Cafaea Avium:episode 1 涼しげな音を立てたウィンドチャイムは、鳥の形をしている。
「――いらっしゃいませ」
低く落ち着いた声で出迎えてくれた長身の店主が、窓際のお席へどうぞと微笑んだ。空の色を思わせる青い目が印象的だ。
テーブルを挟んで向かい合った二人がけのソファにそれぞれ腰を降ろしたところで、水のグラスとおしぼり、メニューが提供される。
「ご注文は、後程お伺いしましょうか」
そうしてください、と答えたのはセオドアだった。
「私は今日が初めてなのですが、カレーもグラタンも絶品だと伺っています。どちらにするのか、少し悩ませていただければ」
「それは――ありがとうございます」
頭を下げ、常連の二人へ向かっては微笑みかけて、店主は戻って行った。開いたメニューをテーブルの上に置いたセオドアが、さて、と身を乗り出す。
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