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    oriron_kon

    主に妄想の呟きを文章化。リンバスは5×7と2×7が気になる。

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    oriron_kon

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    ムルとヒスがクラブで飲んでるだけの話。
    5章でムルがクラブで遊んだことがあると明かしつつも、軽く遊んでるようなシーンはなかったよなぁ…と思いながら執筆。
    ※6章の描写などヒスの過去に触れてますのでネタバレ前提かも。

    #ムルヒス

    ムルヒス『酒』 次の目的地近くまでバスを進めたのはいいが、肝心の案内人の準備がまだ完了出来ていないとの連絡が入ったそう。
     呼び出しておいて今度は連絡があるまで待機なんて良いご身分だな、と聞いてるこちらが生きた心地のしない重々しい独り言を呟いたヴェルギリウスは、必死で視線を外していた囚人たちへ顔を向ける。
    「さて、聞こえていた通り、しばらくお預けを食らうことになった」
    「…連絡が来るまでバスで待機するように。と言いたいところだが、ほんの数十分で連絡が来るようにも見えなかった」
     なので、とわざと言葉を切ったヴェルギリウスは少しだけ口角を持ち上げる。一部の囚人が反射的に姿勢を正した。
    「今日一日はダラダラと怠けていても特別に見逃しましょう」
     つまり、完全に一日分の休暇が与えられたと。
     しかも移動中だから自室に戻ってひたすら惰眠を貪れといったパターンではなく、バスから降りて気が済むまで散歩してもいいし買い物してもいいということだ。
     突然与えられた休暇に残念がった囚人は当然、存在しない。
     ワッと喜びの歓声が挙がり、貴方は心優しい上司だとひたすら褒めちぎるドンキホーテにロージャとあっという間にバス内は賑やかになった。

     窓から見えたあの店が気になっていたので見に行こう。こっちは部屋でのんびり昼寝しているわ。
     とそれぞれの過ごし方について盛り上がっている一方、ムルソーは窓から何かを見つめていた。
     あの彼が熱心そうに眺めていること自体が珍しいので、好奇心がくすぐられたヒースクリフも横に並ぶ。そして相手の目線の先を辿るように自分も顔を上げた。
     視線の先には、水色、桃色、黄緑色とそれぞれ明るい光を放つネオン管で彩られた看板が並んでいる道なのが見てすぐ分かった。
     ただ、看板が目立つだけで特にそれといった物は見当たらない。
    「…そこに誰か隠れてるのか?」
    「今のところ見張られているらしき視線は感じない。先に理由を話すとすれば、私はその道に大変興味を抱いている」
     まさかの理由にヒースクリフは目を丸くした。
     てっきり不審者の気配を感じたから様子を伺っているのかと思いきや、単純に看板が並ぶ道に興味を向けていただけという。
    「興味、ねぇ…。優しいヴェルギリウスが特別に休みをくれたんだ、気になるなら散歩でも呑みにでも行ったらどうだ?」
     思ったことをそのまま呟いたら、ムルソーの顔がこっちへ向いたのにギョッとする。呑気な発言が気に障ったのだろうかとつい身構えてしまったが違うようだ。
    「…そうだな」
     と肯定してすぐ、ヒースクリフの肩にポンと軽く触れては乗降口へ歩き出した。
     肩を叩かれた意味が分からなかったヒースクリフは呆然と立ち尽くしていると、そのまま降りると思われていたムルソーが再び見つめてきた。
     相変わらず感情が読み取りづらい仏頂面だったが、自分がついて来ないことが気になっているような気がした。
    「…降りるんじゃなかったのか?俺はここで暇を潰すから、遠慮なく行ってきてもいいぜ」
     暇つぶしとはいえ散歩感覚で歩き回るにはなんとなく落ち着かない場所だったのもあり、気づけばほとんどの囚人たちも先にバスから降りてしまっている。
     せめて留守番役ぐらいは引き受けた方が良さそうだと判断に至ったからである。
    「ヒースクリフ、君も一緒に降りるんだ」
    「えっ」
    「この道は初めて歩くし、仮に単独行動では予測していないトラブルに対応しきれない可能性もある。なので君に同行を頼みたい」
     あぁ、と納得な声がこぼれる。
     ムルソーもそういう考えるんだ、と感心すると共に、別に悪くないかなと好意的な返事も浮かんだ。

     バスの窓からでは見えなかったが、バーと思わしき店へ繋がる扉や階段があちこち並んでいた。
     そんな道を、どこか真剣そうな顔つきでムルソーはキョロキョロと左右に見回している。
     そういえばU巣でもクラブで遊んだことがあると話していたな、とヒースクリフはここで思い出した。
     あの時はクラブに入るための手順を教えるためにあえて経験談を明かしてた程度で、後は海賊たちに殴り込んだきりなので、結局遊ばず仕舞いだったが。
     もしかして…遊べなかったことを気にしているのか?
     要求をあまり口に出さないタイプだと思っていたのもあり、これから入る予定の店を一生懸命探してるようにも見える横顔が段々と滑稽に見えてきた。
     そこまでして酒を飲みたいのかと冗談を言いたくなるも、気分を損ねた相手から早口でまくし立てられたくないので、そのまま気が済むまで好きにさせることにした。
    「そこに入ろう」
     といきなり立ち止まったムルソーが目先の看板を指差す。
     本当に飲みたかったんだ、と喉から出かけた言葉を飲み込み、代わりに首を縦に振った。

