、ちらちらと俺を見ているのがわかる。
「……」
「……」
「……えー、と」
「…………」
「……お、怒って……るよな……」
しばらくの沈黙のあと、わかりやすくしょんぼりしたメイドが眉を下げて上目遣いで見上げてきた。
決して俺は、校内を一緒に見て回ろうという約束を結果的に反故にされたことに難色を示しているわけではない。不機嫌そうに見えるとするなら、他に要因があるからだ。
「いや、怒ってない」
「そ、そっか……?そうなんだ……へへ、あ、俺が奢るから好きなの頼んでいいよ。おすすめはこの萌えきゅんオムライスと……」
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