移り香を纏わせて「完全にバグですね」
「バグ…ですか」
「…すごく薬の匂いがするんだけど」
主に連れられて来たのは、政府のある一室。そこには、薬品棚やファイル、ベッドなどが置かれていて、医務室といったところか。薬品の匂いが直接脳を刺激するようで、思わず鼻を覆った。
ここに連れてこられたのも、いつからかこの嗅覚がとても良くなってしまったからだ。食べ物や花、なんなら人の判別や居場所まで当てられてしまうほどに。短刀達は、テレビで見た犬のようだと喜んでいたが、当事者の俺としては辛いことこの上ない。今日だって、ここに来るまでに乗った電車の中で嗅いだ香水が、あまり好きな匂いじゃなかったこともあって早く降りたかったし。自分の付けている香水や、主の香りを嗅いでどれだけ落ち着けたか。
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