確かにそこにいたんだ。 小さい頃から糸師冴と仲が良かった。サッカーを一緒にやったり、おしゃべりをしたり、冴からアドバイスを貰ったり色々として貰った。だけどそれが本人ではないと気づくのは、小学生の時だった。周りの友達から誰と話しているのとよく言われるようになった。なんでいきなりそう言われるのか最初は分からなかった。幼稚園時代は冴と一緒にサッカーをしていたからか、
「潔くんはサッカーが好きなんだね」
「よっちゃんは幼稚園でもサッカーしてるのね」
母さんや先生からそう言われていた。だって楽しいから、
「ねぇ、よっちゃん。冴ちゃんはどんな子なの?」
「冴はね、カッコいいの!サッカーも上手だし一緒に遊んでくれる。俺、冴の事が好きなんだ。」
「さえならもっと、」
上手く動ける。そう言ってしまいそうな口をあわててつぐんだ。
高校に入学した日を最後に、冴は俺のもとへと現れることがなかった。そんなわけ無いと探した、一緒に行った場所。心当たりは全部潰したが、幾ら探しても見当たらなかった。
「なんでだよ!なんで、俺を置いて居なくなったの、?」
入学式初っぱなからやらかしたレッテルを張られるわけにはいかない、暗くなって親に心配をかけるわけにはいかなくて仕方なく帰路に着いた
観客席のひとつだけ空いていた席にさえはいた。たまたまなのか偶然なのかは分からないが、確かにそこに存在していた。目が合うと微笑みながら手を振ってくれたので、俺も振り返した。油断すると涙が溢れそうになるのをなんとか堪えながら笑った。昔の彼は俺に合わせてた子供の姿であったが、現在の彼の見た目は糸師冴本人に似ていたが違っていた、彼の方が大人びていたのだ。年齢で言えば25歳ぐらい。その姿には見覚えがあった。逆行する前に、俺ら2人とも事故に遭う前に、幸せを実感していた頃だろう。
「おい、潔。」
どこかをずっと見つめていた俺のことが気になったのか凛が話しかけてきた。
試合が始まる。いつもピッチ上で俺に語りかけてきたさえは観客席だ。もう助言もなにも聞こえない、だけど、見ていてくれるそれだけで頼もしいことはなかった。