アールグレイと楊梅色。白地に青のストライプが入った大きめのシャツは、キッチンまで入り込んだ夏の爽やかな青い風を受けてはためいた。
洗いざらしの細身のジーンズが彼のすらりとした脚を包み、萱のルームサンダルを履いた足先は、鼻歌に合わせご機嫌にリズムを刻む。
窓辺に飾ったシーグラスのウィンドチャイムが、りりんと涼やかな音を立て、居間の床に寝そべっていたティリアの耳がそれと同時にぴるぴると震えた。
このウィンドチャイムは、随分前に工作の授業で見本として作ったもので、今の季節にぴったりかなと思い出して、倉庫から引っ張り出してきたものだった。
結んだ髪からこぼれている後れ毛が靡いて頬を掠めたのがくすぐったく、手の甲で軽く払う。
襟からのぞいた褐色のうなじが、うっすらと汗ばんでいた。それは、夏の暑さのせいだけではなく、甲斐甲斐しくも火にかけた鍋につきっきりだったからだ。
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