恋泥棒と手袋の約束サダルメリクの星色の髪は、昼中であっても尚煌々と輝いて、秋の色にくすんだ街をも明るく照らす。
黒いレースの手袋をした手が、髪をかきあげる。左耳を彩る飾りは陽の光に鮮やかに照らされ、高いヒールのブーツで颯爽と煉瓦道を歩く彼女にあわせ、オーガンジーブラウスのボウタイがふわりふわりと上機嫌に揺れていた。
今日この休日は少し特別で、いつもより足が軽く感じる。
なにせ昨日まで怒涛の21連勤。
やんごとない身分の人間の身辺警護をつきっきりだ。
いくら平和になったとは言え、厄介事は尽きない。政治家の屋敷は広いうえ、妻も娘も護衛対象。流石のアシェルも疲労が蓄積していた。
寝ずの番もあった厳しい務めを果たし、今月初めての丸一日非番。
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