長いフライトを終え、俺は1年振りに日本の地に降り立った。久し振りに耳にする日本語のアナウンスや目に映る日本語に、上がる口角が抑えきれない。日本語に触れると、もうすぐ深津さんに会えるんだと思って、テンションが上がってしまう。前にそんなことを話したら、「パブロフの犬ピョン」と笑われてしまったけど。
チラチラと向けられる視線を躱すように足早に歩き、到着ロビーに出る。目的の人を探すために視線を左右に走らせると、すぐに俺に向かって軽く手を振る深津さんが視界に入った。
深津一成さん。一つ上の先輩で、愛しい俺の恋人。日本一のガードと呼ばれていた深津さんだけど、バスケは学生の間だけと決めていたようで、今はスポーツリハビリトレーナーとして活躍している。正直、俺以外の人間をサポートしていることは気に食わないけど、それでも俺は、いつか深津さんと専属契約を結んでやろうと目論んでいる。
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