光ラハ 1 ウルダハ、クイックサンドにて。冒険者は己の正面で溌溂と星を語る友人を見つめていた。
異界なる地における「月」と「地球」の話。こちら側に渡ってくる人々がいるのなら、いつか自身も稀人としてそちら側に渡ることがあるのかもしれない。これほど興味深い話を聞いてしまっては冒険心を擽られずにはいられなかったが、それよりもなにより、冒険者にとっては目の前にいるグ・ラハ・ティアが楽しそうにしているということの方がずっと大切であった。
「っと、悪い。また俺ばっかり話してた……え? 俺の話を聞いてるのが好きだからって……へへ、なんか照れるな」
柔らかな被毛に覆われた耳をへたりと倒し、頬に朱を差したグ・ラハがはにかんだ。腕をさする仕草はすっかりおなじみのそれであり、冒険者の口元が弧を描く。椅子の陰で彼の尾が忙しく揺れていることなど冒険者には見るまでもなくわかりきったことだった。
753