     レンガ壁に囲まれた階段を下り、扉を開けてすぐ、大音量の音楽が飛び込んできたのにヒースクリフは思わず耳に指を突っ込んだ。ズンズン、と効果音が似合うぐらい音が大きくて内蔵ごと骨に響きそうだ。
     電灯が少ない薄暗い外から入ってきたのもあり、ミラーボールなどのライトの光が予想以上に眩しくて、紫色の瞳が細まる。
     入る前にムルソーが”クラブ”と口にした通り、ダンスを楽しむためのフロアと酒を楽しむためのエリアが直接繋がっている内装だった。
     DJと呼ばれる青年がレコードを装着した機械を回し、派手な格好をした男女たちが体を左右に揺らしながら全身でリズムをとるのに夢中だ。中には片腕や頭を振り回してまで全力で楽しもうとする人もいた。
     カウンター式の酒を飲む場所へ真っ直ぐと進みだしたムルソーに気づいたヒースクリフも、慌てて小走りで追いかける。

     横に並ぶように、一人掛けの椅子にそれぞれが腰掛ける。
    「どういった場所で飲んできたかは分からないが、飲みたい酒を注文し、その都度払うのはどこでも変わらないだろう」
    「…ふーん」
    「君は、こういった場所で遊んだことがないのか?」
    「ないね、住んでたところにこんなカラフルで眩しい店なんてなかったぜ」
     一度も飲酒したことないわけではなく、かつて身を置いていた組織のみんなと何回か飲みに行ったことはあるので支払いの方法は分かっている方だ。
     ただ、ボトルから注いだのを飲んだり、注ぎ口に直接口付けるのが主だったので、洒落たグラスで飲むのは馴染みがない方だし、そこまで”色のついた”派手な店も近くには無かった。
     隅々まで色がついてるとなると逆に贅沢に感じて落ち着かない。
     こういうのは分かんないから代わりに頼んでくれよ、と素直に打ち明けるとムルソーは短く唸った。
     いくつかやりとりした後、よく飲んでたというジンをベースにしたカクテルがバーテンダーから提供されたのを受け取ったヒースクリフがムルソーへ向けてグラスを掲げる。
     その行動に含まれた意を読み取ったムルソーは渋るような間もなく、自分のグラスを受け取ってすぐ、カチンと鳴らさせた。
     ガラス同士が当たった拍子にカランとグラスの中で揺れた氷の音が心地良い。

     せっかくダンスフロアがあるから踊ったらどうだ?と冗談を言うヒースクリフをムルソーは首を横に振って断った。
    「一人で遊びに来たのなら考えるが、今はこうして飲んでいたい」
     意外な答えにツボにハマったヒースクリフは、テーブルを叩く勢いで爆笑する。
     場に相応しくない笑い方にバーテンダーが咎めたそうにしているのに気づき、慌てて誤魔化すように座り直した。
    「…ププッ、お前が、ダンスねぇ…」
    「もしもさ、俺も一緒に踊るって言ったらさ…どんな風に踊ってみたい?」
     ゆっくりめな音楽に合わせて、相手の手を取りながら進んだり下がったりと交互に歩を進め合う社交ダンスを軽く習ったことがある程度なので、今みたいに激しく鳴り響く音楽に合わせて激しく体を揺さぶるダンスは未体験だ。
     好奇心半分でもう一度冗談を言うと、ムルソーは真面目に考え込んだ。
    「…ダンスというよりは、一緒にリズムを感じたい」
     ヒースクリフの頭上に疑問符が浮かんだ。
     一方、ムルソーは、相手の腰をこちらへ抱き寄せては胸などを密着させながらリズムをとることを楽しんでいる自分を想像していた。
     筋肉質な腰に触れた際の感触にビックリした表情と色々と思い出し、あわよくばスキンシップまで持ち込ませれないのだろうかと欲も膨らむ。
     酒で気が緩んだ彼と目が合ったのを機に顔と顔が近づく瞬間まで想像したところでグラスを口へ傾けた。
    「お前の言うリズムの感じ方がよく分かんねぇけど…俺と一緒でも悪くないって思っておくわ」
    「そうしてくれると有難い」
     最後までよく分かっていない相手をよそにムルソーは、もう一度グラスを傾けた。

