マルガレテの面影序章
「なんとか……症、ってヤツらしいぜ」
「獰猛なモンスターが、更に見境なくなっちまうんだからな」
幾ら金払いがいいったって、命あっての物種じゃねえか――背後で囁き合う男たちには、全くもって同意せざるを得ない。ハンターなどと持て囃されたところで、要は真っ当な仕事に就くことができない、命知らずの変人どもだ。小山ほどもあるような獣に斬りかかったり切り刻んだり、とてもまともな人間のやることとは思えない。ましてや、その挙げ句に命を落としていれば世話はない。
担架は布で覆われているが、滲み出した赤の面積を見れば、どれ程惨い傷を負ったのかの想像は容易だった。悄然と、或いは啜り泣きながらその周囲を囲む若者たちは、ハンター仲間だろうか。中にはまだあどけない顔立ちをした女さえいて、幾ら才能とやらがあるにしたって、子供に武器を持たせるのかと思えば、どうにもむかっ腹が立つ。
3700