24.6.15 サンプル 汚い走り書きの文字を追い始めたアーサーは、一枚目の手紙を読み切りもせずに顔を上げた。強い風の音や木々がざわめく音に交じって、彼の方へ向かってくる何者かの足音が聞こえたのだ。できるだけ足音を殺そうと忍び歩きをしている様子ではあるが、そういった音を聞き逃してしまうほどアーサーは未熟ではない。
自分の様子を窺っているのが敵なのか、無関係な何者かであるのか、確認して相応の対処をしなければならない。アーサーはまだ雨が降り出さないことを願いながら、ルーモスを唱えなおした杖を静かに足音の聞こえる方角へ向けた。
「…………あっ、やっぱり君だ! 僕だよ転入生!」
「……え、アミット? どうしてこんなところに?」
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