     注文したつまみが思ったより口に合っていた嬉しさもあり、雑談が続くにつれて受け取ったグラスの数も増える一方。
     いつもだと絶妙なタイミングでこれ以上は飲みすぎだと嗜めるかと思われたムルソーも、追うようにカクテルを飲んではつまみに舌鼓を打っている。
     よく見ると、白い頬がほんのりと赤らんでいて表情もどこか柔らかい。
     酒による酔いでテンションが高くなったヒースクリフがゲラゲラと笑っては、相手の赤らんだ頬を指さしながらもたれかかるとシャツ越しに互いの体温が伝わった。
     
     これ以上、飲むと歩けなくなりそうだし金も尽きてしまうとようやく危機感を覚えた二人はバーテンダーに軽く礼を言ってからクラブを出て行った。
     相変わらず薄暗くて狭い階段を上がりきってから左右を見回し、バスが停まっている方向を確認する。掃除屋が訪れてくる時間までにも余裕はあるはずだ。
    「久しぶりに酒が飲めたし、つまみも悪くなかった」
     多少満たされた腹をさすり、ヒースクリフは舌なめずりする。
     後でウーティスあたりに酒臭さを咎めらると思うと帰りたい気分が失せかけるが、掃除屋が来る前に帰らなければならない。
     だが、久しぶりに摂取したアルコールのおかげでフワフワした気持ちが続いている。
     同じく浮かれた気分に浸っている模様のムルソーに寄りかかりながら、スキップするように歩を進める。
     ぐらり、ぐらりと大きく揺れるヒースクリフにつられてムルソーの体も大きく揺れる。

     そろそろ見慣れた赤いバスが見えるであろう位置まで歩いたところで、調子に乗りすぎたヒースクリフの体が近くの壁にぶつかった。
     思っていたよりも飲みすぎたようで受け身が上手くとれなかった彼がそのまま転んでしまうより先にムルソーが受け止める。
    「おっと、悪い…助かったわ」
    「アルコールが抜けていない状態でふざけた歩き方をしていればそうなる」
    「あー、はいはい」
     説教は聞きませんよと言いたげにゆっくり立ち直ったところでムルソーが自分の前から離れないことに気づく。
    「あ?何だよ?普通に立てれるし、歩けるけど…」
    「……」
     チカチカと点滅的に光る看板で照らされたムルソーの酔いで赤らんだ顔がヒースクリフの紫色の瞳に映る。
     そこらではあまり見かけないであろう紫色の瞳に薄青色や桃色の光が当たり、青みが増したり逆に赤みが強まったりと鮮やかに輝く様子をムルソーはジッと見つめる。
    「…今の私は、相手と密着するといったスキンシップを強く求めている」
    「あー、例えばハグとか?」
    「ハグもそうだし、キスも追加してくれたら私は嬉しい」
     と感情が滲み出ているようには見えないポーカーフェイスでサラリと言いのける。突然の発言にヒースクリフは軽く仰け反った。
     つり上がった両眉に鋭い双眼を崩してないことで一見、そう見えないが、コイツもかなり酔っ払っているのだと察する。
     一度でもオープンになった彼は気が済むまで止まらないことも知っているヒースクリフは、ここは素直に応じるのが吉だろうと思い至る。
     肯定の意の代わりに相手の両肩へ手を添えると、ムルソーもヒースクリフの後頭部と腰へそれぞれ手を回してきた。
     このタイミングで互いの唇が合わさったと同時にアルコールの強い匂いがプンとした。
     唇を唇で喰むように顔の角度を変えながらキスしつつ、相手の癖のある茶髪を軽く撫でる。
     少々困惑しているらしき紫色の瞳と何も迷いのない深緑色の瞳がかち合う。
     ムルソーの少しだけ開いた口から赤い舌を覗かせ、相手の唇を軽くなぞり、腰から太ももへと手を這わせたところでピシャリと頬を叩かれた。
     耳障りの良い音によって現実へ引き戻されたムルソーは驚いたように数回、瞬きした。
    「おい場所を考えろ、変態め」
     酒の酔いとは別の意味で赤くなったヒースクリフが睨みつけている。
     これから濃厚になりそうなキスにつられて、性的興奮も強まったからといって流石に求めすぎたかとムルソーは素直に反省した。
    「お前は外でも構わず盛る変態だったのか?」
    「それは違う、普段のと異なるシチュエーションに興奮を覚えただけだ。テンションが上がったとも言える」
    「…その顔で言われてもなぁ」
     ニコリともしない仏頂面で興奮やらテンションやらと言われてもなぁとヒースクリフはため息を吐く。
    「ほら、キスもハグもしてやった、さっさと戻るぞ。チンピラに絡まれたら厄介だ」
    「そうだな」
     叩かれた方の頬をさするムルソーの眉間に軽く皺が寄る。
     その場の勢いでスキンシップを求めてしまったとはいえ、もう少し柔らかく止めなかったのだろうかと言いたげに。

     改めて横に並び直したところで「そのまま君の部屋までついて行ってもいいだろうか」と問いかけると「それでいいんだよ」と返ってきた。
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