Nムルヒス『口内』 ある日の人気のない殺風景な廊下。
そこに、一人だけでポツンと立ち尽くしているヒースクリフをムルソーが見つけた。
天井からぶら下がった小さな電球がチカ、チカ、と点滅しているせいで彼の表情はよく見えなかったが、片頬がひどく腫れているのを深緑色の瞳が捉える。
ヒースクリフの話を聞くに、今日の読経がまともにできていなかった罰だと殴られたそう。
運悪く、同じ箇所を続けて何度も殴られたことで内出血を起こした頬は赤紫色に腫れていた。それだけでは留まらず、腫れた頬が下瞼を持ち上げてるせいで片目もまともに開けれないのが余計に痛々しい雰囲気を漂わせている。
部屋の角に溜まった埃を釘でつつくが如く、効率良く浄化出来ていなかった、先輩に対する態度がなっていない、とあれこれと難癖をつけては"教育"と称した暴力を振ってこなかった日はほぼ記憶にないぐらい、ヒースクリフは惨めな日々を今でも送らされていた。
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